◎事業団通信


新SBSこの一年(その一)

食肉部 食肉第3課


新SBSこの一年(その1)

1.新SBS導入の経緯と特徴
  新しい売買同時入札方式(新SBS)の導入は、昭和63年6月に行われた日米
農産物交渉、及び日豪牛肉交渉の合意内容において、1991年4月1日の牛肉輸
入枠撤廃までの間、事業団扱いの輸入牛肉についてのアクセス改善策として決定さ
れたものである。

  この方式の前身である売買同時入札(Simultaneous Buy and Sell Tender 
Systerm、省略SBS)は、昭和59年の日米・日豪牛肉交渉の合意に基づき、牛
肉流通における商品形態の多様化に対応し、さらに外国の供給業者と日本の実需者
との間の輸入牛肉の取引に関する協議を容易化するための方法として、売りと買い
を同時に決めることとして昭和59年度下期から導入されたものである。

  事業団の輸入牛肉の一般の売買は、事業団が定めた品目、規格及び数量を、買い
は買いとして競争条件により買い入れ、一担在庫した後に品目別の需給動向等を勘
案して市場等で売渡すというように、売渡しと買入れが分離していたのに対し、S
BSでは、一定の条件の中で品目・規格、外国の供給業者及び受渡し時期等につい
て売買当事者が決められるという特徴を有し、新たな商品開発による需要拡大に大
きな効果をもたらした。

  このような特徴から、今回の牛肉交渉で3年後の牛肉輸入の完全自由化が決めら
れた際に、それまでの間、自由化へのソフトランディングのためにSBSを積極活
用することを検討し、秩序ある国内牛肉市場を維持しうる範囲内でより自由化状態
に近いものとして、従来のSBSを改めた新たな売買同時入札方式を導入すること
とした。

  主な改善策は、次の通りである。
(1)新規参入
  SBSへの参加資格により従来のSBSをシステムA(買入れと売渡相手方を同
時に事業団が指名する方式)、新規参入が可能な方式をシステムB(売渡相手方が
買入相手方の一方のみを事業団が指名し、他方をフリーにする方式)とした。

  システムBの新規参入者については、事業団が自ら信用力等について入札参加資
格の可否を決めることは制限的にならざるを得ないこと、及び投機的な参入を極力
排除し国内牛肉市場の秩序を維持する必要があったこと等の配慮から、輸入者につ
いては指定団体と組んで、また、需要者については指定商社と組んで、新たに入札
参加が出来るようにした。

(2)SBSでの取扱数量の拡大
  昭和63年度  システムAは事業団取扱数量の10%相当量、
         システムB        〃  20%  〃
 平成元年度   システムA        〃  10%  〃
        システムB        〃  35%  〃
 平成2年度   システムA        〃  10%  〃
         システムB        〃  50%  〃

(3)冷蔵牛肉を取扱対象品目に追加
 国産牛肉の需給安定の必要上、従来のSBSでは冷凍牛肉のみを対象としたが、
自由化へのソフトランディングの一つとして冷蔵牛肉を対象品目に加えた。

(4)カテゴリー区分を簡素化
 SBSは、競争入札であるが、競争の公平を保つためには品質上似かよったもの
の中で競争で行われる必要がある。

 従来のSBSでは、競争の公平性を厳密に確保するため、冷凍品だけで種類別
(グレインフェッド牛肉、その他牛肉)、部位別(かた、もも、ロイン等)及び形
態別(ボーンイン、ボーンレス、プライマルカット、ポーションコントロール)に
区分けし、36のカテゴリーを設けた。

 しかし、自由化に向かっての対応としては、カテゴリーを細分化することは硬直
的な運用を強いることになるとの判断から、競争の公平性を維持しつつ、同一カテ
ゴリー内であれば品目別牛肉の需給状況に応じてある程度の品目の変更が入札後で
も可能となるようにカテゴリー区分を簡素化した。したがって、具体的には種類
(冷蔵品・冷凍品)、形態(ボーンイン・ボーンレンス)及び分類(枝肉・ロイン
・バルク・その他)の組合せからなる12カテゴリーに集約した。

(5)応札限度数量の設定方法の変更
 従来は入札に参加する各指定商社、各指定団体に対し過去の実積に応じた応札限
度数量を設けていたが、システムBの応札限度数量については過去の実績にかかわ
りなく、売渡相手方指名方式では各指定団体に対し、買入相手方指名方式では各指
定商社に対して、一率に入札に付した数量の10%相当量を応札限度数量として設
定することとした。

2.入札準備
  交渉合意は、既に昭和63年度上期の輸入割当枠公表後であり、63年度の輸入
牛肉売買業務は進行中であったことから、合意内容に沿った仕組みを早急に設定し
新SBSによる入札及び現品の受渡しをできるだけ早期に実施可能となるようにす
る必要があった。

  このため、7月早々から要領の作成、条件等の設定及び扱い数量の増大に対処す
べく入札事務から受渡し事務まで一貫したコンピュータ利用による処理のためのシ
ステム開発等の作業を行った。

  入札がスムーズに行われるためには、これらに参加する者のこの方式に対する理
解が不可欠であるため8月早々に業界に対する説明を行った後、入札条件等の設定
を完了した8月17日に業界関係者(出席者124名)に対する第1回目の入札説
明会を行い、9月7日にシステムAの入札を行うという慌ただしさであった。

  その後、9月下旬には、システムBの入札を行い、以降各方式の入札を計画的に
行い、本年度下期輸入割当分まででシステムAについては3回、システムBについ
ては計18回の入札を実施した。

3.入札実施状況
  新SBSの第1回入札を行ってから一年余り、輸入牛肉の割当期としては一年と
半期が経過したが、その状況は次の通りである。

  関係者各位に、その状況を理解していただき牛肉自由化に向けてのソフトテンデ
ィングの一助としていただければ幸いである。

(1)落札の概要
  @昭和63年度下期
総契約数量       64,790トン
(ボーンレスベース   62,839トン)
C/F別では、冷蔵品  22.1%
       冷凍品  77.9%
区分別では、  枝 肉   7.2%
        ロイン  14.5%
        バルク  10.0%
        その他  68.3%であった。

ア) システムAについては、従来のSBSと同様、冷凍品・その他(ボーンレス)
  及び冷凍品・ロイン(ボーンレス)のウエイトが高かった。

イ) システムBについては、1回目は9月に毎月実施していた指定団体に対する
  競争入札売り渡しが10月から廃止されることが決定されていたこともあり、
  この影響を受け、冷凍品・その他(ボーンレス)及び冷凍品・ロインに数量が
  あつまった。

ウ) 以降、2回目、3回目のシステムBの入札が行われたが、比較的ウエイトの
  高かったロインの比率が低下していき、代わって冷凍品・バルク(ボーンレス)
  及び冷蔵品・枝肉の比率が高まる等の若干の変化は現れてくるものの、従来の
  SBSと同様のパターンが続いた。

    これは、従来のSBSで既にSBS固有の商品が開発されていること、及び
  ある程度SBS固有の流通経路等ができていることによるものと推測される。
   (品目別の受渡し実績等は、次号で解説を予定している。)

A平成元年度上期
 総契約数量      64,809トン
(ボーンレスベース   62,362.8トン)
C/F別では、冷蔵品  27.8%
       冷凍品  72.3%
区分別では、  枝 肉  9.2%
        ロイン   8.3%
        バルク  11.5%
        その他  71.0%であった。

ア) この期の新SBSの数量水準は、63年度下期とほぼ同一水準であった。

    これは、63年度の割当数量の増加6万トンを下期だけで消化せざるを得な
  かった上に、新SBSの事業団割当量に対する割合(30%)についても下期
  だけで対応する必要があったことから、63年度下期で既に40%水準を達成
  していたためである。

イ) また、システムBの運用については、売渡相手方指名方式及び買入相手方指
  名方式を同日に実施することにしていたが、これを切り離すことで敗者復活戦
  的に活用できるとの要望もあり、分離方式を継続することとした。

ウ) 種類別落札結果は、冷蔵品が約6ポイント増加し、区分別では枝肉が2ポイ
  ント、バルクが1.5ポイントそれぞれ増加したが、従来のSBSでウエイト
  の高かったロインは6ポイント程減少した。

エ) 新規参入の輸入者及び需要者とも63年度下期から入札の回を追う毎に増加
  しているが、増加数は需要者の方が圧倒的に多い。さらに入札参加者数ベース
  で見ると数量が急増した63年度下期では新規参入者の落札成功率は高率(輸
  入者では100%、需要者では90%強)であったが、元年度上期では競争の
  激化を反映し、特に新規参入の需要者の成功率は、1回目が84%、2回目5
  8%、3回目52%と低下している。(新規参入需要者の落札数量比率は、1
  回目が45%、2回目37%、3回目42%であった。)

B平成元年度下期
総契約数量       66,634トン
(ボーンレスベース   62,619.1トン)
C/F別では、冷蔵品  39.4%
       冷凍品  60.6%
区分別では、 枝 肉 15.0%
        ロイン   8.7%
        バルク   7.5%
        その他  68.8%であった。

ア) 前述のAのア)のような事情から平成元年度の数量水準は、結果的に上期・
  下期にほぼ等分に配分された。

イ) 種類別落札結果では、冷蔵品は、冷蔵品・枝肉が国内産枝肉の価格の堅調に
  より引合いが強かったこと、並びに新SBSの導入及び牛肉自由化後の動向に
  対応すべく海外で肥育を始めた肉牛がと殺時期に到達しだしたことから、数量
  が上期に比べて5.8ポイント上昇し、さらに、冷蔵品部分肉の人気も高まっ
  てきつつあることから、冷蔵品全体では11.6ポイントの大幅な増加となっ
  た。また、10%前後のウエイトを占めていたバルクは後半に向かって引合い
  が弱まってきており上期に比べて4ポイント程減少した。

ウ) 新規参入者は、一貫して増加し続けている。
  
   新規需要者の落札成功率(者数ベース)は、1回目が72%、2回目が64
  %、3回目が66%と上期に比べて若干上昇しているが、新規参入者の数量比
  率は、1回目が54%、2回目が45%、3回目が35%と減少しだした。

(2)新規参入者
  新SBS特徴の一つは、システムBの売渡相手方指名方式では輸入者が、買入相
手方指名方式では需要者が新規参入することが可能となっていることである。

  63年度下期1回目の入札では、新規参入の輸入者が5社、需要者が67社落札
して以来、その後の入札では回を追う毎に新規参入者の実数の累計は増加し、現時
点(平成元年12月6日の入札終了時点)では輸入者が19社、需要者が142社
(団体)となっている。

  需要者数に比して輸入者の数がそれ程増えないのは、輸入に当たっての買付け技
術、貿易実務等に専門的知識を必要とするためと思われる。

  なお、現在までに新規参入した輸入者の業種は、新規参入の届出が事務的に簡素
化されていることから正確な業種業態を見極められないが、牛肉以外の食肉の輸入
経験を有する企業が多く、またスーパー等の食品取扱企業及び外国企業も数社参入
している。新規参入の需要者の業種は、食肉卸売業者、加工業者、スーパーマーケ
ット等の量販店、ファミリーレストランチェーン等の外食産業が大半であり、食肉
を取り扱ったことの無い食品産業界からの新規参入も若干あるが、食品産業以外の
いわゆる他業種からの参入は、現在までのところ見られない。

(3)指定団体別の落札結果
  システムAとBとのシステムの違い、またシステムBの中でも売渡相手方指名方
式と買入相手方指名方式の方式の違い等より、各指定団体の落札結果は大きく異な
っており、さらに買入相手方指名方式が売渡相手方指名方式の敗者復活戦的となっ
ていること、新規参入需要者落札割合が高まる傾向にあること、及び買入相手方指
名方式では落札出来た指定団体の数が減少傾向にあること等、その結果は回を追う
毎に変動している。


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