(1) 消費 堅調な伸びもやや鈍化 ・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヶ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4% 増)とその伸びはやや鈍化した。 ・ 年明け以降、再び高い伸びを示し始めた推定出回り量は6月に入って前年同月 比3.7%増(輸入牛肉11.3%増)と伸び率は鈍化したものの4〜6月では前年同期 比11.2%増(同13.7%増)となっており、消費は引き続き好調に推移しているも のとみられる(図8)。 ・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、昨年の8月以降は前年水準を上回って推移している (図9)。 ・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、平成元年度も前半は高 い伸びを続けたが、ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいること(図10) から1月以降前年を下回って推移している(図9)。 (2) 生産 乳牛のと畜減もあって、前年度を下回る ・ 生産は平成元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、(図11)、元 年秋を境に減少率は縮小傾向にあり、6月は前年同月比97.0%(元年度は前年度 比94.8%)となった。また、季節調整後の生産水準は横ばいから若干上昇気味に 転じているとみられる。 ・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補う形で 推移してきたが、平成元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅 と畜減もあって、かなりの減少となった。 この傾向は基本的には2年度に入っても継続しており、6月の和牛の枝肉生産量 は前年同月比8.8%増と引き続き増加したのに対し、乳牛は8.0%減、特に乳めす 牛は8.3%減と引き続き低水準に推移しているものの、減少率は縮小(元年夏〜 秋、乳牛約10%減、乳めす約15%減)しており、乳牛の生産の減少はおおむね底 を打ったものとみられる(図12)。 (3) 輸入 一時停滞 ・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降平成2年度まで毎年6万ト ンずつ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意 されている(表3)。
表3 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 | 135千トン |
58 | 141 |
59 | 150 |
60 | 159 |
61 | 168 |
62 | 214 |
63 | 274 |
平成元年度 | 334 |
2年度 | 394 |
一般枠 | 364 |
特別枠 | 30 |
・ 既に、日本・日豪合意に即して平成2年度までの輸入枠が発表されており平成 2年度については、一般枠36万4千トン特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てら れることとなった。 ・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って輸入 量は前年同月を下回って推移している(図13)が、これは、昨年同時期が、割当 時期の前倒し及び発注時期の集中等により、輸入が急増し、高水準であったのに 対し、今年度は在庫がすでに高水準にあり、かつ新SBSの割合が高くなり、需要 者が一定の枠内で輸入時期を選べることから、当面の需給上必要となる量を輸入 しているためと考えられる。 畜産振興事業団の売買状況 ・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、平成元年度及び2 年度上期の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度327.6千ト ンでそのうち平成元年度には305.9千トンの買入れ(前年同期比32.3%増)、295 .9千トンの売渡し(前年同期比21.6%増)を行った。 7月売渡し分 ・ 事業団の7月売渡総数量は、前月比11.3%減の24,812トン(前年同月比5.6%増) となった。 部位別では、前月に比べ「かた」、「リブ・ばら」及び「もも」が大幅に増加 し、特に「もも」は前月比40.3%増となった反面、「バルク」は大幅減となった (巻末資料参照)。 (4) 価格動向 @国産牛肉卸売価格 輸入増にもかかわらずおおむね安定した推移 ・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、元年10月から2年 2月にかけては安定上位価格付近で堅調に推移したが、3月以降弱含みとなり、中 心価格と安定上位価格の中間付近で推移しており、6月は1,212円/kgと前月に比 べ若干回復した(図15)。 ・ 格付別にみると、和牛はA5やA4の高級品を始め全般的に横ばいないし若干強含 みで推移しており、この傾向は7月に入って一層強くなっている(図16)。 乳雌のC1や乳雄のB2等の低級品は弱含みで推移し乳用種総平均価格はかなり低 下した(図17)。しかし、7月に入ってこれら低級品も持ち直している模様であ る。 ・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている (図18)。 A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 8月売渡し ・ 8月の上場数量は、前月より1,000トン減の5,500トンとし、また、本月より上 場品目を2品目(フルブリスケット及びシックフランク)増やし、12品目とした。 せり結果、落札は、4,670トンで84.8%と上場数量を減らしたにもかかわらず 低落札率となった。 品目別に落札率を見ると、「エージドビーフ・フルセット」99.3%、「カウミ ート」97.3%、「チャック&ブレード」95.3%、「No.121Bショートプレート(1)」 95.2%、「フルブリスケット」92.3%、「No.189フルテンダーロイン」90.6%の 落札率は比較的高かったのに対し、「No.114ショルダークロッド」53.6%、「No .180ストリップロイン」41.9%「トップサイド」32.4%及び「シックフランク」 28.8%の落札率が低かった。特に「トップサイド」の急激な落札率の低下が目立 った。 東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.116スクエアカットチャッ ク」、「No.189フルテンダーロイン」、「No.121Bショートプレート(1)」、「チ ャック&ブレード」、「フルブリスケット」、「カウミート」及び「エージドビ ーフフルセット」の7品目であった。反面、「シックフランク」全量不落、「No. 114ショルダークロッド」4.9%及び「No.180ストリップロイン」8.8%と低落札 率となった。 一方、価格の動きは、ほぼ全体的に前月同であったが、「No.189フルテンダー ロイン」及び「No.121Bショートプレート(1)」が約2.0〜2.5%近く値を下げた。 (巻末資料参照)。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による6月30日及び7月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比で は、大部分の品目が約10%、中には35%近く値下がりを示した品目もあった。 また、前月比では、若干の品目を除き値下がりをしており、特に冷蔵品の「キュ ーブロール」が約10%近く値下がりを示した。 なお、主要部位の価格の動向は図19のとおりである。
表4 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 6 月 30 日 | 7 月 15 日 | |||||
価 格 円/kg |
比 率(%) | 価 格 円/kg |
比 率(%) | |||||
前月 同期比 |
前年 同月比 |
前月 同期比 |
前年 同月比 |
|||||
北米産 | 冷凍品 | NO112A リブアイロールリップオン |
2,166 | 96.2 | 101.2 | 2,148 | 99.0 | 101.4 |
NO116 スクエアカットチャック |
843 | 96.8 | 89.8 | 832 | 98.3 | 90.2 | ||
NO121B ショートプレート |
728 | 97.2 | 84.5 | 709 | 97.7 | 87.4 | ||
NO180 ストリップロイン |
1,798 | 97.0 | 93.3 | 1,786 | 98.9 | 93.7 | ||
NO189 テンダーロイン |
2,478 | 97.0 | 104.4 | 2,482 | 99.8 | 105.3 | ||
チャックリブ | 1,444 | 93.4 | 77.1 | 1,422 | 94.3 | 77.6 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 767 | 89.9 | 67.4 | 769 | 97.7 | 92.9 |
フルブリスケット | 750 | 95.2 | 69.1 | 738 | 95.3 | 76.7 | ||
ポイントエンドブリスケット | 822 | 96.7 | 76.4 | 803 | 95.6 | 80.3 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 690 | 93.2 | 70.7 | 673 | 93.6 | 73.1 | ||
キューブロール | 2,149 | 96.8 | 110.3 | 2,042 | 92.8 | 109.2 | ||
ストリップロイン | 1,688 | 97.6 | 102.1 | 1,706 | 100.3 | 104.3 | ||
テンダーロイン | 3,203 | 99.8 | 111.8 | 3,216 | 101.2 | 114.6 | ||
トップサイド | 891 | 88.0 | 74.9 | 886 | 93.8 | 76.7 | ||
カウミート | 703 | 98.0 | 77.7 | 693 | 97.6 | 86.8 | ||
エージドビーフフルセット | 1,063 | 92.3 | 84.6 | 1,074 | 97.8 | 90.5 | ||
冷蔵品 | キューブロール | 2,254 | 85.0 | 104.0 | 2,229 | 89.7 | 98.5 | |
トップサイド | 1,017 | 85.5 | 64.8 | 1,096 | 100.6 | 70.5 | ||
フルセット | 1,096 | 87.1 | 72.8 | 1,111 | 94.1 | 72.9 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 B小売価格 国産牛肉は上昇傾向、輸入牛肉はかなりの低下後回復へ ・ 国産牛肉は、平成元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその 後ほぼ横ばいで推移してきたものの、年明け以降、堅調に推移している。 輸入牛肉は、元年後半に入って弱含みで推移したものの、年明け以降、若干上 がったものの、5月以降再び横ばいで推移している(図20)。 C子牛価格 水準は高いものの弱含みへ ・ 和子牛価格は、和めすは平成元年12月に484千円、去勢和子牛は2年1月に563千 円と過去最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせた(図21)。 その後、6月にかけて更に若干低下しているものの(和めす402千円、和去勢487 千円)、7月に入って主要市場の価格は強含みとなっており、和子牛価格は落ち 着いた動きとなっている(図22)。 ・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで 推移したが、その後反転して強含みで推移したが、その後反転して強含みで推移 し、平成2年1月には、235千円と過去最高値を記録した。その後次第に価格を下 げており、5月には226千円となり、主要市場の価格動向からみて6月以降も低下 傾向は更に強まっているものとみられる。また、生後7日程度のヌレ子の農家販 売価格は平成2年5月まではおおむね12万円台で推移してきた(5月、126千円)が、 6月以降主要市場における価格は急落傾向にある。 ・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、生乳生産の増大に伴う 乳雄子牛の供給動向等を注視する必要があろう。 ・ 7月25日、平成2年度第一四半期の指定肉用子牛の平均売買価格が次のとおり告 示され、全品種とも保証基準価格を上回り、その結果、生産者補給金の交付には 至らなかった。 黒毛和種及び褐毛和種 446.2千円(2年度保証基準価格 304千円) その他肉専用種 225.3千円( 〃 214千円) 乳 用 種 222.7千円( 〃 165千円)
元のページに戻る