牛乳・乳製品


(1) 生乳生産
 伸び率は2ヵ月連続して前年水準を下回る
 
・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産の伸び率は、平成2年に入
 り次第に鈍化し、8月以降前年同月を下回って推移している。10月は、北海道の
 伸び率は前年同月を上回った(100.5%)ものの、都府県が前年同月を下回った
 (99.0%)ため、3ヵ月連続して前年同月を下回った(前年同月比99.5%)(図1)。

  これを季節調整値でみると、6月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳
 生産が10月に入って上昇に転じたことから、10月の全国の生産量は前月に引き続
 き増加しており回復のきざしも現われている(図2)。

・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、本年7
 月に前年同月水準に回復し、10月には前年同月比10.1%増と大幅な増加を示して
 いる。

  一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45
 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%を下回り(10月26.8%)、逆に、
 経産牛の割合は、55%から70%を上回る水準へと大きく上昇している(10月73.2
 %)(巻末統計参照)。

  以上のことから、未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)しているものの、
 経産牛のと畜が進んでおり、乳群の構成は若令化が進展しているものとみられる。

(2) 飲用牛乳等の需給
 好天に恵まれ需要の伸びは鈍化から再び高い伸びへ

・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5
 月以降再び高い伸びを示しており、10月も前年同月比4.0%の増加となった(図4)。

  これを季節調整値でみると、5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲用
 等向け処理量は、9月に入って前月を下回ったものの、10月は再び上向きに転じ
 ており、依然として14,000トンを上回る水準で推移している(図5)。

・ 飲用牛乳の生産は、元年12月以降低い伸びにとどまっていたが、2年5月以降大
 幅な伸びを示し、10月も対前年同月比6.5%増と大きな伸びを記録した(図6)。

  その内訳をみると、9月に伸びが鈍化した牛乳の伸び率は再び前年同月比5.8%
 増と高い伸びを示し、加工乳も前年同月比11.0%増と引き続き好調に推移してい
 る(図7)。

  醗酵乳の生産は7月に前年同月水準を下回って以来伸び悩んでいたものの10月
 には前年水準を上回った(10月前年同月比106.9%)。

  一方、これまで低調であった乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを記録し、10
 月に入っても前年同月比9.5%増と引き続き増加している(図6)。

(3) 乳製品の需給、価格動向
 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバターを輸入・放出 

・ 63年度から元年度前半にかけてひっ迫した乳製品の需給は、畜産振興事業団に
 よるバター、脱脂粉乳の輸入・放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月以降
 飲用需要の伸びが鈍化したことによる乳製品の生産増等により、均衡に向かい、
 元年度末のバター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表1)。

・ しかし、2年度に入り、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに
 伴い乳製品向け生乳処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月には1.9
 %減と63年6月以来ほぼ2年振りに前年同月を下回り、7月以降前年同月を大きく
 下回って推移している(10月対前年同月比9.1%減)(図4)。

  1日当たり処理量の季節調整値は、9月、10月と8月の水準を上回ったことから、
 5月以降の低落傾向にようやく歯止めがかかった感はあるものの、10月の水準は
 7,800トンを若干上回るにすぎず、依然、乳製品向け処理量は低水準にとどまっ
 ている(図8)。

  これに伴いバター、脱脂粉乳の生産量は、6月以降前年同月を下回り、10月は、
 バター20.0%減、脱脂粉乳14.8%減となった(図9、10)。

  バター及び脱脂粉乳生産の季節調整値は、1日当たり乳製品向け処理量とおお
 むね同様の動きを示しており、低水準ではあるものの(バターは62、63年より低
 い水準で、脱脂粉乳は63年水準で)ようやく下げ止まり、横ばいに転じたと考え
 られる(図11、図12)。

  こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は5月から、脱脂粉
 乳は7月からおおむね横ばいで推移してきたが、10月に入ってバター価格は前月
 に比べkg当たり4円上昇し、脱脂粉乳価格も9月以降わずかに上昇傾向にある
 (図9、10)。このような状況にあって、畜産振興事業団は、9月に2,992トン、
 11月に1,008トンのバターの輸入手当を行い、11月6日、2,342トン、11月21日、
 549トンを放出した。
表1 乳製品の在庫(各年度末)
                        (単位:千トン、ヵ月)

 \

区分 バ  タ  ー 脱脂粉乳
年度

民 間 事業団 民 間 事業団

55
56
57
58
59
60
61
62
63

16(3.1)
 7(1.3)
12(2.1)
17(2.8)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
12(2.3)
12(2.1)
 3(0.5)
 1(0.2)
0
0
0
0
0

0
28(5.4)
19(3.4)
15(2.6)
18(2.9)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
31(3.3)
16(1.5)
24(2.0)
23(1.9)
22(1.5)
32(2.3)
36(2.5)
13(0.9)
18(1.2)

33(2.2)
44(4.7)
44(4.2)
22(1.9)
 9(0.7)
 8(0.6)
 8(0.6)
 7(0.5)
 7(0.5)
 4(0.3)

0
75(8.0)
59(5.7)
45(3.8)
32(2.6)
30(2.1)
40(2.8)
44(3.0)
20(1.4)
23(1.5)

33(2.2)

資料:農林水産省畜産局調べ


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