★ 事業団通信


乳業部の業務紹介

乳業部


 畜産振興事業団が実施する業務のうち、乳業部が受けもつ主要業務は、「生乳及
び乳製品の価格安定業務」と「乳業者等に対する債務保証業務」であります。

  「生乳及び乳製品の価格安定業務」は、加工原料乳に対する生産者補給交付金
(いわゆる不足払い)の交付と指定乳製品の買入れ及び指定乳製品等の輸入並びに
これら乳製品の売渡しにより行います。価格安定業務の仕組みは下表@、A、Bの
とおりで、「乳業者等に対する債務保証業務」は、事業団へ出資した乳業者等が銀
行等の金融機関から資金の貸付けを受ける等の場合の債務について、事業団が保証
を行うものです。

 これ等の主要業務は、補給金課、乳製品課、保証課において分掌し、その具体的
実施方法は、以下のとおりです。

@  事業団による加工原料乳に対する不足払いの仕組み
Image2.gif (18642 バイト)
バター。脱脂粉乳、全脂加糖れん乳、脱脂加糖れん乳、全粉乳、加糖粉乳、全脂無糖れ ん乳、脱脂乳(子牛哺育用)
        特定乳製品(これの原料乳である加工原料乳が不足払いの対象)

A  事業団による指定乳製品等の買入れ売渡しの仕組み
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B  事業団による指定乳製品等の一元輸入対象品目
  指定乳製品・・・バター、脱脂粉乳、全脂加糖れん乳、脱脂加糖れん乳                  
  政令で定めるその他の乳製品・・・全粉乳、バターミルクパウダー、ホエイパ
                  ウダー
 (注)保証価格等の行政価格や限度数量は、農林水産大臣が畜産振興審議会の意
    見を聞いて、毎年度開始前に定めて告示します。

1.補給金課
  昭和40年初頭、我が国経済の高度成長及び食生活の変化等により生乳・乳製品
の需要は増大し、これに対応した生乳生産の安定的拡大が望まれましたが、生乳取
引きにおいて価格条件が不利となることが予想された加工原料乳(乳製品の製造原
料にまわされる生乳)について、その不利を補正するため、指定生乳生産者団体が
取り扱う加工原料乳に対し、生産者補給交付金(いわゆる「不足払い」を交付する
措置等を目的とした「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」が昭和40年6月に
制定され、これに基づき事業団は、昭和41年度より同交付金の交付業務を開始い
たしました。

1)用語説明
保証価格     :加工原料乳地域において生乳の再生産を確保しうる生乳価格
          生乳生産者(酪農家)の生産コストに基づき算定される。
基準取引価格   :乳業メーカーが生乳生産者に支払う(支払いうる)生乳価格
          安定指標価格から製造コストを差し引いて算定される。
限度数量     :交付金交付の対象となる加工原料乳数量の最高限度
特定乳製品    :指定乳製品及び全粉乳、加糖粉乳、全脂無糖れん乳、脱脂乳
         (子牛哺乳用)、(ナチュラルチーズは62年度より除外され
          た。)(特定乳製品の原料乳である加工原料乳が交付金の交
          付対象)
指定生乳生産者団体:都道府県知事が一定要件を満たしているものとして指定した
          生乳生産者団体

2)加工原料乳生産者補給交付金の交付
@  保障価格と基準取引価格の差額について、限度数量の範囲内で生産者補給交付
 金を交付します。

A  生産者補給交付金の交付の対象となる特定乳製品の原料乳である加工原料乳は、
 各月毎に、各都道府県知事が当該都道府県の指定生乳生産者団体が集荷、販売し
 た生乳に対し認定を行います。

B  事業団は、各都道府県から報告のあった認定数量に対してあらかじめ予定した
 都道府県毎の限度数量の範囲内で生産者補給交付金を指定生乳生産者団体に交付
 します。(指定生乳生産者団体は、その会員たる組合等を通じ生産者に交付しま
 す。)

C  生産者補給交付金は、四半期毎に概算払いを行いますが、補給交付金の交付対
 象加工原料乳の発生が少い都府県については、当該指定生乳生産者団体の申し出
 により年間一括して交付します。

  (加工原料乳保証価格等の推移については資料編に掲載しております。)

3)指定助成対象事業
  事業団が行う指定助成対象事業に対する補助又は出資の業務は、助成部が所掌し、
その概要は本報平成元年11月号で紹介いたしましたが、業務の円滑実施のため
「生乳の需給の調整に関する事業に要する経費」の補助に関するものについては、
乳業部において実施しております。

  平成元年度において実施している指定助成対象事業は、次のとおりです。

事業名     飲用牛乳市場安定化対策事業
交付決定額   80,466千円
事業実施者   (社)中央酪農会議
事業内容    飲用向生乳及び飲用牛乳の流通及び価格の動向にかんがみ、はっ酵
       乳、乳飲料、乳酸菌飲料等に使用する生乳、部分脱脂乳又は脱脂乳
       の取引きの推進及び飲用向生乳等の流通の適正化を図るための事業

事業名     生乳需給調整基金造成事業
交付決定額   10,500,000千円
事業実施者   (社)中央酪農会議
事業内容    生乳需給は、潜在生産力が需要量を上回っているため、基本的に供
       給過剰に陥りやすい状況となっており、需要に見合った計画生産を
       実施し、生産を抑制していく必要がある。この場合、飲用向け需要
       を中心として生乳需要は大きく変動することから計画生産の下にお
       いても生乳生産の過剰又は不足の事態が生じることは避けられない
       ところであり予期せざる需給の変動に対処し、酪農経営の安定を図
       るための事業


2.乳製品課
  乳製品課は、我が国酪農の安定的な発展を図るため、乳製品の価格安定を通じて
生乳の価格の安定を図る政策の実行部隊として、昭和36年事業団発足当初より、
その時々の生乳・乳製品の需給動向に対応し、指定乳製品の価格が低落したときは
これを買入れ、高騰したときはこれを売渡すとともに、必要なときは海外の指定乳
製品等を一元的に輸入し、売渡すという売買操作を行ってきました。

1)用語説明
指定乳製品 :バター、脱脂粉乳、全脂加糖れん乳、脱脂加糖れん乳
指定乳製品等:指定乳製品及び全粉乳、バターミルクパウダー、ホエイパウダー
安定指標価格:事業団の売買操作により、指定乳製品の価格を安定させる目標価格
       水準)過去の実勢価格により算定される。)

2)指定乳製品等の売買操作
  国産指定乳製品の取引価格が、安定指標価格の90%を下回って低落し、又は低
落するおそれのある場合には、事業団は、生乳生産者団体の申込みにより安定指標
価格の90%で国産指定乳製品を買入れることができます。

  一方、国産指定乳製品の取引価格が安定指標価格を超えて騰貴し、又は騰貴する
おそれのある場合には、事業団は指定乳製品等を一元的に輸入することができ、安
定指標価格の104%を超えて騰貴し、又は騰貴するおそれがある場合は、保管に
かかる国産指定乳製品及び輸入にかかる指定乳製品等を売渡す(市場に放出する)
こととされています。

  最近の例で申しますと、昭和63年度及び平成元年度において飲用牛乳消費が増
大したため乳製品向け生乳に不足を来し、指定乳製品価格が高騰したので事業団は、
バター、28,906トン、脱脂粉乳32,105トンの輸入及び売渡し(脱脂粉
乳にあっては在庫品7,423トンを含む39,528トン)を実施し、乳製品価
格の安定化に努めました。

  (指定乳製品等の売買実績、大口需要者向販売価格の状況、安定指標価格の推移
等については、資料編に掲載しております。)

3.保証課
  昭和33年4月、乳業者及び生乳生産者の経営の維持及び安定に要する資金につ
き、これらの者が金融機関に対して負担する債務を保証してその融通を円滑にする
ことを目的とした酪農振興基金法が制定されたことに伴い、事業団の前進である酪
農振興基金が昭和33年11月に設立され、「乳業者等に対する債務の保証業務」
が開始されました。

  その後、昭和36年11月畜産物の価格安定等に関する法律の制定に伴い、酪農
振興基金法は廃止され、畜産振興事業団が設立されると同時に酪農振興基金は解散
されました。しかし、この際、酪農振興基金の権利及び義務は事業団に承継され、
畜産物の価格安定等に関する法律においても「乳業者等に対する債務の保証業務」
は継続され、保証課において実施されています。

1)事業団への出資
  債務の保証を受けることができる者は、乳業者等であって、事業団に出資した者
に限られます。

2)対象資金
  次の資金が債務の保証の対象となります。
 @  生乳の購入又は処理・加工に必要な運転資金
 A  乳製品の保管その他経営に必要な運転資金
 B  経営の合理化のための設備資金

3)保証期間
 @  運転資金は1年間(ただし、1年に限って延長が認められています。)
 A  設備資金は、7年間

4)保証金額の最高限度
 @  一被保証人についての保証金額(保証残高)の最高限度は、その被保証人の
  出資額の10倍
 A 事業団の最高限度は、債務保証勘定において整理される出資金と積立金の合
  計額の5倍

5)保証料
  事業団は、被保証人から保証料をいただきます。

  保証料は、保証金額に対し現在、年0.73パーセント相当額です。

  以上、乳業部が行っている業務の概要につきまして、ごくごく簡単に紹介いたし
ましたが、酪農、乳業をとりまく情勢は、生乳の需給の緩和の傾向とこれを踏まえ
た生乳計画生産の強化の必要性、引き続く自由化要請の外圧の高まり、はたまた牛
肉の輸入自由化の酪農業への影響等きびしいものがあります。

  乳業部といたしましては、その時々の情勢にマッチした価格安定業務を行い、日
本の酪農・乳業界発展の一助となるよう頑張って参る所存であります。

  今後とも、皆様方の御協力・御指導を切にお願い申し上げ、乳業部の業務紹介と
いたします。


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