★ 国内現地の新しい動き


我が国の肥育結果では外国種間に大きな格差なし

全国肉牛事業協同組合理事長  下山 好夫氏、講演一部要旨


 畜産振興事業団は、例年、助成部主催で、事業団からの出資会杜に対する経営者
研修会を開催している。

 本年は、2月1日から2日にかけて、@「牛肉輸入自由化における流通業界の動き」
を潟Cトーヨーカ堂精肉部総括マネージャー熊崎弘氏、A「牛肉輸入自由化を迎え
ての国内肥育経営」を全国肉牛事業協同組合理事長下山好夫氏、B「今後の経済見
直し」を日本経済新聞社編集局総務杉田亮毅氏の3氏の講師のもとで開催された。

 いずれも、豊富な経験を生かして、示唆に富んだ内容であったが、このうち牛肉
輸入自由化を来年にひかえて、国内生産者の立場から豊富な経験去ふまえた下山氏
の講演は、海外の肉用牛の飼育状況の評価、国内産地や流通の変化、今後の肥育経
営のあるべき方向等について広範に及んだ。

 講演中、我が国で日本式の飼料と飼育方法で外国種を肥育した場合、どの程度の
評価が具体的に得られるかについて、多数の外国種を農場で肥育し、その結果を公
表されたので、その一部を本紙で紹介したい。

 当データは、現在、豪州、アメリカ等において、日本市場をねらって日本向けに
肥育されたものが我が国でどの程度の評価を得るかという疑問について1つの示唆
を与えるものであろう。もっとも、今後海外においても素牛を厳選すること、肥育
方式を改善することによる晶質の向上、他方、外国でと殺して我が国にまで持って
くることによる肉質低下等、すぐさま外国産牛肉との評価にむすびつくものでない
ことは、いうまでもない。

出荷結果の概要
<素牛が同一価格ならばホルスの方が有利>
(1) 下山氏の参加する農場は年間1600頭程度を出荷する農業組合法人であって、当
 農場内で各種の外国種が肥育されている。

(2) 外国種及び乳用種の肥育素牛の体重、肥育日数等の飼養方法及び出荷牛の結果
 は、表のとおりである。なお、外国種に対する飼料の給与方法等飼養管理につい
 ては、現在、マニュアル作りの過程であり、やや経験不足との説明もあり、今後
 は外国種がもう少し向上する要素がある。

(3) 生体出荷牛を除いたすべての出荷牛は、下妻と場でと殺解体後、会頭を格付し、
 販売されたものである。

(4) 外国種の品種による販売価格差は、平均的にみると、枝肉1s当たり60円以内
 でさほど大きくない。

 マリーグレーは販売単価は高いものの、憎体量が4種類の中では最も低く、必ず
しも経済的に良いとは思わない。アンガス、アンガスクロスが外国種の中ではよい
と思う。

(5) 乳雄去勢牛と外国種を比較すると、ホルスは売りやすく、市場でも適正な評価
 を与えられている。これに対して外国種は、現在、流通量が少なく、価格形成上
 やや不利な扱いを受けていると思う。従って、肥育素牛が同一単価ならば現在の
 ところ、ホルスのほうが経営上有利である。

(6) 乳雄は、89年7月〜89年12月にかけて、494頭出荷し、このうち、345頭は生体
 出荷している。生体単価は、765円/kgで枝肉に換算すると1,324円程度となる。
 他方、枝肉で出荷されたものは1,299円で生体牛の方が40〜50円/s高いと思う。
 これは生体の場合、内蔵や皮が適正に評価されているためと思う。

            外国種出荷牛種類別比較表(1頭当たり)
   種類 頭数 素牛体重 飼料費 肥育日数 枝肉単価 枝肉重量 枝肉歩留 販売体重 DG
調査期間
88年7月1日〜89年12月末

アンガス種
アンガスクロス
ヘレフォード
マリーグレー

242
92
43
78
kg
◎ 291
◎ 291
★ 281
◎ 291

93,460
93,892
★91,307
◎103,480

362
★356
369
◎379

225頭 1,224
83頭 1,229
★43頭 1,193
◎78頭 1,257
kg
225頭 383.0
83頭 387.0
★43頭 373.0
◎78頭 388.0

225頭 60.21
83頭 60.63
★43頭 59.34
◎78頭 60.98
kg
635
◎ 639
★ 629
636
kg
0.95
◎ 0.98
0.94
★ 0.91
外国種合計 455 290 95,062 365 429頭 1,228 429頭 383.0 429頭 60.34 636 0.95
89年7月
〜同12月
外国種合計 183 295 106,114 380 157頭 1,243 394 60.49 650 0.93
参考
乳用種(去勢)
494 279 158,373 404 149頭 1,279 421 57.76 729 1.115
注:1)◎は最大値 ★は最小値
  2)出荷頭数と枝肉頭数との差は、生体出荷したものである。
  3)生体単価は、出荷期間89年7月〜同12月間で乳雄345頭の平均単価765円/kg、
   外国種26頭の平均単価750円/kgである。
  4)枝肉の格付規格別分布は以下のとおりである。
                                      (単位:%)
出荷期間 88年7月〜89年12月 89年7〜12月
    アンガス アンガスクロス ヘレフォード マリーグレー 外国種合計 外国種合計 乳用種
B-4
A-3
B-3
C-3
A-2
B-2
C-2
B-1
C-1

0.9
6.7
0.4
0.4
82.7
8.0
0.9


2.4
2.4

84.3
10.9



9.3


74.4
11.6
2.3
2.3


7.3
1.3
2.5
71.8
14.1
1.3
1.3

0.5
6.3
0.9
0.7
80.2
10.0
0.9
0.5


6.4
0.6

72.6
16.6
2.5
1.3
3.4

40.9
6.7

41.6
7.4

 


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