★ 事業団通信


新SBSこの一年(その2)

食肉部 食肉第3課


新SBSこの一年(その2)

4.品目別売渡し実績
  新SBSの特徴の一つに、入札における競争の公平性を維持するための最小限の区
分として12のカテゴリーは設けるものの、事業団はこの方式に基づいて売買され
る現品の品目・規格等を定めず、売買の当事者同士がこれらについて協議し決める
ということがある。

  このことは逆に見れば、入札終了時点では今後どのようなカテゴリーのものが売
渡しされるかは解っても、細部については現品が売渡しされるまでは解らないとい
うことになる。

  ユーザーの方々が、その時々の品目別需給動向を見ながら売渡し期限(4〜6ヵ
月)の中である程度の品目の選択の調整を行うためには、現実にどういうものが入
ってきているかを出来るだけ早く知る必要がある。

  このため事業団としては、参考に資するため新SBSの品目別売渡し実績について
毎月公表することとし、この「畜産の情報」にも掲載している。

  牛肉自由化に向かって事業団の輸入牛肉売買に占める新SBSの数量が拡大する中で、
どの様な品目・規格のものが売渡しされているかを注意深く見ていけば、その時々
の品目別牛肉の需給動向をある程度判断でき、さらに自由化後の輸入牛肉の品目別
の需要を予測するのに役立つものと思われる。

(1)品目数の推移
  事業団の品目分類(ほぼ同一品目でも、グレインフェッドとグラスフェッドで品
目呼称が異なる場合は区分されるが、冷蔵品・冷凍品による区分はしない)による
品目数については、

 昭和63年10月売渡し分は、
  枝 肉  1品目
  ロイン  14 〃
  バルク  1 〃
  その他  44 〃(フルセットを含む)
   (か   た  12品目)
   (も   も  21 〃 )
   (リブ・ばら  9 〃 )
   (そ の 他  1 〃 )
の合計60品目であった。

  平成元年10月売渡し分までの累計売渡実績では、
  枝 肉  5品目
  ロイン  32 〃
  バルク  10 〃
  その他  92 〃(フルセットを含む)
   (か   た  22品目)
   (も   も  41 〃 )
   (リブ・ばら  20 〃 )
   (そ の 他  8 〃 )
の合計139品目(63年度、元年度の累計実数では158品目)となっている。

  これらの品目数については、ほぼ同一の品目について呼称の違いにより区分され
て計算されているとしても、事業団が規格を定め売買していた30数品目と比して
扱い品目は大幅に増加しているといえる。

  このことは、汎用性のある一般的な規格のものと、各自独自の規格のものが混在
していることを示しており、それぞれが需要者、消費者等のニーズに対応し多様化
している結果と思われる。

(2)部位別売渡しの特徴
 @  新SBSで売渡しされた(63年10月〜平成元年9月の累計)部位別構成割
  合は、

  ロ イ ン  14.4%
  か   た  32.4%
  も   も  22.2%
  リブ・ばら  31.0%となっており、

 A  一方、国内産の牛肉(乳おす)の部位別構成割合は、
  ロ イ ン  15.8%
  か   た  27.5%
  も   も  30.1%
  リブ・ばら  26.6%である

  脂肪等のトリミングの仕方や、部分肉の整形の違いを考慮しなければならないが、
新SBSで輸入されてくる牛肉の国内産の牛肉を比較すると、輸入牛肉では「もも」
の比率が低く、「かた」及び「リブ・ばら」の比率が高くなっているものの、極端
に特定部位に集中していることもなくバランスがとれているものと思われる。

 B  また、これらを時系列的にみると、
            88年10月〜12月売渡し  89年7月〜9月売渡し
              (63年度第3四半期)      (元年度第2四半期)
ロ  イ  ン           21.4%      →          9.9%
か      た           38.0%      →        30.1%
も      も           13.5%      →        26.4%
リブ・ばら           27.0%      →        33.6%
  となっており、1年間の累計で見た場合と様相はかなり異なっている。

  「ロイン」は、受渡しが始まった頃は20%を越える高率であったが、以降比率
が低下し続け、最近では10%以下に落ちている(なお、10〜11月では若干回
復しつつある)、また、「かた」も比率が低下したが、逆に「もも」は大幅に比率
が増加し、「リブ・ばら」も比率が増加した。

  このことは、数量が限られている間は特定の高付加価値製品に引合いが集中した
ものの、数量が増えるにしたがって特定のものが特定ではなくなる、すなわち、供
給を需要にバランスをさせるという経済原則に基づかざるを得ないためと思われる。

  したがって、ウエイトの高かったものは低くなり、低かったものは高くなり時間
の経過とともにバランスするものと思われる。

別表1.新SBSにおけるロイン/その他の受渡し実績数量(四半期別)
                            単位: 数量=トン、比率=%

分 類

88/10-88/12 89/01-89/03 89/04-89/06 89/07-89/09 89/10-89/11
(参考)
数量 比率 数量 比率 数量 比率 数量 比率 数量 比率
ロ イ ン 5,044.1 21.4 3,349.0 15.2 3,092.0 12.0 2,745.5 9.9 1,655.8 10.9
か  た 8,972.7 38.0 7,249.5 33.0 7,576.8 29.4 8,356.5 30.1 4,303.8 28.3
も   も 3,194.7 13.5 4,700.8 21.4 6,814.8 26.4 7,348.8 26.4 4,314.9 28.4
リブ・ばら 6,375.9 27.0 6,682.9 30.4 8,318.6 32.2 9,336.8 33.6 4,940.6 32.5
23,587.4 100.0 21,982.2 100.0 25,802.2 100.0 24,787.6 100.0 15,215.1 100.0
受渡し
総量=100
   79.4    79.5    76.6    74.3    66.2
(3)特定品目
  新SBSで受渡しされる品目の中には、事業団の一般的な売買で取り扱ったことの
ない特定の品目がある。

  取扱数量の多いものでは、「かた」の部位ではチャックアイロール、チャックリ
ブ、「もも」の部位ではボトムサーロインの小割品目(フラップミート、ボールチ
ップ及びトライチップ)、「リブ・ばら」の部位ではショートリブ(ボーンイン・
ボーンレス)等である。

  中でも、際だっているものはチャックリブとショートリブであり、63年10月
〜元年9月までの間の累計ベースでみると、総数量に対する比率はそれぞれ9.3
%と11.1%となっており、この2品目だけで新SBSの受渡し数量の2割を超え
ている。

  また、このことが部位別構成割合で「かた」及び「リブ・ばら」の比率を高めて
いる。

  1頭の肉牛から採れるチャックリブの量は、2.5kg程度であり、ショートリブ
(ボーンイン)は、3kg程度である。したがって、新SBSが始まって1年間で受渡
しされた量は、おおよそ550万頭の肉牛から生産されたものとなる。

  国内でと殺される成牛の年間頭数は、おおよそ150万頭であることから見ても、
その量はざましいい量に達していることが解る。

  なお、これら特定品目の用途は、チャックリブ、ショートリブ及びボトムサーロ
イン小割は高級焼肉商材であり、チャックアイロールはすき焼き、シャブシャブ用
であり、輸入牛肉に求められるものは何かを端的に示している好例と思われる。

別表2.新SBSにおける分類別及び特定品目別の受渡し数量(四半期別)
                               単位:数量=トン、比率=%
分 類 88/10-88/12 89/01-89/03 89/04-89/06 89/07-89/10 89/10-89/11
(参考)
数量 比率 数量 比率 数量 比率 数量 比率 数量 比率

枝肉

2,654.7 8.6 2,922.2 10.6 4,938.1 14.7 3,968.0 10.6 5,005.4 21.8
ロイン 5,044.1 17.0 3,349.0 12.1 3,092.0 9.2 2,745.5 7.3 1,655.8 7.2
バルク 3,244.6 10.9 2,319.0 8.4 2,203.7 6.5 4,682.9 12.5 1,964.5 8.5

その他

かた 8,972.7 30.2 7,249.5 26.2 7,576.8 22.5 8,356.5 22.4 4,303.8 18.7
もも 3,194.7 10.8 4,700.8 17.0 6,814.8 20.2 7,348.8 19.7 4,314.9 18.8
リブばら 6,375.9 21.5 6,682.9 24.2 8,318.6 24.7 9,336.8 25.0 4,940.6 21.5
フルセット 244.2 0.8 341.5 1.2 617.5 1.8 768.0 2.1 636.0 2.8
その他 57.0 0.2 98.0 0.4 141.8 0.4 175.0 0.5 157.9 0.7
合計 29,697.9 100.0 27,662.9 100.0 33,703.3 100.0 37,381.5 100.0 22,978.9 100.0

特定品目

チャックロール 2,370.2 8.0 1,252.5 4.5 997.2 3.0 1,889.4 5.1 1,599.4 7.0
チャックリブ 3,470.3 11.7 2,353.3 8.5 3,277.5 9.7 2,896.8 7.7 1,455.3 6.3
ボトムサーロイン小割 395.1 1.3 378.9 1.4 845.9 2.5 863.6 2.3 443.4 1.9
ショートリブ(BIN) 2,188.4 7.4 1,110.4 4.0 2,258.5 6.7 1,418.4 3.8 867.4 3.8
ショートリブ(BIS) 1,995.2 6.7 1,555.6 5.6 1,661.3 4.9 2,039.2 5.5 1,412.7 6.1
10,419.2 35.1 6,650.7 24.0 9,040.4 26.8 9,107.4 24.4 5,778.2 25.1
5.ブランド推移
(1)ブランド数の推移
 「新SBSこの一年(その1)」で述べた通り、国内では、新規参入の輸入者(19
社)及び需要者(142社(団体))が入札の回を追う毎に増加しているが、輸入
されてくる牛肉の製造元等を表すブランドについても下表の通り増加し続けている。

  このことは、新SBSの下で国の内外とも輸入牛肉の取引が拡大していることを現
しているものであり、特に海外に対しては、よりよい商品を捜す努力がなされてい
ること、及び海外からの売り込みが活発化していることを反映しているものと思わ
れる。

別表3  国別ブランド数の推移
国 名 区分 ブランド数
豪 州  昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
45
7
9
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 43
N・Z  昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
5
6
1
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 10
米 国  昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
67
46
14
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 99
カナダ  昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
6
2
3
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 5
アイルランド
他2ヵ国
 昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
5
4
4
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 5
合 計  昭和63年度下期に受渡しのあったブランド数(A)
 平成元年度に新たに増加したブランド数(B)
 昭和63年度下期限りとなっているブランド数(C)
128
65
31
 平成元年11月末現在のブランド数(A)+(B)−(C) 162
  なお、豪州産については43ブランド中35ブランド、米国産については99ブ
ランド中37ブランドが事業団の一般買入れの登録ブランドである。

(2)受渡し数量の多いブランド名(豪州・米国のみ上位20位まで)
  受渡し数量の多いブランドはほぼ安定しているが、順位の入れ替わり等は生じて
いる。

  豪州産のものにあっては、昭和63年度下期に20位以内に入っていたHUTTON及
びMCPHEEは、平成元年度ではそれぞれ24位、25位に後退し、代わりにMOREX
(63年度下期の26位から)及びSMORGON(23位から)が上昇してきた。

  また、米国産にあっては、DUBUQUE(35位へ、ただし途中からNEBRASKA  BOXED  
BEEFに統合)、GOLDEN  EAGLE(21位へ)、NEBRA  SKA−DUPACO(30位へ、現
在NEBRASKA  BOXED  BEEFと並存)、CHAMPION(28位へ)、COLONIAL  BEEF(27
位へ)及びKING  MEAT(25位へ)が後退し、代わってHEART  RAY(26位から)、
NEBRASKA  BOXED  BEEF(40位から)、O'NEILL(30位から)、AURORA  PACKING
(24位から)、MOPAC(22位から)及びSOUTHFIELD(57位から)が上昇してい
る。

  ブランド数の推移と併せてみると、豪州産のブランドは長年の輸入経験からほぼ
特定のものに定まっているが、米国産のものは上位の数ブランドを除くと現在でも
数が増加し順位も入れ替わりが激しいことから、ブランドの模索段階が続いている
ものと思われる。

  なお、米国産で受渡し数量が増え、順位が上昇しているブランドは、冷蔵品・枝
肉の量が急増しているところが多い。

別表4  受渡数量の多いブランド名(豪州・米国のみ)
生産国名 昭和63年度下期累計
(10月〜3月)ベース
平成元年度累計
(4月〜11月)ベース
豪 州 1.BEEF CITY
2.GILBERTSON
3.WEDDEL
4.OKEY
5.TEYS
6.JOHN DEE
7.DRLING DOWNS
8.G.&K.O’CONNOR
9.HUTTON
10.BERDEEN
11.TNCRED
12.MORFIELD
13.KILLR BEEF
14.MCPHEE
15.KILCOY
16..M.H.
17.SOUTH BURNETT
18.METRO
19.REMSERV
20.T.B.S.
1.GILBERTSON
2.OKEY
3.BEEF CITY
4.JOHN DEE
5.WEDDEL
6.TNCRED
7.TEYS
8.REMSERV
9.G.&K.O’CONNOR
10.BERDEEN
11..M.H.
12.DRLING DOWNS
13.KILCOY
14.METRO
15.KILLR BEEF
16.T.B.S.
17.MOREX
18.MORFIELD
19.SMORGON
20.SOUTH BURNETT
米 国 1.I.B.P.
2.EXCEL
3.MONFORT
4.SKYLRK
5.UNIBRIGHT
6.WSHINGTON BEEF
7.DUBUQUE
8.MNNING’S BEEF
9.B.S.I.
10.JOHN MORRELL
11.NTIONL BEEF
12.SHENSON
13.HRRIS RNCH
14.GOLDEN EGLE
15.SUGR GOLD
16.NEBRSK−DUPCO
17.ST.HELEN’S
18.CHMPION
19.COLONIL BEEF
20.KING MET
1.I.B.P.
2.EXCEL
3.MONFORT
4.MNNING’S BEEF
5.SKYLRK
6.HERT RY
7.UNIBRIGHT
8.HRRIS RNCH
9.NTIONL BEEF
10.WSHINGTON BEEF
11.JOHN MORRELL
12.B.S.I.
13.SUGR GOLD
14.NEBRSK BOXED BEEF
15.ST.HELEN’S
16.O’NEILL
17.SHENSON
18.UROR PCKING
19.MOPC
20.SOUTHFIELD
6.おわりに

  新SBSが実施となってからほぼ1年3ヵ月が経過し、ある程度その動向が明確にな
ってきつつあり、これらを注意深く観察しその動向を読み取ることは、自由化に向
かって、及び自由化後の姿を模索する上で非常に重要なことである。

  自由化までに残された期間はわずか一年あまりとなったが、今回提供した情報が
少しでも皆様の自由化への対応に役立つことになれば幸いであり、今後も機会ある
ごとに必要な情報は出来る限り提供して行くこととしている。


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