(1) 生乳生産 伸び率が鈍化。 ・ 飲用需要が好調に伸びたこと等により、生産は62年度から前年を上回り、平成 元年度は前年度比5.4%増と高い伸びを記録し、史上初めて800万トンを超した (813万トン)。とりわけ北海道は高い伸びを示した(同7.9%増)。 ・ しかし、元年12月以降、伸びは鈍化しており、5月は対前年同月比3.2%の伸び となった(図1)。 ・ 月別の生乳生産量は、特有の季節変動を伴いつつ、その時々の特別な要因等に よって変動することから、EPA法により季節変動及び不規則変動を除去して、中 期的な生産動向をみた(図2)。これによれば、傾向曲線(傾向変動及び循環変 動を表示)は、62年11月に底を打った後、上昇に転じ、63年後半に最も高い伸び を示した後、徐々に伸びが鈍化し、最近ではゆるやかな上昇となっている。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は依然として前年を大きく下回って推移している(5月 の乳用めす牛と畜頭数前年同月比8.8%減)が、その内訳を格付け結果からみる と、経産牛のと畜頭数は2年に入りようやく前年水準を上回り始め(5月対前年同 月比11.1%増)、経産牛の更新が進み始めたとみられる一方、未経産牛のと畜は 引き続き低水準で推移しており(5月前年同月比29.2%減)、保留意欲が依然高 いことがうかがわれる(図3)。 (2) 飲用牛乳等の需給 需要の伸びも鈍化から持ち直しのきざし ・ 62年度以降、元年度前半までの飲用牛乳の消費は、飲用牛乳の成分がグレード アップされたこと、好天に恵まれたこと等の要素に加え、小売価格が弱含みで推 移しているため、好調に推移した。 ・ これを受けて生乳の飲用等向け処理量は元年度後半に入り鈍化傾向をみせてい るものの、62年度以降3ヶ年連続して高い伸びを示した(対前年度比、62年度5.9 %、63年度4.8%、元年度2.8%増)。 ・ 平成元年12月以降、飲用等向け処理量は、低い伸びにとどまっており、4月に は、61年8月以降初めて前年同月を下回った(前年同月比0.1%減)。その後、5 月に入って前年同月比2.3%増と持ち直している(図4)。 ・ 飲用牛乳の生産は、昨年末から低い伸びにとどまっていたが、5月には前年同 月比3.3%と再び上昇に転じた(図5)。その内訳をみると、4月に前年水準を割 込んだ牛乳は再び増加に転じ(5月対前年同月比2.5%増)、加工乳も引き続き高 い伸び(5月対前年同月比8.7%増)を示している(図6)。 乳飲料、乳酸菌飲料のいずれも前年同月水準を下回っている中で、醗酵乳の生 産は依然として堅調に推移している(図5)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 需給は改善、価格は軟化 ・ 62年度以降、飲用需要が好調に推移したこともあって、62年度末には乳製品の 過剰在庫は解消され(表1)、63年度から元年度前半にかけて乳製品需給はひっ 迫し、このため、畜産振興事業団はバター、脱粉の輸入・放出を実施した。 昭和63年度及び平成元年度の畜産振興事業団売買数量
バター | 脱粉 | |
買入数量 | 28,906t | 32,105t |
売渡数量 | 28,906 | 39,528 |
最近では、生乳生産の増勢が強まり、反面、飲用需要が鈍化したことから乳製 品向け処理量も前年同月比10%前後の高い伸びを続けた(図4)。このため乳製 品生産量も高い伸びを示しており、価格は元年度後半からは軟化傾向に転じてい る。 ・ 5月の乳製品向け処理量は生乳生産の伸びが若干鈍化するなかで飲用牛乳等向 け処理量が若干上向いたことから、前年同月比4.5%増と最近では比較的低い伸 びとなった(図4)。乳製品の生産量を種類別にみると、れん乳類、全粉等の生 産が低水準であったこともあり、バター(前年同月比6.7%増)、脱脂粉乳(同 7.4%増)の生産は引き続き高水準で推移した。(図7,8)。
表1 乳製品の在庫(各年度) (単位:千トン、ヵ月)
\ |
区分 | バ タ ー | 脱脂粉乳 | ||||
年度 | \ |
民 間 | 事業団 | 計 | 民 間 | 事業団 | 計 |
55 |
16(3.1) 7(1.3) 12(2.1) 17(2.8) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
12(2.3) 12(2.1) 3(0.5) 1(0.2) 0 0 0 0 0 0 |
28(5.4) 19(3.4) 15(2.6) 18(2.9) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
31(3.3) 16(1.5) 24(2.0) 23(1.9) 22(1.5) 32(2.3) 36(2.5) 13(0.9) 18(1.2) 33(2.2) |
44(4.7) 44(4.2) 22(1.9) 9(0.7) 8(0.6) 8(0.6) 7(0.5) 7(0.5) 4(0.3) 0 |
75(8.0) 59(5.7) 45(3.8) 32(2.6) 30(2.1) 40(2.8) 44(3.0) 20(1.4) 23(1.5) 33(2.2) |
資料:農林水産省畜産局調べ
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