牛肉


(1) 消費
 堅調な伸びもやや鈍化

・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヶ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年
 度は約70万トン(前年度比2.4%増)とその伸びはやや鈍化した。

  元年度の推定出回り量の伸びの鈍化の主因は、国内生産の減少に伴うもので、
 輸入牛肉に限ってみれば、前年度比14.9%増と依然高い水準にある(国内産は、
 6.5%減。巻末資料参照)。

・ 3月は、前年が大幅なプラスであったことから前年同月比で2.1%減少したもの
 の、推定出回り量は3、4月と連続して6万トンを超えており、消費は引き続き好
 調に推移しているものとみられる。

・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を
 下回って推移していたが、昨年の8月以降は前年水準を上回って推移している
 (図10)。

・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、平成元年度も前半は高
 い伸びを続けたが、1月以降前年を下回って推移している(図10)。

(2) 生産
 乳牛のと畜減もあって、前年度を下回る

・ 生産は需要の増加に対応して増加を続けてきたが、近年その伸びが次第に鈍化
 してきており、平成元年度は約38万トンと前年水準を下回った(前年度比5.2%
 減、図11)。

・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補う形で
 推移してきたが、平成元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅
 と畜減もあって、かなりの減少となった(図12)。

(3) 飼養動向
 頭数は着実に増加。北海道が大幅増。

・ 61〜63年度にかけて、和牛めすの大幅なと畜減が続き、元年度も低水準で推移
 したことから、自家保留が進み、2月の肉用種の子取用めす飼養頭数は、前年同
 月比2.0%増の686.5千頭となった。また乳用種も1.4%増加したことから、全国
 の肉用牛の統計も1.9%増の2,702千頭となった(図13)。

・ 地域別には、北海道の伸び、特に肉用種の伸び(前年同月比15.2%増)がめざ
 ましく、九州は、肉用牛総頭数の伸びは比較的ゆるやかなものの、子取用めす牛
 頭数は着実に増加(前年同月比2.6%増)している。

・ 和牛のと畜頭数は、4月に入っても前年を大きく上回って推移(前年同月比9.8
 %増)しているものの、去勢和牛のと畜は依然めす和牛を上回っており、めす牛
 の保留がわずかながら進んでいるとみられる。

(4) 輸入
 引き続き増加

・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降平成2年度まで毎年6万ト
 ンずつ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意
 されている(表3)。
表3 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度  
一般枠 167(上期)
特別枠 30(年度)
・ 平成2年度については、特別枠は3万トン、一般枠は上期分として16万7千トン
 が割り当てられた。

・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加しており、元年度は前年度比27
 .5%増の約364千トンとなった(図14)。

・ 4月から自由化された煮沸牛肉は関税引上げの影響もあって大幅な減少をみせ
 た(前年同月比76%減)(巻末資料参照)。

・ 元年4月以降急速に増大した牛肉在庫量は、10月末をピークにその後減少傾向
 にあり、4月末は109千トンとほぼ横ばいとなっている(図15)。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、平成元年度及び2
 年度上期の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度上期150.3
 千トンでそのうち平成元年度には305.9千トンの買入れ(前年同期比32.3%増)、
 295.9千トンの売渡し(前年同期比21.6%増)を行った。

5月売渡し分
・ 事業団の5月の売渡総数量は、前月比19.3%増の30,758トン(前年同月比29.5
 %増)となった。

  部位別では、前月に比べ「ロイン」37.4%、「かた」33.3%、「リブ、ばら」
 26.0%及び「枝肉」23.6%と大幅増となった反面、「バルク」のみが減となった。
 
  なお、冷蔵品の「かた」、「ロイン」、「リブ、ばら」及び「もも」は、いず
 れも前月に比べ減少した(巻末資料参照)。

(5) 価格動向  
 @国産牛肉卸売価格 
 輸入増にもかかわらず安定した推移 
・ 63年度から改訂された枝肉取引規格により価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」 
 規格)についてみると、63年度はおおむね安定価格帯の中心価格と安定上位価格
 の間で強含みで推移した。 

・ 平成元年度は安定価格帯の中でおおむね安定上位価格付近で堅調に推移してい
 る(図16)。 

・ 4月に入っても、2年度安定上位価格付近で堅調に推移している。

・ 格付別にみると最も低価格の乳雌のC1や乳雄のB2は弱含みで、和牛につい
 ては若干強含みで推移している(図17)。

 A輸入牛肉卸売価格 
 総じて弱含み傾向 
・ 市場せり状況をみると以下のとおり 

6月売渡し  
・ 6月の上場数量は、前月より500トン減の7,500トンとした。せり結果、落札は、
 6,858トンで落札率は91.4%となり、昨年11月以来の低い落札率となった。     

  部位別に落札率を見ると「NO121Bショートプレート(1)」のみが前月と同様に
 全量落札したほかは、「チャックアンドブレード」99.3%、「NO189フルテンダ
 ーロイン」98.7%、「エージドビーフ・フルセット」98.1%、「カウミート」9
 0.4%、「NO121Aリブアイロールリップオン」89.8%、「NO116スクエアカットチ
 ャック」71.2%及び「NO180ストリップロイン」71.0%と不落が生じた。特に「N
 O116スクエアカットチャック」の急激な落札率の低下が目立った。

  東京食肉市場のせり結果は、全量落札は、「NO189フルテンダーロイン」、「N
 O121Bショートプレート(1)」及び「チャックアンドブレード」のみであった。一
 方、価格の動きは前月に比べ全品目とも値を下げたが、特に「チャックアンドブ
 レード」は、前月に引き続き急落した(巻末資料参照)。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 
 事業団調査による4月30日及び5月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比で
は、米国産・豪州産ともロイン系が値を上げたほか、大部分の品目が約10%、中に
は30%近く値下がりを示した。

 また、前月比では、全体的に値上がりをしたが、「NO116スクエアカットチャッ
ク」は、一転して急落を示している。
表4 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 4 月 30 日 5 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 NO112A 
リブアイロールリップオン
2,260 106.3 98.0 2,281 102.3 100.7
NO116 
スクエアカットチャック
983 112.1 104.4 893 88.4 93.6
NO121B
ショートプレート
750 101.9 78.7 753 100.0 80.6
NO180 
ストリップロイン
1,856 104.5 93.4 1,862 101.7 93.9
NO189 
テンダーロイン
2,476 106.4 104.2 2,538 105.4 105.8
チャックリブ 1,562 101.2 73.0 1,555 99.3 79.5
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 967 114.4 82.6 873 87.4 74.7
フルブリスケット 805 98.4 71.2 802 98.9 70.7
ポイントエンドブリスケット 870 100.8 73.6 870 100.5 73.2
ナーベルエンドブリスケット 762 95.6 71.5 757 97.1 71.1
キューブロール 2,047 107.1 98.7 2,113 105.3 102.8
ストリップロイン 1,666 111.1 93.8 1,687 107.5 94.6
テンダーロイン 3,048 105.9 103.6 3,139 104.2 107.0
トップサイド 1,056 98.9 86.1 1,040 97.5 84.5
カウミート 714 100.1 78.3 716 101.0 78.1
エージドビーフフルセット 1,185 106.7 84.5 1,161 98.5 83.8
冷蔵品 キューブロール 2,348 117.2 95.1 2,489 112.2 109.1
トップサイド 1,077 86.9 76.3 1,175 96.8 80.6
フルセット 1,193 98.8 85.3 1,240 100.2 86.1
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉は卸売価格を反映し上昇傾向、輸入牛肉はかなりの低下後回復へ
・ 国際牛肉は、平成元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその
 後ほぼ横ばいで推移してきたものの、年明け以降、堅調な卸売価格を反映し、堅
 調に推移している。

  輸入牛肉は、元年後半に入って弱含みで推移したものの、年明け以降、回復傾
 向にある(図18)。

 C子牛価格
 依然高水準
・ 和子牛価格は、60〜63年度にかけて上昇し、平成元年度も前年水準を上回り、
 和めすは12月、去勢和子牛は1月に過去の最高価格を示した。その後、毎月価格
 は低下しているものの、保証基準価格を大きく上回る水準にある(4月、和めす
 409千円、和去勢491千円)(図19)。

・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで
 推移したが、その後反転して強含みで推移し、平成2年3月は、過去最高値であっ
 た1月をわずかに下回る233千円となった。また、生後7日程度のヌレ子の農家販
 売価格も平成2年3月は、131千円と過去最高値となった。

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、これらの今後の動向が注目される。


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