要 約 牛肉の輸入は、前年度並みの大幅増加を続け、卸売価格は、やや弱含み。反面、国産牛肉の生産は乳牛のと殺減もあって減少が続き、価格も堅調に推移。子牛価格は高水準。 今月の特徴的事項は、 12月に前年を下回った輸入量は1月は上回り、消費も家計、加工向けともに好調。伸びのやや鈍化していた総消費量も、1月は3.1%増とやや回復した。子牛価格は雄は史上最高値を更新したが雌はわずかに低下した。 |
(1) 消費 堅調な伸びもやや鈍化 ・ 牛肉の消費は安定的に増加している。特に62年度は10%近い水準で増加した。 63年度も約68万トンで10%近い伸びとなった。 ・ 平成元年度に入って輸入を含む推定出回り量でみると4〜1月期で前年同期比2. 3%増とやや伸びは鈍化している。同期間では12月は、前年並みにとどまったが1 月は、やや回復に転じた(表4)。 ・ 他方、輸入は、9月までは急速に伸びたが、10月以降伸びが鈍化ないし減少し ている。4月以降急速に増大した牛肉在庫量は、10月末をピークにその後12月ま で減少し、1月末もおおむね前年並みの111千トンとなった。(表4)。通関済み 在庫も同様な傾向となった(巻末資料参照)。 ・ なお、推定出回り量の伸びの鈍化の主因は、国内生産の減少に伴うもので、輸 入牛肉に限ってみれば、元年4〜1月期でみても前年同期比13.4%増と依然高い水 準にある(国内産は、5.6%減。巻末資料参照)。 表4 牛肉需給
年度 |
推定期首在庫 | 生産量 | 輸入量 | 推定期末在庫 | 推定出回り量 | |||||
数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | 数量 (トン) |
前年比(%) | |
61 62 63 |
57,952 67,771 63,692 |
108.8 116.9 94.0 |
393,693 397,555 398,392 |
101.2 101.0 100.2 |
187,871 223,606 285,416 |
119.1 119.0 127.6 |
67,771 63,692 66、546 |
116.9 94.0 104.5 |
571,745 625,240 680,955 |
105.5 109.4 108.9 |
元. 1 2 3 |
69,919 73,759 67,632 |
92.7 94.0 93.6 |
28,798 29,858 33,384 |
101.3 94.8 103.5 |
23,239 12,368 27,548 |
119.3 96.6 244.3 |
73,759 67,632 66,546 |
94.0 93.6 104.5 |
48,197 48,352 62,018 |
107.3 95.8 119.0 |
4 5 6 7 8 9 10 11 12 2.1 4〜1 |
66,546 79,946 91,137 99,475 107,519 114,746 117,282 119,258 117,099 108,100 66,546 |
104.5 124.5 136.2 144.6 165.5 190.6 176.6 158.9 153.5 154.6 104.5 |
31,202 30,664 28,851 31,177 30,803 31,091 32,439 35,037 40,133 27,458 318,863 |
94.9 99.6 96.3 96.0 91.3 93.6 94.7 94.4 96.0 95.3 95.2 |
32,710 35,646 33,950 31,451 35,261 30,160 30,764 29,117 24,920 24,728 308,709 |
144.3 152.3 140.6 173.0 183.1 105.9 98.4 100.6 96.2 106.4 125.7 |
79,946 91,137 99,475 107,519 114,746 117,282 119,258 117,099 108,100 110,595 110,595 |
124.5 136.2 144.6 165.5 190.6 176.7 158.9 153.5 154.6 149.9 149.9 |
50,512 55,119 54,464 54,585 58,837 58,715 61,227 66,313 74,052 49,692 583,522 |
91.8 107.0 104.4 100.2 101.9 105.8 107.7 102.3 100.0 103.1 102.3 |
資料:農林水産省「食肉流通統計」、大蔵省「日本貿易月表」、推定在庫量(通関済み+国内生産)は事業団調べ。 注:1)出回り量=推定期首在庫+生産量+輸入量-推定期末在庫 2)数量は部分肉ベース 3)63年以降の数値は概数値である。以下同じ。 ・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、本年の8月以降は前年水準をかなり上回って推移して いる。 ・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、平成元年も、前年比13 .8%増の27,800tが仕向けられた。なおこのうちでは輸入物が大宗を占めていた (91.3%)。 (2) 生産 乳牛のと殺減もあって、前年度を下回る ・ 生産は需要の増加に対応して増加を続けてきたが近年その伸びが次第に鈍化し、 平成元年度に入って前年水準を下回って推移している(表4)。 ・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少してた分を乳用種が補い、 全体では前年度に比しわずかに増加するという形で推移した。 ・ 平成元年度に入って、和牛が回復に転じた一方、乳用種は雌牛の大幅と殺減も あって、かなりの減少となっている。 ・ なお、61〜63年度にかけて、和牛めすの大幅なと殺減が続いたことから、自家 保留が進み、昨年8月の肉用種のめす飼養頭数は、前年同月比3%増の1,055千頭、 2〜7月にかけての子牛生産頭数は前年同期比4%増となった。また乳用種も2%増 で全国の肉用牛の総計も2%増の2,723千頭となっている(巻末資料参照)。 (3) 輸入 引き続き増加 ・ 日米・日豪牛肉交渉により、輸入割当量を63年度以降平成2年度まで毎年6万ト ンずつ増加させるとともに、平成3年度からの輸入割当制度の撤廃を合意されて いる。
表6 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 | 135千トン |
58 | 141 |
59 | 150 |
60 | 159 |
61 | 168 |
62 | 214 |
63 | 274 |
平成元年度 | 334 |
2年度 | |
一般枠 | 167(上期) |
特別枠 | 30 |
・ 輸入割当量は、63年度27万4千トン、平成元年度は日米・日豪の輸入割当合意 数量と同量の33万4千トン、平成2年度の特別枠は3万トン、上期一般枠について は16万7千トンが割り当てられた。 ・ 輸入実績は、平成元年度に入って、4〜1月期で前年同期比26%増の309千トン となっている。 ・ なお、国別の輸入状況をみると従来アメリカの伸びが著しかったが、63年度以 降、国別シェアには大きな変化が生じていない(表6)。
62年度 | 63年度 | 元年4月 〜2年1月 |
|
オーストラリア | 55.7 | 52.0 | 52.1 |
アメリカ | 37.8 | 41.6 | 41.3 |
ニュージーランド | 3.5 | 4.0 | 4.0 |
資料:大蔵省「日本貿易月表」
・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、平成元年度の事 業団への輸入割当数量は278.1千トンで、2月までに278.1千トンの買入れ(前年 同期比131.0%増)、266.8千トンの売渡し(前年同期比119.5%増)を行った。 2月受渡し分 ・ 事業団の2月の売渡総数量は、前月比で9.5%増の23,745トン(前年同月比133. 9%)となった。部位別では、前月に比べ「フルセット」、「枝肉」及び「バル ク」が大幅に増加した反面、「もも」は、大幅減となった。 (4) 価格動向 @国産牛肉卸売価格 輸入増にもかかわらず安定した推移 ・ 63年度から改訂された枝肉取引規格により価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」 規格)についてみると、63年度はおおむね安定価格帯の中心価格と安定上位価格 の間で強含みで推移した。 ・ 平成元年度に入っても安定上位価格付近で堅調に推移している。 ・ 種類別、にみると乳雄を除いてやや強含み、格付別にみると最も低価格の乳雌 のC1を除いてやや強含みで推移している A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 3月売渡し ・ 3月の上場数量は、前月より200トン増の8,700トンとした。せり結果は、8,186 トンで94.1%の落札率となった。 部位別の落札率は、「チャックアンドブレード」及び「エージドビーフフルセ ット」が全量落札となり、「NO112Aリブアイロールリップオン」99.4%、「NO12 1Bショートプレート(1)」98.6%、「NO116スクエアカットチャック」97.8%、 「カウミート」81.5%、「NO189フルテンダーロイン」72.9%及び「NO180ストリ ップロイン」55.4%の落札率となった。 東京食肉市場のせり結果は、「NO116スクエアカットチャック」、「NO121Bシ ョートプレート(1)」、「チャックアンドプレード」及び「エージドビーフフル セット」が全量落札した。 一方、価格の動きは、「NO116スクエアカットチャック」、「NO180ストリップ ロイン」及び「チャックアンドブレード」が前月より値を上げた(巻末資料参照)。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による1月31日及び2月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同期比で は、若干の品目を除き値下がりをしており、大部分のものか約10%、中には30%を 上回る値下がりを示した品目もある。 また、前月同期比では、全般的に上向き傾向を示しているが、特にオセアニア産 「キューブロール」、「テンダーロイン」及び冷蔵品が値上がりをしている。
表7 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 12月 31 日 | 1月 15 日 | |||||
価 格 円/kg |
比 率(%) | 価 格 円/kg |
比 率(%) | |||||
対前月同期比 | 対前年同期比 | 対前月同期比 | 対前年同期比 | |||||
北米産 | 冷凍品 | NO112A リブアイロールリップオン |
2,399 | 105.0 | 106.5 | 2,339 | 98.6 | 103.6 |
NO116 スクエアカットチャック |
835 | 99.8 | 77.6 | 832 | 98.6 | 90.4 | ||
NO121B ショートプレート |
736 | 99.2 | 70.9 | 732 | 96.2 | 69.8 | ||
NO180 ストリップロイン |
1,816 | 102.3 | 88.5 | 1,816 | 100.4 | 87.9 | ||
NO189 テンダーロイン |
2,459 | 107.9 | 102.9 | 2,403 | 105.3 | 97.7 | ||
チャックリブ | 1,578 | 103.7 | 96.5 | 1,597 | 101.3 | 96.4 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 790 | 104.4 | 72.6 | 810 | 100.5 | 79.6 |
フルブリスケット | 846 | 104.8 | 89.8 | 833 | 99.6 | 91.9 | ||
ポイントエンドブリスケット | 893 | 107.6 | 93.7 | 875 | 101.7 | 96.8 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 856 | 106.7 | 88.8 | 827 | 101.1 | 90.5 | ||
キューブロール | 2,098 | 111.1 | 102.6 | 2,062 | 103.5 | 98.3 | ||
ストリップロイン | 1,588 | 104.9 | 91.0 | 1,579 | 99.0 | 95.0 | ||
テンダーロイン | 2,826 | 105.0 | 104.5 | 2,925 | 112.6 | 112.4 | ||
トップサイド | 1,211 | 105.9 | 93.4 | 1,174 | 97.2 | 94.2 | ||
カウミート | 728 | 100.1 | 80.9 | 733 | 99.1 | 84.3 | ||
エージドビーフフルセット | 1,261 | 104.7 | 91.4 | 1,203 | 90.9 | 92.5 | ||
冷蔵品 | キューブロール | 2,317 | 103.5 | 85.5 | 2,268 | 97.2 | 82.0 | |
トップサイド | 1,561 | 111.7 | 103.4 | 1,558 | 103.4 | 100.8 | ||
フルセット | 1,458 | 101.9 | 96.4 | 1,456 | 100.7 | 88.1 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 B小売価格 国産牛肉は横ばい、輸入牛肉はかなりの低下後横ばい ・ 平成元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその後ほぼ横ばい で推移している。
C子牛価格 依然高水準 ・ 和子牛は、60〜62年度にかけて上昇し、63年度もじり高傾向で推移した後、絶 対値でみると、平成元年1月をピークに6月までやや低下、その後、再び上昇して いる。特に去勢和子牛は1月も前月に引き続き過去の最高値を示した(表8)。 ・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の7月から11月頃までにかけてやや弱含みで推移 したが、その後反転して強含みで推移し1月は、去勢和子牛同様過去最高値とな った。また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も平成2年1月は、122千円で、 前年同月を2割強上回っている。 ・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が 増加すると低下する傾向にあり、これらの今後の動向が注目される。 表8 子牛の取引頭数・価格
年度年月 |
和 め す | 和 去 勢 | 乳用雄子牛 | |||||||
取引頭数 | 価 格 | 取引頭数 | 価 格 | 価 格 | ||||||
(頭) | 前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | (頭) | 前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | (千円 /頭) |
前年比(%) | |
58 59 60 61 62 63 |
76,156 77,227 68,845 66,018 64,437 67,264 |
112.4 101.4 89.1 95.9 97.6 104.4 |
211.1 209.3 256.4 315.6 374.9 414.3 |
80.3 99.1 122.5 123.1 118.8 110.5 |
86,559 86,964 80,574 77,357 77,958 80,044 |
104.5 100.5 92.7 96.0 100.8 102.7 |
246.3 258.2 306.5 368.1 437.4 483.0 |
93.6 104.8 118.7 120.1 118.8 110.4 |
149.2 149.0 158.2 180.3 202.5 205.5 |
100.4 99.9 106.2 114.0 112.3 101.5 |
元. 1 2 3 |
5,370 5,346 7,726 |
101.8 104.6 104.2 |
456.3 438.9 442.0 |
117.0 116.0 113.9 |
6,754 6,400 9,109 |
98.7 98.4 103.9 |
521.8 499.9 509.9 |
111.7 111.8 111.4 |
202.3 205.1 208.2 |
95.9 97.6 99.8 |
4 5 6 7 8 9 10 11 12 2.1 4〜1 |
5,733 7,122 5,502 6,243 3,650 5,651 4,019 5,825 4,820 5,381 53,946 |
98.6 97.1 103.1 100.3 104.8 101.8 87.0 114.5 89.7 100.2 99.5 |
424.0 422.3 403.5 435.3 425.7 457.6 438.0 469.7 483.9 482.1 444.2 |
110.0 105.0 102.4 113.8 112.8 108.2 109.2 111.4 110.3 105.7 108.8 |
6,992 8,694 6,238 7,596 4,282 7,189 4,884 6,828 5,832 6,914 65,449 |
104.1 99.6 104.4 100.7 101.6 106.0 88.1 117.6 98.0 102.4 101.4 |
501.3 498.4 483.0 506.8 505.6 529.3 519.2 543.1 553.5 563.3 520.4 |
108.8 104.5 105.1 112.0 112.1 107.0 107.6 108.7 108.9 108.0 108.2 |
223.8 226.7 227.3 226.3 224.5 226.7 228.3 229.6 232.9 234.6 228.1 |
106.3 107.4 106.9 109.0 109.8 111.2 111.6 115.4 115.5 116.0 111.1 |
資料:農林水産省「子牛取引情報」、「農村物価指数」和子牛価格は、全国肉用子牛価格安定基金協会調べ。
注:平成元年4月以降は消費税額分を含む。
元のページに戻る