牛肉


(1) 消費
 やや鈍化から堅調な伸びへ

・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヵ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年
 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4%
 増)とその伸びはやや鈍化した。

・ 年明け以降、推定出回り量は再び高い伸びを示し始めており、8月も前年同月
 比8.7%増(輸入牛肉11.5%増)と高い伸びを示していることから、消費は引き
 続き好調に推移しているものとみられる(4〜8月前年同期比12.0%増、図9)。

・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を
 下回って推移していたが、昨年の8月以降は前年水準を上回って推移している
 (7月、前年同月比2.9%増)(図10)。

・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、元年度も前半は高い伸
 びを続けたが、ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいることから1月以降
 前年を下回って推移している(7月、前年同月比16.1%減)(図10)。

(2) 生産
 乳牛のと畜減もあって低水準にあった生産は、回復基調へ

・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、7月にようやく前
 年水準を上回り、8月も前年同月比103.1%と回復基調を維持している(図11)。

・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補う形で
 推移してきたが、元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅と畜
 減もあって、国内生産はかなりの減少となった。

  この傾向は基本的には2年度に入っても継続していたが、最近に至り変化がみ
 られる。8月の和牛のと畜頭数は、めす和牛が前年同月を下回ったこともあって
 前年同月比3.7%増と伸び率が鈍化したのに対し、乳牛は、乳めす牛のと畜頭数
 が前月に引き続き前年水準を上回った(102.4%)ことに加え、乳用肥育おす牛
 も前年同月を上回ったことから、と畜頭数は対前年同月比101.8%と前年同月を
 上回った(図12)。

(3) 輸入
 一時停滞していた輸入も回復へ

・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降2年度まで毎年6万トンず
 つ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意され
 ている(表2)。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度 394
一般枠 364
特別枠 30
・ 既に、日本・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度につ
 いては、一般枠36万4千トン特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てられること
 となった。

・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って4〜6
 月の輸入は28〜29千トン台と低水準であったが、7月以降は32千トンを上回る水
 準で推移している(8月、32,745トン、対前年同月比92.9%)(図13)。

  牛肉の8月の推定期末在庫は、消費が好調に推移したものの、国内生産が増加し、
 輸入量も比較的高水準にあったことから、111千トンとほぼ前月と同水準であっ
 たが、うち、民間在庫は約4,000トン減少した(図14、巻末資料参照)。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、元年度及び2年度
 の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度327.6千トンでその
 うち元年度には305.9千トンの買入れ(前年同期比32.3%増)、295.9千トンの売
 渡し(前年同期比21.6%増)を行った。

9月売渡し分
・ 事業団の9月売渡総数量は、前月比8.9%増の22,545トン(前年同月比6.9%減)
 となった。

  部位別では、前月に比べ「リブ・ばら」36.0%、「かた」33.0%、「ロイン」
 15.3%及び「もも」9.6%増となった反面、「フルセット」24.4%及び「バルク」
 23.1%と大幅減となった。

(4) 価格動向  
 @国産牛枝肉卸売価格 
 7月以降堅調に推移 
・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、元年10月から2年
 2月にかけては安定上位価格付近で堅調に推移したが、3月以降弱含みとなり、6
 月までは中心価格と安定上位価格の中間付近で推移した。7月、8月と価格は安定
 上位価格を突破して推移したが(7月1,344円/kg、8月1,346円/kg)、9月に入
 ってようやく落ち着き安定価格帯の中に収束した(図15)。

・ 格付別にみると、和牛は8月に入ってこれまで堅調に推移してきたA5やA4の高
 級品が若干弱含みとなり、乳雄はB2の価格が7月から回復に転じたことから今年
 の3月以降広がってきたB2、B3の価格差が7月8月と縮小し、これに伴って乳雄の
 平均価格も7月以降回復している(図17)。乳雌については、C1の価格は依然弱
 含みにあるものの、B2クラスが回復したことから、乳雌平均価格も7月以降回復
 傾向にある。

・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている
 (図18)。

 A輸入牛肉卸売価格 
 総じて弱含み傾向 
・ 市場せり状況をみると以下のとおり 

10月売渡し  
・ 10月の上場数量は、前月より約1,100トン増の6,596トンとし、また、本月は上
 場品目を1品目(No.116Aチャックロール)減らし、13品目とした。

  せり結果は、6,117トンで92.7%の落札率となった。

  品目別に落札率を見ると、「チャック&ブレード」、「フルブリスケット」、
 「トップサイド」、「シックフランク」、「カウミート」及び「エージドビーフ
 ・フルセット」が全量落札し、「No.121Bショートプレート(1)」99.0%、「No.
 189フルテンダーロイン」98.6%と落札率は高かったのに対し、「No.180ストリ
 ップロイン」48.8%の落札率が低かった。

  東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.114ショルダークロッド」、
 「No.189フルテンダーロイン」、「No.121Bショートプレート(1)」、「No.120ブ
 リスケット」、「チャック&ブレード」、「フルブリスケット」、「トップサイ
 ド」、「シックフランク」、「カウミート」及び「エージドビーフフルセット」
 の10品目であった。反面、「No.116スクウェアカットチャック」38.3%、「No.
 112リブアイロール」37.8%及び「No.180ストリップロイン」34.2%と落札が低
 かった。

  一方、価格の動きは、前月に比べ大部分の品目が値を上げたが、「No.116スク
 エアカットチャック」は約5%値を下げた。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 
 事業団調査による8月31日及び9月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比で
は、大部分の品目が約10%、中には30%近く値下がりを示しているなかにあって、
ロイン系のみが、値を上げた。

 また、前月比では、全体的に値上がりしたが、米国産「No.121Bショートプレー
ト」、「チャックリブ」及び豪州産の「ブリスケット」は依然として値下がりを示
している。

 なお、主要部位の価格の動向は図19のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 8 月 31 日 9 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 NO112A 
リブアイロールリップオン
2,163 100.8 104.1 2,173 101.1 105.5
NO116 
スクエアカットチャック
861 102.5 92.9 874 103.1 98.4
NO121B
ショートプレート
674 98.0 90.1 677 98.7 90.3
NO180 
ストリップロイン
1,802 101.1 98.7 1,829 102.2 101.4
NO189 
テンダーロイン
2,468 99.9 107.2 2,486 101.6 111.7
チャックリブ 1,322 98.2 83.1 1,331 97.6 84.0
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 773 100.9 103.8 790 98.4 105.2
フルブリスケット 658 91.5 74.4 643 95.1 74.5
ポイントエンドブリスケット 724 92.6 79.6 719 98.5 82.4
ナーベルエンドブリスケット 601 92.3 70.7 589 96.9 71.0
キューブロール 2,200 109.2 120.4 2,190 102.5 121.0
ストリップロイン 1,749 102.2 112.4 1,756 101.2 118.0
テンダーロイン 3,264 100.5 118.7 3,156 98.2 116.5
トップサイド 902 101.6 81.4 923 103.7 83.2
カウミート 698 100.9 95.0 713 102.9 96.9
エージドビーフフルセット 1,098 101.7 93.8 1,125 104.6 98.3
冷蔵品 キューブロール 2,221 98.8 90.4 2,278 102.3 92.2
トップサイド 1,273 113.1 86.9 1,370 115.4 92.6
フルセット 1,205 105.3 88.4 1,274 109.9 94.1
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉は弱含み、輸入牛肉も横ばいないし低下
・ 国産牛肉は、年明け以降、堅調に推移してきたが、8月、9月と2ヵ月連続して
 低下した。

  輸入牛肉は、元年後半に入って弱含みで推移した後、年明け以降、若干上昇し
 たものの、夏場に入り横ばいないし弱含みで推移している(図20)。

 C子牛価格
 水準は高いものの弱含みへ
・ 和子牛価格は、和めすは元年12月に484千円、去勢子牛は2年1月に563千円と過
 去最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせた。その後、
 和子牛価格は落ち着いた動きを示しており、8月は、和めす子牛は若干低下(402
 千円/頭)したものの、和去勢子牛は7月に引き続き上昇(500千円/頭)した
 (図21)。

・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで
 推移したが、その後反転し、2年1月には、235千円と過去最高値を記録した。そ
 の後次第に価格を下げており、8月には188千円となった。また、生後7日程度の
 ヌレ子の農家販売価格は2年5月まではおおむね12万円台で推移してきた(5月、
 126千円)が、6月以降価格は急落し、8月には74千円となった(図22)。 

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、乳雄子牛の供給動向等
 を注視する必要があろう。


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