(1) 生乳生産 伸び率は2年に入り次第に鈍化し、8月は前年水準を下回る ・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産は、平成2年に入り伸び率 は次第に鈍化しており、8月には、62年10月以来2年10ヵ月振りに前年同月を下回 った(前年同月比99.2%)(図1)。 一方、4月以降大きく落ち込んだ1日当たり生乳生産の季節調整値は、北海道の 減少に強いブレーキがかかったため、8月はゆるやかな減少にとどまった(図2)。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、元年夏 を境に減少割合(前年同月比)は着実に縮小しており、7月からは前年水準を上 回っている(前年同月比7月100.2%、8月102.4%)。 一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では約30%を下回り(8月28.2%)、逆 に、経産牛の割合は、55%から70%を上回る水準へと大きく上昇している(8月 71.8%)(巻末統計参照)。 以上のことから、未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)しているものの、 経産牛のと畜が進んでおり、この結果として、乳用めす牛のと畜頭数の減少から 増加に転じ(搾乳牛群の拡大にブレーキがかかり)、乳群の構成も若令牛の割合 が高まってきているものとみられる。 ・ 農林水産省が発表した「乳用牛の飼養動向」によれば、8月1日の乳用牛頭数は 209万頭と前年をわずかに上回っており、その内訳をみると経産牛はほぼ前年並 であるのに対し、未経産牛は前年に比べ1%増加している。また、年令別にみる と1歳牛及び2歳牛はそれぞれ3%、4%増加したが、9歳牛以上は7%減少しており、 牛群の構成が若令化していることを示している。 (2) 飲用牛乳等の需給 好天に恵まれ需要の伸びは鈍化から再び高い伸びへ ・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5 月以降再び高い伸びを示し始め、8月は天候にも恵まれ前年同月比4.4%の増加と なった。 ・ 飲用牛乳の生産は、元年12月以降低い伸びにとどまっていたが、2年5月以降大 幅な伸びを示し始めた(対前年同月比、5月3.3%、6月4.6%、7月4.5%、8月5.5 %増)(図5)。 その内訳をみると、4月に前年水準を割込んだ牛乳が再び高い伸び(8月前年同 月比5.1%増)を示す一方、加工乳も引き続き高い伸び(8月前年同月比8.0%増) を維持している(図5)。 7月に前年同月水準を下回った醗酵乳の生産は8月には回復に転じ、再び前年を 上回った(前年同月比4.3%増)。 また、これまで低調に推移していた乳飲料の生産は、6・7月と高い伸びを記録 し、8月に入って伸び率は鈍化しているものの引き続き増加している(対前年同 月比、6月13.9%増、7月13.0%増、8月7.9%増)(図6)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 飲用需要の回復に伴い生産は減少、価格は横ばいへ ・ 62年度以降、飲用需要が好調に推移したこともあって、63年度から元年度前半 にかけて乳製品需給はひっ迫したが、畜産振興事業団によるバター、脱脂粉乳の 輸入放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月以降飲用需要の伸びが鈍化した ことによる乳製品の生産増等により、乳製品の需給は均衡に向い、元年度末のバ ター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表1)。これを受け て、高水準にあった乳製品価格も元年度後半から軟化傾向に転じ、安定指標価格 比110%前後の水準にあったバター、脱脂粉乳の価格は、7月には105%水準(2年 度安定指標価格比バター105.8%、脱脂粉乳104.8%)まで低下した(図7,8)。 ・ しかし、このような傾向も、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び 悩みに伴い大きく変化しつつある。 乳製品向け生乳処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月には1.9% 減と63年6月以来ほぼ2年振りに前年同月を下回り、7、8月はそれぞれ6.5%、9.1 %減と一層の落ち込みをみせた(図4)。また、8月の季節調整値は、過去最高で あった本年2月に比べ約13%低下した(69ページ、図14)。これに伴い8月のバタ ーの生産量は、前年同月比17.2%減と落ち込み(図7)、1日当たり生産量(季節 調整値)は、最も高水準にあった元年12月に比べ約22%低下し、需給がひっ迫し た63年の水準にまで落ち込んだ(74ページ、図22)。脱脂粉乳の生産量も14.9% 減(図8)と、元年12月に比べ約19%低下している(76ページ、図25)。 こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は6月から横ばい(8 月、1,127円/kg、安指比105.8%)を続け、脱脂粉乳の価格も8月は前月と同じ 水準(13,448円/25kg、安指比104.8%)となった。 これを受けて、畜産振興事業団は、9月に入って、バター2,992トンの輸入手当 を行った。
表1 乳製品の在庫(各年度末) (単位:千トン、ヵ月)
\ |
区分 | バ タ ー | 脱脂粉乳 | ||||
年度 | \ |
民 間 | 事業団 | 計 | 民 間 | 事業団 | 計 |
55 |
16(3.1) 7(1.3) 12(2.1) 17(2.8) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
12(2.3) 12(2.1) 3(0.5) 1(0.2) 0 0 0 0 0 0 |
28(5.4) 19(3.4) 15(2.6) 18(2.9) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
31(3.3) 16(1.5) 24(2.0) 23(1.9) 22(1.5) 32(2.3) 36(2.5) 13(0.9) 18(1.2) 33(2.2) |
44(4.7) 44(4.2) 22(1.9) 9(0.7) 8(0.6) 8(0.6) 7(0.5) 7(0.5) 4(0.3) 0 |
75(8.0) 59(5.7) 45(3.8) 32(2.6) 30(2.1) 40(2.8) 44(3.0) 20(1.4) 23(1.5) 33(2.2) |
資料:農林水産省畜産局調べ
元のページに戻る