牛肉


(1) 消費
 やや鈍化から堅調な伸びへ

・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヶ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年
 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4%
 増)とその伸びはやや鈍化した。

・ 年明け以降、再び高い伸びを示し始めた推定出回り量は7月に入って前年同月
 比18.1%増(輸入牛肉36.6%増)と高い伸びを示し、4〜7月でも前年同期比13.
 0%増(同19.0%増)となっており、消費は引き続き好調に推移しているものと
 みられる(図8)。

・ 牛肉消費の5割強を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を
 下回って推移していたが、昨年の8月以降は前年水準を上回って推移している
 (図9)。

・ 加工仕向け量は、62、63年度と極めて高い伸びを示し、元年度も前半は高い伸
 びを続けたが、ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいることから1月以降
 前年を下回って推移している(図9)。

(2) 生産
 乳牛のと畜減もあって低水準にあった生産は、回復基調へ

・ 生産は平成元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、(図10)、7
 月は前年同月比103.7%と元年3月以来1年4ヶ月振りに前年水準を上回り回復基調
 となった。

・ 種類別には、61〜63年度にかけては肉専用種が減少した分を乳用種が補う形で
 推移してきたが、元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅と畜
 減もあって、かなりの減少となった。

  この傾向は基本的には2年度に入っても継続していたが、最近に至り若干の変
 化が生じている。7月の和牛の枝肉生産量は前年同月比10.2%増と去勢和牛を中
 心に引き続き増加した。一方、乳牛は、乳めす牛の枝肉生産量が前年同月水準を
 上回った(100.2%)ため、枝肉生産量は対前年同月比98.3%と減少率は大幅な
 縮小をみせた(図11)。

(3) 輸入
 一時停滞していた輸入も回復へ

・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降2年度まで毎年6万トンず
 つ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意され
 ている(表2)。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度 394
一般枠 364
特別枠 30
・ 既に、日本・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度につ
 いては、一般枠36万4千トン特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てられること
 となった。

・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って輸入
 量は4〜6月と前年同月を下回って推移していたが、7月には35万4千トン(対前年
 同月比112.6%)と高水準の輸入が行われた(図12)。

  牛肉の7月の推定期末在庫は、消費が好調に推移したことから国内生産、輸入
 のいずれも増加したにもかかわらず、ほぼ前月と同水準であったが、うち、民間
 在庫は約2,400トン減少した(図13)。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 畜産振興事業団は輸入牛肉のおおむね8割を取り扱っており、元年度及び2年度
 上期の事業団への輸入割当数量は、元年度278.1千トン及び2年度327.6千トンで
 そのうち元年度には305.9千トンの買入れ(前年同期比32.3%増)、295.9千トン
 の売渡し(前年同期比21.6%増)を行った。

8月売渡し分
・ 事業団の8月売渡総数量は、前月比16.5%減の20,709トン(前年同月比24.5%
 減)となった。

  部位別では、前月に比べ「バルク」47.9%及び「フルセット」7.4%増となっ
 た反面、「もも」32.1%、「ロイン」28.9%、「リブ・ばら」29.0%及び「かた」
 22.5%と大幅減となった。

(4) 価格動向  
 @国産牛枝肉卸売価格 
 7月以降堅調に推移 
・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、元年10月から2年
 2月にかけては安定上位価格付近で堅調に推移したが、3月以降弱含みとなり、6
 月までは中心価格と安定上位価格の中間付近で推移した。7月に入り、価格は急
 速に回復し、1,344円/kgと安定上位価格を突破し、この傾向は、8月に入っても
 継続している(図14)。

・ 格付別にみると、和牛はA5やA4の高級品を始め全般的に横ばいないし若干強含
 みで推移している(図15)。乳雌のC1や乳雄のB2等の低級品は弱含みで推移し乳
 用種総平均価格はかなり低下した(図16)。しかし、7月に入って乳雄B2等が持
 ち直し、8月に入ってからは乳雌の低級品も持ち直している模様である。

 A輸入牛肉卸売価格 
 総じて弱含み傾向 
・ 市場せり状況をみると以下のとおり 

9月売渡し  
・ 9月の上場数量は、前月より50トン減の5,447トンとし、また、本月より上場品
 目を2品目(No.116Aチャックロール及びNo.120ブリスケット)増やし、14品目と
 した。

  せり結果は、5,050トンで92.7%の落札率となった。

  品目別に落札率を見ると、「チャック&ブレード」「カウミート」及び「エー
 ジドビーフ・フルセット」が全量落札し、「No.121Bショートプレート(1)」98.4
 %、「No.189フルテンダーロイン」98.2%、「No.116スクウェアカットチャック」
 97.0%、「No.112Aリブアイロールリップオン」95.1%と落札率は高かったのに
 対し、「フルブリスケット」67.4%、「シックフランック」66.2%、「No.116A
 チャックロール」47.2%及び「No.114ショルダークロンド」37.5%は落札率が低
 かった。

  東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.116スクエアカットチャッ
 ク」、「No.189フルテンダーロイン」、「No.121Bショートプレート(1)」、「チ
 ャック&ブレード」、「トップサイド」、「シックフランク」、「カウミート」
 及び「エージドビーフフルセット」の8品目であった。

  反面、「No.114ショルダークロッド」全量不落、「No.180ストリップロイン」
 45%及び「ブルブリスケット」58.9%の落札率が低かった。

  一方、価格の動きは、前月に比べほぼ全品目とも値を上げた。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 
 事業団調査による7月31日及び8月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同月比で
は、大部分の品目が約10%、中には30%近く値下がりを示しているなかにあって、
米国産・豪州産ともロイン系のみが、値を上げた。

 また、前月比では、大部分の品目が値上がりか前月並みであったが、米国産「No.
121Bショートプレート」、「チャックリブ」及び豪州産の「ブリスケット」が約5
〜10%近く値下がりを示した。

 なお、主要部位の価格の動向は図18のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 7 月 31 日 8 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 NO112A 
リブアイロールリップオン
2,145 99.0 101.0 2,149 100.0 103.1
NO116 
スクエアカットチャック
840 99.6 90.6 848 101.9 91.6
NO121B
ショートプレート
688 94.5 86.3 686 96.8 90.9
NO180 
ストリップロイン
1,783 99.2 94.3 1,789 100.2 97.1
NO189 
テンダーロイン
2,471 99.7 106.3 2,448 98.6 105.6
チャックリブ 1,346 93.2 77.2 1,364 95.9 81.9
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 766 99.9 96.0 803 104.4 105.9
フルブリスケット 719 95.9 76.9 676 91.6 74.8
ポイントエンドブリスケット 782 95.1 81.1 730 90.9 78.1
ナーベルエンドブリスケット 651 94.3 72.3 608 90.3 70.3
キューブロール 2,015 93.8 108.7 2,136 104.6 116.2
ストリップロイン 1,711 101.4 104.2 1,735 101.7 106.2
テンダーロイン 3,247 101.4 123.5 3,214 99.9 118.1
トップサイド 888 99.7 78.0 890 100.5 79.3
カウミート 692 98.4 88.5 693 100.0 93.0
エージドビーフフルセット 1,080 101.6 91.1 1,076 100.2 91.4
冷蔵品 キューブロール 2,249 99.8 89.3 2,227 99.9 87.5
トップサイド 1,126 110.7 72.6 1,187 108.3 77.1
フルセット 1,144 104.4 76.3 1,159 104.3 79.1
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉は上昇傾向、輸入牛肉はかなりの低下へ
・ 国産牛肉は、元年度に入って4月に消費税の導入もあって若干上昇しその後ほ
 ぼ横ばいで推移してきたものの、年明け以降、堅調に推移している。

  輸入牛肉は、元年後半に入って弱含みで推移した後、年明け以降、若干上昇し
 たものの、夏場に入り低下し始めている(図19)。

 C子牛価格
 水準は高いものの弱含みへ
・ 和子牛価格は、和めすは元年12月に484千円、去勢子牛は2年1月に563千円と過
 去最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせた(図20)。
 その後、和子牛価格は落ち着いた動きを示し(7月、去勢和子牛482千円、和めす
 子牛405千円)、8月に入って主要市場の価格は去勢和子牛を中心にむしろ強含み
 で推移している。

・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで
 推移したが、その後反転して強含みで推移し、2年1月には、235千円と過去最高
 値を記録した。その後次第に価格を下げており、7月には194千円となり、主要市
 場の価格動向からみて6月以降も低下傾向は更に強まっているものとみられる。
 また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格は2年5月まではおおむね12万円台で
 推移してきた(5月、126千円)が、6月以降価格は急落し、7月には83千円となっ
 た(図21)。 

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、生乳生産の増大に伴う
 乳雄子牛の供給動向等を注視する必要があろう。


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