(1) 生乳生産 伸び率は2年に入り次第に鈍化し、7月は前年とほぼ同水準に。 ・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産は、平成2年に入り伸び率 は次第に鈍化しており、7月には、前年同月とほぼ同水準(前年同月比100.0%) となった(図1)。 1日当たり生乳生産の季節調整値も平成2年3月を境に毎月低下している(P57、 図5参照)。 ・ 生乳生産の対前年同月比の伸びの鈍化(季節調整値の低下)は、計画生産ばか りでなく天候要因や他の構造的要因によるところも大きいと考えられる。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、元年夏 を境に減少割合(前年同月比)は着実に縮小しており、7月には前年水準を上回 った(前年同月比100.2%)。 一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では約30%にまで低下し(7月30.2%)、 逆に、経産牛の割合は、55%から70%へと大きく上昇している(7月69.8%) (巻末統計参照)。 以上のことから、未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)しているものの、 経産牛のと畜が進んでおり、この結果として、乳用めす牛のと畜頭数の減少が頭 打ちとなり(搾乳牛群の拡大にブレーキがかかり)、乳群の構成も若令牛の割合 が高まってきているものとみられる。 (2) 飲用牛乳等の需給 好天に恵まれ需要の伸びは鈍化から再び高い伸びへ ・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5 月に入って前年同月比2.3%増と持ち直し、6月(3.7%増)、7月(3.6%増)と 再び高い伸びを示した(図3)。昨年5月、6月の水準が比較的低水準であったこ とを考慮すれば、7月の伸び率は6月のそれを若干下回っているものの、実質的に は極めて高い伸びを示したと言えよう(P61、図9 飲用需要の季節調整値参照)。 8月に入っても天候要因は引き続き良好に推移しており、飲用等向け処理量は7 月と同様の傾向で推移しているものとみられる。 ・ 飲用牛乳の生産は、元年12月以降低い伸びにとどまっていたが、2年5月以降大 幅な伸びを示しはじめた(対前年同月比、5月3.3%、6月4.6%、7月4.5%増) (図4)。 その内訳をみると、4月に前年水準を割込んだ牛乳が再び高い伸び(7月前年同 月比3.9%増)を示す一方、加工乳も引き続き高い伸び(7月前年同月比8.2%増) を維持している(図5)。 これまで高い伸びを示してきた醗酵乳の生産は、前年7月の水準が極めて高か ったこと(対前年同月比122.6%)もあって、7月には対前年同月比98.2%と前年 同月を下回った。また、これまで低調に推移していた乳飲料の生産は、前年同月 比13.0%増と6月に引き続き大きな伸びを示した(図4)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 飲用需要の回復に伴い生産は減少、価格低下のペースは鈍化、特にバターは横ばいへ ・ 62年度以降、飲用需要が好調に推移したこともあって、63年度から元年度前半 にかけて乳製品需給はひっ迫したが、畜産振興事業団によるバター、脱脂粉乳の 輸入放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月以降飲用需要の伸びが鈍化した ことによる乳製品の生産増等により、乳製品の需給は均衡に向い、元年度末のバ ター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表1)。これを受け て、高水準にあった乳製品価格も元年度後半から軟化傾向に転じ、安定指標価格 比110%前後の水準にあったバター、脱脂粉乳の価格は、7月には105%水準(2年 度安定指標価格比バター105.8%、脱脂粉乳104.8%)まで低下した(図6,7)。 ・ しかし、このような傾向も、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び 悩みに伴い大きく変化しつつある。 乳製品向け生乳処理量の伸びが5月に大きく鈍化したのに続き、6月には1.9% 減と63年6月以来ほぼ2年振りに前年同月を下回り、7月にはさらに6.5%減と落ち 込んだ(図3)。これに伴い7月のバターの生産量は、前年同月比13.6%減と落ち 込み、脱脂粉乳の生産量も6.2%減と前年同月を下回った(図6,7)。 こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は6月から2ヶ月続け て横ばい(7月、1,127円/kg、安指比105.8%)となったのに対し、脱脂粉乳の 価格は低落のペースは鈍化しているものの依然下げ基調にある。 これを受けて、畜産振興事業団は、9月に入って、バター2,992トンの輸入手当 を行った。
表1 乳製品の在庫(各年度末) (単位:千トン、ヵ月)
\ |
区分 | バ タ ー | 脱脂粉乳 | ||||
年度 | \ |
民 間 | 事業団 | 計 | 民 間 | 事業団 | 計 |
55 |
16(3.1) 7(1.3) 12(2.1) 17(2.8) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
12(2.3) 12(2.1) 3(0.5) 1(0.2) 0 0 0 0 0 0 |
28(5.4) 19(3.4) 15(2.6) 18(2.9) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
31(3.3) 16(1.5) 24(2.0) 23(1.9) 22(1.5) 32(2.3) 36(2.5) 13(0.9) 18(1.2) 33(2.2) |
44(4.7) 44(4.2) 22(1.9) 9(0.7) 8(0.6) 8(0.6) 7(0.5) 7(0.5) 4(0.3) 0 |
75(8.0) 59(5.7) 45(3.8) 32(2.6) 30(2.1) 40(2.8) 44(3.0) 20(1.4) 23(1.5) 33(2.2) |
資料:農林水産省畜産局調べ
元のページに戻る