畜産振興事業団 食肉部
肉用子牛生産者補給金制度は、平成3年4月からの牛肉の輸入自由化が決定された ことに伴い、わが国肉用牛生産の安定を図るために制定された肉用子牛生産安定等 特別措置法(昭和63年12月22日法律第98号)に基づき、牛肉の輸入数量制限が撤廃 される平成3年度以降に出荷される肉用牛が肉用子牛として概ね平成2年度から取引 されること等により、平成2年4月から実施されています。 この制度は、牛肉輸入の自由化後においては、海外から輸入される安価な牛肉に 対抗できる価格水準で国産牛肉を供給しなければ、わが国の肉用牛生産は存続でき なくなる恐れがあるため、肉用子牛の再生産を確保して肉用牛生産の維持発展を図 るために、肉用子牛の価格が保証基準価格を下回ったときに、肉用子牛の生産者に 対して生産者補給金を交付するものです。 平成2年度第3四半期(10〜12月)には日本短角種等その他の肉専用種については、 本制度施行以来始めて生産者補給金を交付することとなりました。そこでこの機械 に当該制度の概要を取りまとめるとともに一層の加入促進を期待するものです。 この制度の概要は、次のとおりです。 1 制度への参加資格について 肉用子牛の生産者であれば、誰でも加入できます。 この場合の肉用子牛の生産者とは、次の条件を満たしていなければなりません。 (1) 肉用子牛を自ら生産して育成する者 (2) 肉用子牛を2月齢未満で譲り受け(購入)て育成する者 ただし、生産者が法人の場合は、次の条件を満たすことが必要です。 ア 子牛の生産を行う農事組合法人、生産森林組合及び会社(資本の額又は出資の 総額が1億円を超え、かつ、常時使用する従業員の数が300人を超えるもの(平成 元年12月9日付け農林水産省令第46号第2条の2台1項で定める要件に該当するもの を除く。)及び前記に準じるものとして同省令第2条の2第2項で定める要件に該 当するものを除く。) イ 生産した子牛を肉用牛経営を行う者に販売する事業を行う民法法人又は農協等 の非営利法人(国、都道府県を除く。) 2 生産者受給金の受給資格について (1) 肉用子牛の生産者は、あらかじめ、都道府県の指定協会(以下「指定協会」と いう。)との間で、農協等(指定協会の事務委託先)を通じて生産者補給金交付 契約を締結し、自ら生産するか又は譲り受け(購入)た肉用子牛について、指定 協会に農協等を通じて生産者負担金(品種区分ごとの負担金の額については8(2) を参照)を納付して個体登録をしなければ、生産者補給金の交付を受ける資格が ありません。 (2) 生産者補給金の交付の対象となる肉用子牛は、個体登録をした肉用子牛であっ て、次の条件を満たした旨、生産者から農協等を通じて指定協会に報告がなされ ていなければなりません。 1) 満4月齢以上12月齢未満で販売された子牛 2) 満12月齢になるまで引続き飼養された子牛(自家保留牛) (3) このように、個体登録をしておけば、肉用子牛の価格が低落した四半期(3ヵ 月間)内に販売した子牛のほか、同期間内に自家保留した子牛に対しても、その 頭数に応じて、生産者補給金が交付されます。 なお、この場合、肉専用種はもちろん、交雑種、外国種(国内産に限る)、乳 用雄子牛のほか、乳用雌子牛であっても肥育用に仕向けられることが確実である 子牛は対象となります。 3 個体登録の手続きについて 生産者補給金交付契約を締結した生産者が、その飼養している肉用子牛の満2月 齢に達する日までに、農協等(指定協会の事務委託先)を通じて指定協会が定める 手続きにより、同協会に対して、個体登録の申込をすると、農協等が、個体ごとの 現地調査を行い、個体識別のための耳標の装着等をした上で、指定協会において、 4月齢に達する日までに、1頭ごとに登録が行われます。 現在、生産者補給金交付契約を締結している生産者の数は、旧肉用子牛価格安定 事業の農家数(利用組合員数)に比べ、その数が増加しているものの、肉用子牛の 個体登録については、地域によりかなりの差が見られるとともに、乳用種の個体登 録率は、肉専用種に比べ、低水準にとどまっている状況にあります。 生産者補給金の交付を受けるためには、あらかじめ、肉用子牛の登録という手続 きを行っておかなければなりませんので、肉用子牛が販売されたときに、価格の低 落にあって慌てて手続きを行っても受け付けてもらえませんので、県内の関係者は、 生産者によく制度の内容を説明し、努めて、登録の推進を図られるようにすること が必要と思われます。 注)耳標の装着は、和牛の品種登録制度による子牛登記にかかる肉用子牛につい ては、省略することができます。 4 生産者補給金の発動基準について 国(農林水産大臣)が定めた指定家畜市場で取引された指定肉用子牛の平均売買 価格(四半期ごとに告示)が、品種区分ごとに定めた保証基準価格を下回った場合 に発動になります。 5 生産者補給金の交付額について 1頭当りの生産者補給金の額は、次のとおりです。 (1) 保証基準価格>平均売買価格≧合理化目標のとき 保証基準価格−平均売買価格 (2) 合理化目標価格>平均売買価格のとき (保証基準価格−合理化目標価格)+(合理化目標価格−平均売買価格)×90% 注)保証基準価格は、肉用子牛の再生産を確保できる価格水準として、毎年度、 農林水産大臣が定めます。 また、全国一律の価格として、合理化目標価格は、輸入自由化の下で、わが 国の肉用牛生産が輸入牛肉と対抗するために実現する必要のある肉用子牛の生 産コストの目標として、輸入牛肉の価格の動向や生産合理化の進度を考慮した 上で、1年以上5年を超えない範囲内において、農林水産大臣が定めます。(た だし、現行の合理化目標価格は、平成2年4月1日から平成3年3月31日までの期 間になっています。) 6 保証基準価格、合理化目標価格及び平均売買価格について 平成2年度の保証基準価格、合理化目標価格及び平均売買価格は、表のとおりです。 平成2年度第1四半期(4〜6月)及び第2四半期(7月〜9月)における指定肉用子 牛の平均売買価格は、「黒毛和種及び褐毛和種」、「その他の肉専用種」及び「乳 用種」のいずれの品種においても保証基準価格を上回って推移したため、生産者補 給交付金の交付はありませんでした。 表 保証基準価格、合理化目標価格及び平均売買価格(平成2年) 単価:円/頭
品種区分 | 黒毛和種 及び褐毛和種 |
その他の 肉専用種 |
乳用種 |
保証基準価格 | 304,000 | 214,000 | 165,000 |
合理化目標価格 | 267,000 | 188,000 | 142,000 |
平均売買価格 第1四半期 (4〜6) 第2四半期 (7〜9) 第3四半期 (10〜12) |
446,200 463,000 495,900 |
225,300 214,200 181,000 |
222,700 187,000 200,600 |
しかし、第3四半期(10月〜12月)における同平均売買価格は、「黒毛和種及び 褐毛和種」については依然として保証基準価格を大幅に上回って推移し、「乳用種」 については夏場に低級な枝肉の卸売価格が低下したことに伴って一時的に低下した ものの、その後、回復して安定的に推移したが、「その他の肉専用種」については、 その大半を占める日本短角種が、肥育経営の収益性の低下による購買意欲の減退、 夏場の猛暑による発育不良等によって、保証基準価格を大幅に下回る状況となりま した。 このため、平成2年4月から発足した肉用子牛生産者補給金制度が初めて発動され ることとなり、契約肉用子牛であって、かつ、平成2年10月〜12月の間に販売また は保留(12月齢まで育成)された「その他の肉専用種」の肉用子牛について、生産 者補給金が交付されることになりました。 事業団は、指定協会からの申請に基づき、近く、生産者補給交付金を交付する予 定としています。 7 指定協会及び畜産振興事業団の任務 指定協会は、肉用子牛の生産者に対して本制度への加入推進を図り、個体登録を 行うと共に、各生産者からの当該肉用子牛の販売又は保留の報告を農協等を通じて 受け、生産者補給金の発動があった場合に、生産者に対して生産者補給金を交付す ることにしています。 この場合、指定協会は、生産者補給金を迅速且つ的確に交付するため、肉用子牛 の個体管理をコンピュータで処理することとしています。 また、事業団は、これらの指定協会から、肉用子牛の登録及び販売、保留等の個 別データの送信(フロッピーディスクの郵送を含む)を受けて、同一のデータに基 づき、指定協会に対し、生産者補給交付金及び生産者積立助成金を迅速且つ的確に 交付することとしていますが、その他、各指定協会との連絡調整及び本制度の啓蒙 普及を広く行っています。 8 その他 (1) 生産者補給金の財源について 生産者補給金の財源は、次のとおりです。 ア 保証基準価格〜合理化目標価格の部分=事業団 イ 合理化目標価格以下の部分=生産者 積立金(負担割合は、生産者1/4、都道府県1/4、事業団1/2) (2) 品種区分ごとの生産者負担金の額は次のとおりです。 「黒毛和種及び褐毛和種」9,900円×1/4=2,475円 「その他の肉専用種」 7,000円×1/4=1,750円 「乳用種」 5,300円×1/4=1,325円