牛肉


(1) 消費

 やや鈍化から堅調な伸びへ

・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヵ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年
 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4%
 増)とその伸びはやや鈍化した。

・ 2年以降、推定出回り量は再び高い伸びを示しており、11月は、前年比同月比4
 .7%増と引き続き好調に推移している。この結果、4〜11月でみた場合、前年同
 期比9.8%増と前年水準を大きく上回っている(図14)。

・ 牛肉消費の約5割を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を
 下回って推移していたが、元年の8月以降は前年水準を上回って推移しており、
 10月には前年同月比100.8%(4〜10月、103.4%)と引き続き堅調に推移してい
 る(図15)。

・ 加工仕向け量は、2年1月以降ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいるこ
 とから前年を下回って推移してきたが(10月、前年同月比7.5%減)、7月以降減
 少割合は縮小の傾向にある(図15)。

(2) 生産

 低水準にあった生産は、回復へ

・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、2年7月以降おおむ
 ね前年水準を上回っており(11月前年同月比108.0%)、本年度に入って着実に
 回復している(図16)。

・ 種類別には、元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅と畜減
 もあって、国内生産はかなりの減少となった。

  2年度に入って、和牛のと畜頭数は去勢和牛を中心に前年水準を大きく上回っ
 て推移しており(4〜11月、前年同期比めす和牛4.5%増、去勢和牛11.3%増)、
 一方、乳牛は依然として前年水準を下回ってはいるものの(4〜11月前年同期比
 肥育おす牛1.8%減、めす牛1.4%減)、7月以降と畜頭数は前年を上回る傾向に
 あり、乳牛からの枝肉生産は昨年前半を境に回復している(図17)。

(3) 輸入

 一時停滞していた輸入も回復へ

・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降2年度まで毎年6万トンず
 つ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意され
 ている(表2)。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 135千トン
58 141
59 150
60 159
61 168
62 214
63 274
平成元年度 334
2年度 394
一般枠 364
特別枠 30
・ 既に、日本・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度につ
 いては、一般枠36万4千トン、特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てられてい
 る。

・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って7月以
 降はおおむね増加傾向にあるものの(11月前年同月比124.3%)、4〜6月の輸入
 が低水準であったことから、4〜11月では対前年同期比2.2%減と前年水準を下回
 っている(図18)。

  牛肉の11月の推定期末在庫は、前月に比べ生産量、輸入量共に大幅な増加をみ
 せたことから、116千トンと前月に比べ5,000トン弱増加した。うち、民間在庫は
 6ヶ月振りに増加に転じ約60,000トンとなった(図19)。なお、畜産振興事業団
 の品目別在庫は巻末資料に掲げるとおりである。

畜産振興事業団の売買状況 

・ 畜産振興事業団は、12月に行った冷凍輸入牛肉の買入入札をもって、2年度の
 事業団への輸入割当数量327.6千トンの手当てをほぼ終了した。

・ 平成2年度に入って12月までの買入れは、242千トン、売渡しは、221千トンと
 なっている。

12月売渡し分
・ 事業団の12月売渡総数量は、前月比12.7%増の24,041トン(前年同月比10.8%
 減)となった。

  部位別では、前月に比べ「バルク」40.6%増及び「もも」2.3%増となったが、
 他の部位は減少した。

(4) 価格動向 
 
 @国産牛枝肉卸売価格 

 7月以降堅調に推移
 
・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、3月以降弱含みと
 なり、6月までは中心価格と安定上位価格の中間付近で推移したが、7月、8月と
 価格は安定上位価格を突破し、9月以降も安定上位価格付近で堅調に推移してい
 る(11月1,271円/kg)(図20)。

・ 格付別にみると、和牛はA5やA4の高級品が引き続き堅調に推移し、乳雄はB2の
 価格が7月から回復に転じたことから今年の3月以降広がってきたB2、B3の価格差
 は縮小の傾向にあり、これに伴って乳雄の平均価格も7月以降回復している(図
 21、22)。乳雌については、C1の価格は7月以降下げ止まっており、これに伴な
 い、乳雌平均価格も横ばいで推移している(図21、22)。

・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている
 (図23)。

 A輸入牛肉卸売価格 

 総じて弱含み傾向
 
・ 市場せり状況をみると以下のとおり 
  1月の上場数量は、前月より約2,000トン減の6,000トンとし、また、本月は上
 場品目を2品目(No.116Aチャックロール及びNo.120ブリスケット)増やし、14品
 目とした。

  せり結果は、5,130トンで85.5%の落札率となった。

  品目別に落札率を見ると、全量落札品目は「シックフランク」のみで、「フル
 ブリスケット」99.0%、「カウミート」98.8%、「No.114ショルダークロッド」
 96.8%、「No.112Aリブアイロール」96.6%及び「No.180ストリップロイン」96.
 1%と落札率が高かったのに対し、他の品目は落札率が低く、特に「120ブリスケ
 ット」69.4%、「チャック&ブレード」74.8%、「No.116スクウェアカットチャ
 ック」77.5%及び「エージドビーフフルセット」78.9%が低かった。

  東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.114ショルダークロッド」、
 「No.116Aチャックロール」、「No.112Aリブアイロール」、「No.180ストリップ
 ロイン」、「フルブリスケット」、「トップサイド」、「シックフランク」及び
 「カウミート」であった。
  
  他の品目は落札率が低く、特に「No.189フルテンダーロイン」38.9%及び「チ
 ャック&ブレード」44.9%が低かった。

  一方、価格の動きは、前月に比べ「No.114ショルダークロッド」、「No.189フ
 ルテンダーロイン」及び「チャック&ブレード」を除き、値を上げた。

輸入牛肉の市況(仲間相場) 

 事業団調査による11月30日及び12月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同期比
では、北米産のNo.180ストリップロイン及びNo.189テンダーロイン、オセアニア産
のチャック&ブレード、キューブロール及びテンダーロインを除き値下がりをして
おり、大部分のものが約10%、中には20%近く値下がりを示した品目もあった。

 また、前月比では、若干の品目を除き値下がりをしており、特に冷蔵品の「トッ
プサイド」が約15%近く値下がりを示した。

 なお、主要部位の価格の動向は図24のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ) 

産地

品   目 11 月 30 日 12 月 15 日
価 格
円/kg
比   率(%) 価 格
円/kg
比   率(%)
前月
同期比
前年
同月比
前月
同期比
前年
同月比
北米産 冷凍品 NO112A 
リブアイロールリップオン
2,141 99.3 101.5 2,146 100.2 97.5
NO116 
スクエアカットチャック
834 98.5 100.5 821 96.6 99.0
NO121B
ショートプレート
656 94.7 89.4 666 98.4 90.0
NO180 
ストリップロイン
1,789 100.2 101.8 1,778 98.9 100.4
NO189 
テンダーロイン
2,356 96.8 106.8 2,373 99.5 106.0
チャックリブ 1,138 93.7 77.0 1,132 97.1 75.6
オセアニア産 冷凍品 チャック & ブレード 754 95.0 102.4 748 95.4 101.1
フルブリスケット 617 98.4 76.4 616 96.6 76.5
ポイントエンドブリスケット 670 98.1 80.9 671 98.4 81.6
ナーベルエンドブリスケット 582 98.6 72.4 595 98.3 74.4
キューブロール 2,036 99.5 111.1 2,025 105.7 107.4
ストリップロイン 1,592 96.0 106.3 1,450 91.9 91.4
テンダーロイン 3,089 99.7 114.2 2,823 95.8 103.8
トップサイド 930 96.1 83.8 906 95.4 80.8
カウミート 684 96.5 97.7 672 96.8 95.3
エージドビーフフルセット 1,062 94.7 95.8 1,056 9.8 90.2
冷蔵品 キューブロール 1,676 86.3 80.6 1,758 99.9 84.8
トップサイド 970 75.5 72.6 928 82.7 68.6
フルセット 1,100 87.4 78.4 1,058 90.0 75.8
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。

 B小売価格
 国産牛肉は弱含み、輸入牛肉も横ばいないし低下
・ 国産牛肉は、年明け以降、堅調に推移してきたが、8月、9月と2ヵ月連続して
 低下した後、10月以降横ばいで推移している。

  輸入牛肉は、2年に入り、若干上昇し、その後、夏場に入り一時弱含みとなっ
 たものの、おおむね横ばいで推移している(図25)。

 C子牛価格
 水準は高いものの弱含みへ
・ 和子牛価格は、和めすは元年12月に484千円、和去勢は2年1月に563千円と過去
 最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせ、その後、横ば
 いから回復基調で推移してきた。10月に入って短角種が出荷されたことから、和
 子牛の総平均価格は大きく低下したものの、品種別にみれば、前年水準を大きく
 下回った短角種を除き、おおむね安定的に推移している(図26)。

・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで
 推移したが、その後反転し、2年1月には、235千円と過去最高値を記録した。そ
 の後次第に価格を下げ、8月には188千円となった後、横ばいで推移している(11
 月190千円)。また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、8月
 には74千円となったが、9月以降持ち直している(11月79千円)(図27)。

・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が
 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、乳雄子牛の供給動向等
 を注視する必要があろう。


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