(1) 生乳生産 伸び率は4ヵ月連続して前年水準を下回る ・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産の伸び率は、平成2年に入 り次第に鈍化し、8月以降前年同月を下回って推移している。11月は、北海道の 伸び率は前年同月を上回った(100.8%)ものの、都府県が前年同月を下回った (99.1%)ため、生乳生産は引き続き前年同月を下回った(前年同月比99.7%) (図1)。 ・ これを季節調整値でみると、6月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳 生産が10月に入って上昇に転じ、11月には2年始めの水準にまで回復している。 一方、都府県の生産は、8月を境に回復に転じているものの、回復の足取りは 重く、3月以降の減少量の約半分を回復したにすぎない。この結果、全国ベース の生乳生産量は、8月以降着実に回復しているが、2年度前半の落ち込みの1/2 程度の戻りにとどまっている(図2、3)。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、本年7 月に前年同月水準に回復し、11月には前年同月比7.3%増と前月に引き続き大幅 な増加を示した。 一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%を下回り(11月27.8%)、逆に、 経産牛の割合は、55%から70%を上回る水準へと大きく上昇している(11月72.2 %)(巻末統計参照)。 以上のことから、未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)しているものの、 経産牛のと畜が進んでおり、乳群の構成は若令化が進展しているものとみられる。 (2) 飲用牛乳等の需給 好天に恵まれ需要の伸びは鈍化から再び高い伸びへ ・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5 月以降再び高い伸びを示しており、11月も前年同月比2.0%の増加となった(図5)。 ・ これを季節調整値でみると、5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲用 等向け処理量は、9月以降横ばいに転じ14,000トン水準で推移している(図6)。 ・ 飲用牛乳の生産は、2年5月以降大幅な伸びを示し、10月は前年同月比6.5%増 を記録したが、11月は前年同月比2.7%増にとどまっており、飲用等向け処理量 と同様、季節調整値でみると8月以降おおむね横ばいで推移しているものとみら れる(図7)。 その内訳をみると、牛乳は11月の伸び率が前年同月比2.1%増に鈍化し、季節 調整値でみると横ばいに転じたものとみられるが、加工乳は前年同月比6.5%増 と高い伸びを維持しており引き続き好調に推移している(図8)。 これまで高い伸びを示してきた醗酵乳の生産は7月以降伸び悩んでおり、11月 も前年同月を下回った(11月前年同月比96.8%)。 一方、これまで低調であった乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを記録し、伸 び率はその後徐々に低下しているものの、11月に入っても前年同月比7.7%増と 引き続き増加している(図7)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバターを輸入・放出 ・ 63年度から元年度前半にかけてひっ迫した乳製品の需給は、畜産振興事業団に よるバター、脱脂粉乳の輸入・放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月以降 飲用需要の伸びが鈍化したことによる乳製品の生産増等により、均衡に向かい、 元年度末のバター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表1)。 ・ しかし、2年度に入り、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに 伴い乳製品向け生乳処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月には1.9 %減と63年6月以来ほぼ2年振りに前年同月を下回り、7月以降前年同月を大きく 下回って推移している(11月前年同月比95.6%)(図5)。 1日当たり処理量の季節調整値は、8月を境に回復に転じ、11月には2年度前半 の減少部分の4割強を回復し、8,000トン水準(日量)に達した(図9)。 これに伴いバター、脱脂粉乳の生産量は、6月以降前年同月を下回り、11月は、 バター11.8%減、脱脂粉乳7.9%減となった(図10、11)。 バター及び脱脂粉乳生産の季節調整値は、1日当たり乳製品向け処理量とおお むね同様の動きを示し、夏を境に回復に転じているものの、11月時点ではピーク 時(元年12月)からの落ち込み分のバターで22%、脱脂粉乳で35%回復している にすぎない(図12、13)。乳製品向け生乳仕向け量の回復に比べ、バター、脱脂 粉乳の回復が遅れているのは、練乳、全粉乳等の回復が顕著なため(11月前年同 月比、加糖練乳125.0%、全粉乳172.7%)と考えられ、これら乳製品の生産増が 落ち着くにつれ、バター、脱脂粉乳の回復の遅れも改善されるものと考えられる。 こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は5月から、脱脂粉 乳は7月からおおむね横ばいで推移してきたが、バター価格は10月以降kg当たり 7円(0.6%)上昇し、11月には1,134円/kgとなった。脱脂粉乳価格も9月以降わ ずかに上昇傾向にあり(25kg当たり16円)、11月には13,464円/kgとなった。 (図10、11)。このような状況にあって、畜産振興事業団は、9月から12月にか けて、バター計6,000トン、脱脂粉乳4,000トンの輸入手当を行うとともに11月及 び12月にバター計4,000トンを放出した。
表1 乳製品の在庫(各年度末) (単位:千トン、ヵ月)
\ |
区分 | バ タ ー | 脱脂粉乳 | ||||
年度 | \ |
民 間 | 事業団 | 計 | 民 間 | 事業団 | 計 |
55 |
16(3.1) 7(1.3) 12(2.1) 17(2.8) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
12(2.3) 12(2.1) 3(0.5) 1(0.2) 0 0 0 0 0 0 |
28(5.4) 19(3.4) 15(2.6) 18(2.9) 20(3.3) 30(4.6) 29(4.4) 12(1.8) 16(2.2) 17(2.3) |
31(3.3) 16(1.5) 24(2.0) 23(1.9) 22(1.5) 32(2.3) 36(2.5) 13(0.9) 18(1.2) 33(2.2) |
44(4.7) 44(4.2) 22(1.9) 9(0.7) 8(0.6) 8(0.6) 7(0.5) 7(0.5) 4(0.3) 0 |
75(8.0) 59(5.7) 45(3.8) 32(2.6) 30(2.1) 40(2.8) 44(3.0) 20(1.4) 23(1.5) 33(2.2) |
資料:農林水産省畜産局調べ
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