(1) 消費 自由化セールで増加 ・ 牛肉の消費(推定出回り量)は、2年度計では前年度比9.7%増とかなりの伸び を示した。3年4月も「自由化セール」等による販売促進により、輸入牛肉の消費 (推定出回り量)が増え、前年同月比14.9%増と引き続き好調に推移している (図1)。 ・ 大手スーパーでは5月も輸入牛肉を使った販促セールを実施し、牛肉全体の販 売量は4月には及ばないものの、前年の1〜2割増となった模様である。 しかし、例年では5月後半から6月にかけて不需要期となるため、専門小売店や 外食産業ではそれほどの伸びは期待していないとのことである。 ・ 牛肉消費の約5割を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、元年の8月以降おおむね前年水準を上回り堅調に推移 しており、特に3年3月は前年同月比109.2%とかなりの程度上回った。この結果、 2年度計では前年度比103.4%となった(図2)。 ・ 加工仕向け量は、2年1月以降ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいるこ とから前年を下回って推移し(3年3月前年同月比84.5%)、2年度計では前年度 比87.5%となった。 (2) 生産 4月も増加傾向続く ・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、2年7月以降着実に 回復し、2年度は約388千トンと前年度をわずかに上回った(前年度比102.7%)。 ・ この傾向は3年度に入っても継続しており、3年4月はかなりの増加となった (前年同月比106.2%)(図3)。 ・ 5月もと畜頭数からみて、同様の傾向となる見込みである。 ・ 種類別にみると、和牛のと畜頭数は、3年度に入っても去勢和牛を中心に前年 水準をかなり上回って推移している(3年4月前年同月比107.6%)。一方、乳牛 のと畜頭数は、3年2月、3月ともに前年同月を下回ったが、4月は前年同月比105. 1%と増加に転じた(図4)。 ・ 主要市場によると、5月のと畜頭数は、和牛は前年同月を上回るものの4月より は減少し、乳牛は前年並みの模様である。 (3) 輸入 自由化スタート4月は高い伸び ・ 輸入実績は、2年度に入って前半はおおむね前年水準を下回っていたものの、2 年10月以降3年2月までは前年を大きく上回って推移した。3月は前年同月を下回 ったが、2年度計では前年度比105.3%と前年水準を上回った。 ・ 自由化スタートとなった3年4月は、前年同月を大幅に上回った(前年同月比11 6.6%)(図5)。 4月の輸入の内訳をみると、チルドの比率は44%であり、国別輸入割合はオー ストラリア49.9%、アメリカ48.0%となっている。 部位別では、チルドは全般的に増え、フローズンではロインが減ったものの中 へ低級部位が増えた。特に、ばら肉は前月の倍近い量となっている。 なお、2年度までの輸入枠及び3年度以降の関税率は表1のとおりである。 表1 牛肉輸入割当量の推移
昭和61年度 | 168千トン | 平成3年度 | 70% |
62 | 214 | 4 | 60 |
63 | 274 | 5 | 50 |
平成元年度 | 334 | ||
2 | 394 |
牛肉の3年4月の推定期末在庫は、112千トンと前月に比べ約4,600トン減少した。 その内訳をみると、畜産振興事業団在庫は前月に比べ約4,500トン減少したが、 民間在庫は前月とほぼ同じであった(図6)。なお、畜産振興事業団の品目別在 庫は巻末資料に掲げるとおりである。 畜産振興事業団の売買状況 ・ 平成3年度からの牛肉の輸入数量制限の撤廃に伴い、事業団の牛肉輸入業務は2 年度をもって終了し、平成3年度以降は、事業団が保有する輸入牛肉の売渡しの みを行っている。 ・ 5月の売渡しの概要は次のとおりである。
上場日 | 上場数量 | 落札数量 | 落札率 | |
一斉せり売り | 5月9日 | 4,860トン | 2,696トン | 55.5% |
任意せり売り | 5月23日 | 2,380 | 429 | 18.0 |
計 | − | 6,000※ | 3,125 | 52.1 |
※印は5月上場全体計画の数量 この結果平成3年5月末の在庫量は48,724トンとなった。 ・ 6月売渡しの概要は次のとおりである。
上場日 | 上場数量 | 落札数量 | 落札率 | |
一斉せり売り | 6月6日 | 4,940トン | 1,922トン | 38.9% |
任意せり売り | (6月20日) | |||
計 | − | 6,000※ |
※印は6月上場全体計画の数量 ( )は予定である。 (4) 価格動向 @国産牛枝肉卸売価格 5月は安定上位価格を突破 ・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格の去勢牛)についてみると、2年度は7 月、8月と安定上位価格を突破し、9月以降は3年2月に一時低下したものの安定上 位価格付近で堅調に推移した。 3年度に入って、東京市場では4月は1,166円/kgと2月水準に低下したものの、 5月の速報地では1,280円/kgとなり、3年度の安定上位価格(1,250円/kg)を突 破した(図7)。 ・ 最近の4ヵ月間の東京市場の規格別卸売価格の動きは表2のとおりである。 なお、63年4月以降の規格別卸売価格の推移は図8、同じく種類別卸売価格の推 移は図9のとおりである。 表2 (単位:円/kg)
区 分 | 3年2月 | 3月 | 4月 | 5月 (速報値) |
去勢和牛 A5 | 2,599 | 2,690 | 2,707 | 2,653 |
去勢和牛 A4 | 2,110 | 2,193 | 2,222 | 2,175 |
乳おす B3 | 1,217 | 1,219 | 1,200 | 1,181 |
乳おす B2 | 911 | 898 | 861 | 880 |
乳めす C1 | 368 | 331 | 359 | 378 |
資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京食肉市場 A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 6月の上場数量は、6,000トンとし、うち一斉せり売り上場数量は、4,940トン とした。(残りの数量は月末のせり売りに上場される。) せり結果は、1,922トンで38.9%の落札率となった。 品目別に落札率を見ると、50%を超えたものは、カウミート(55.4%)のみで あり、その他の品目は24.4%〜48.4%と低かった。 東京食肉市場の一斉せり結果は、品目全体の落札率は32.1%(5月44.5%)で あり、「No.116スクェアカットチャック」(52.0%)及び「No.114ショルダーク ロッド」(51.5%)は50%を超えたものの、「No.120ブリスケット」、「No.180 ストリップロイン(1)」及び「フルブリスケット」は全量不落札であった。 一方、価格の動きは、前月に比べ全般的に値を下げた。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による4月30日及び5月15日現在の輸入牛肉の市況は、前年同期比では すべての品目について大幅な値下がりを示しているが、前月と比較すると、北米産 冷凍品の「No.180ストリップロイン」がわずかな上昇を示し、オセアニア産では冷 凍品の「キューブロール」、「ストリップロイン」、冷蔵品の「トップサイド」が やや高めに推移した(表3)。 なお、主要部位の価格の動向は図10〜12のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 価 格 円/kg |
比 率 | |||||
前月同期比% | 前年同期比% | |||||||
4月30日 | 5月15日 | 4月30日 | 5月15日 | 4月30日 | 5月15日 | |||
北米産 | 冷凍品 | No.112A リブアイロールリップオン |
1,999 | 2,055 | 94.8 | 99.0 | 88.5 | 80.1 |
No.116 スクエアカットチャック |
785 | 757 | 95.3 | 97.3 | 79.9 | 84.8 | ||
No.121B ショートプレート |
654 | 694 | 96.2 | 103.6 | 87.2 | 92.2 | ||
No.180 ストリップロイン |
1,728 | 1,702 | 100.3 | 102.5 | 93.1 | 91.4 | ||
No.189 テンダーロイン |
2,203 | 2,168 | 93.2 | 97.0 | 89.1 | 85.4 | ||
チャックリブ | 1,246 | 1,224 | 106.4 | 89.5 | 79.8 | 78.7 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 711 | 688 | 98.1 | 95.7 | 73.5 | 78.8 |
フルブリスケット | 565 | 541 | 96.4 | 95.6 | 70.2 | 67.5 | ||
ポイントエンドブリスケット | 619 | 590 | 98.4 | 95.5 | 71.1 | 67.8 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 540 | 474 | 100.0 | 91.0 | 70.9 | 62.6 | ||
キューブロール | 1,790 | 1,783 | 106.2 | 98.9 | 87.4 | 84.4 | ||
ストリップロイン | 1,440 | 1,672 | 96.6 | 107.7 | 86.4 | 99.1 | ||
テンダーロイン | 2,675 | 2,517 | 100.6 | 93.1 | 87.8 | 80.2 | ||
トップサイド | 853 | 819 | 96.6 | 95.5 | 80.8 | 78.8 | ||
カウミート | 680 | 654 | 101.0 | 97.0 | 95.2 | 91.3 | ||
エージドビーフフルセット | 998 | 990 | 97.2 | 95.4 | 84.2 | 85.3 | ||
冷蔵品 | キューブロール | 1,937 | 1,951 | 95.9 | 99.5 | 82.5 | 78.4 | |
トップサイド | 1,070 | 920 | 119.0 | 96.4 | 99.4 | 78.3 | ||
フルセット | 1,017 | 997 | 96.0 | 95.2 | 85.2 | 80.4 |
B小売価格 国産牛肉、輸入牛肉ともおおむね横ばい ・ 国産牛肉(かた、東京)の小売価格は、2年秋に若干低下したものの、3年に入 って再び2年夏の水準にまで戻し、390円台で推移している(3年5月391円/100g)。 輸入牛肉(冷凍かた、東京)は、2年夏に一時弱含みとなったものの、おおむ ね横ばいで推移していたが、3年5月は151円/100gと若干上昇した(図13)。 C子牛価格 黒毛和種は依然高水準 ・ 指定市場における肉用子牛価格は、黒毛和種は2年4月からおおむね強含みで推 移し、その後3年1月に弱含みに転じたが、依然としてその水準は高く、5月の速 報値は456千円であった。 褐毛和種は2年夏場に低下傾向にあったものの、その後回復し、12月にピーク となった後弱含みに転じた(5月速報値330千円)(図14)。 乳用種(ホルスタイン)は2年6月・7月に急落し、その後持ち直したものの、3 年に入って弱含みに推移している(5月速報値168千円)。 ・ また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、8月には74千円 となった。その後9月以降2月まで持ち直したが、3月には、72千円となった(図 15)。
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