牛乳・乳製品


(1) 生乳生産
 4月はマイナスの伸び

・ 生乳生産は、11月を生産の底としその後冬から初夏にかけて増加するという例
 年のパターンどおり、2年12月から3年4月まで増加傾向にある(図29)が、前年
 同月比の伸び率でみると、2年12月にプラスに転じた後毎月わずかながら上昇し
 てきたものの、3年4月には5ヵ月ぶりに再びマイナスに転じた。(図30)。
 
・ 北海道、都府県別にみてみると、3年4月の北海道の生産の伸び率に大きな変化
 がみられる。北海道は2年10月以降毎月伸び率が順調に上昇し、都府県の伸び率
 の低迷をカバーしてきた。しかし、3年4月は、前年同月の伸びが高かったことも
 あって前年並みにとどまった(前年同月比100.2%)(図30)。

・ また、季節調整値でみると、北海道の生乳生産は3月まで順調に増加し、年間3
 18万トン水準に達したが、4月には減少した。

  一方、都府県は2年4月をピークとしその後減少し、10月以降はおおむね横ばい
 で推移している(図31、32)。
 
  この結果全国の生乳生産は、2年9月移行着実に回復してきたが、3年2月移行横
 ばいで推移している(図33)。

・ なお、5月の生産は、北海道の主産地に回復の兆しが見込まれるが、都府県の
 伸びが悩みから、全体としては前年水準並みと見込まれる。

・ 乳用めす牛のと畜頭数は、2年6月まで前年同月水準を下回ったが、10月以降前
 年同月比で高い伸びを示し、3年4月は、7.7%増となった。(巻末統計資料)こ
 れを季節調整値でみると、2年初めから増加していたと畜頭数は、10月をピーク
 に減少し、3年に入り減少から横ばいとなっている(図34)。

  一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45
 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%程度となり(3年4月28.8%)、
 逆に、経産牛の割合は、55%から70%程度と大きく上昇して搾乳牛の更新が進ん
 でいることがうかがわれる(3年4月71.2%)(巻末統計参照)

(2) 飲用牛乳等の需給
 4月に入っても需要は好調に推移

・ 飲用等向け処理量は、2年5月以降前年同月比で高い伸びを示し、3年4月も前年
 同月比2.0%の増加となった(図36)。

・ これを季節調整値でみると、2年5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲
 用等向け処理量は、9月以降おおむね横ばいで推移し、その水準は年間約510万ト
 ンベースとなっている(図37)。

・ 一方、飲用等向けの大宗を占める飲用牛乳の生産は、2年10月の前年同月比6.3
 %という高い伸び率をピークに鈍化傾向にあり、3年3月にはマイナスとなったが、
 4月は前年同月比103.7%と再び高い伸びを示した(図38)。

  これを季節調整値でみると、飲用等向け処理量と同じく、2年9月以降おおむね
 横ばいで推移している(図39)。

・ 飲用牛乳の生産の内訳をみると、比較的高い伸び率を示していた牛乳について
 は、3年3月に2年4月以来はじめて減少を示したが、4月には前年同月比2.8%増と
 なった。一方、加工乳については、63年度から非常に高い伸びを維持しており、
 3年4月も前年同月比9.2%増を示した(図40)。
	
  これを季節調整値でみると、牛乳が2年11月以降横ばいもしくは減少傾向で推
 移しているのに対し、加工乳は62年度から一貫して増加傾向にある(図41)。加
 工乳の増加は、低・高脂肪牛乳等消費者ニーズの多様化によるものとみられる。

・ 醗酵乳の生産は、2年6月まで前年同月比で高い伸びを示したが、7月以降伸び
 悩んでおり、3年4月は前年同月比98.1%と前月に続き前年水準を割り込んだ(図
 38)。

  一方、乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを続けており、3年4月も前年同月比
 12.3%増と高い伸びを示した(図38)。

(3) 乳製品の需給、価格動向
 飲用需要の回復に伴い生産は減少、事業団はバター・脱脂粉乳を輸入・放出 

・ 2年5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに伴い乳製品向け生乳
 処理量の伸びは、6月以降前年同月を大きく下回った。3年3月は飲用需要がやや
 鈍化し、生乳生産も回復したためわずかに前年同月を上回ったが、4月の伸びは、
 前述のとおり生乳生産の伸びが再びマイナスとなったため、前年同月比95.5%と
 大きく減少した(図36)。

  これを季節調整値でみると、2年8月を境に回復に転じ、3年1月以降は増加を境
 に回復に転じ、3年1月以降は増加から横ばいで推移している(図42)。

・ 乳製品向け生乳処理量の動向に伴い、バター、脱脂粉乳の生産量は、6月以降
 前年同月を下回って推移している。しかし、2年11月からは減少率(前年同月比)
 は縮小の傾向にある(図43、44)。

・ バター及び脱脂粉乳の生産を季節調整値でみると、バターは、2年8月を境に回
 復に転じ、3年4月の生産は年間生産換算で78千トンと最近の生産のピークである
 元年12月の約90%まで回復している(図45)。また、脱脂粉乳は、バターと同じ
 く2年8月を境に回復に転じているが、3年1月以降は1日当たり乳製品向け処理量
 と同様の動きを示し、増加から横ばいで推移している。このため、4月の生産は、
 年間生産換算で184千トンと最近の生産のピークである元年12月の約95%まで回
 復している(図46)。

・ 脱脂粉乳に比べバター生産の回復が遅れているのは、2年5月以降クリームの生
 産が急速に増大しているためと考えられる(図47)。

・ こうした乳製品の需給動向を反映してバターの卸売価格は、2年10月以降、脱
 脂粉乳も9月以降上昇に転じ、3年4月には、バターは1,155円/kg、脱脂粉乳13,6
 24円/25kgと上昇した(図43、44)。また、2年度末のバター、脱脂粉乳の在庫
 は、バター12千トン、脱脂粉乳20千トンと低い水準となった(表5)。

表5 乳製品の在庫(各年度末)
                        (単位:千トン、ヵ月)

 \

区分 バ  タ  ー 脱脂粉乳
年度

民 間 事業団 民 間 事業団

50年度
55
56
57
58
59
60
61
62
63


2

 6(1.5)
16(3.1)
 7(1.3)
12(2.1)
17(2.8)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
12(1.6)
0
12(2.3)
12(2.1)
 3(0.5)
 1(0.2)
0
0
0
0
0

0
0
 6(1.5)
28(5.4)
19(3.4)
15(2.6)
18(2.9)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
12(1.6)
18(2.4)
31(3.3)
16(1.5)
24(2.0)
23(1.9)
22(1.5)
32(2.3)
36(2.5)
13(0.9)
18(1.2)

33(2.2)
20(1.3)
0
44(4.7)
44(4.2)
22(1.9)
 9(0.7)
 8(0.6)
 8(0.6)
 7(0.5)
 7(0.5)
 4(0.3)

0
0
18(2.4)
75(8.0)
59(5.7)
45(3.8)
32(2.6)
30(2.1)
40(2.8)
44(3.0)
20(1.4)
23(1.5)

33(2.2)
20(1.3)
資料:農林水産省牛乳乳製品課調べ

・ このような状況から、畜産振興事業団は、平成2年度のバター、脱脂粉乳の輸
 入・放出に引き続き、平成3年度に入って、バター2,000トン、脱脂粉乳11,991ト
 ンの輸入手当を行うとともにバター1,456トン、脱脂粉乳7,117トンを放出した。

輸入手当(買入れ入札)
[平成2年度]        単位:トン
入札年月日 バター 脱脂粉乳
2年 9月12日
  11月 1日
  12月27日
3年 2月 5日
2,992
1,008
2,000
1,500


4,000
1,000
7,500 5,000
[平成3年度]        単位:トン
入札年月日 バター 脱脂粉乳
3年 4月10日 2,000 11,991
2,000 11,991
放出(売渡し入札)
[平成2年度]        単位:トン
入札年月日 バター 脱脂粉乳
2年11月 6日
  11月21日
  12月26日
3年 2月 7日

   2月15日
2,342
 549
1,109
 895
1,105



2,163

1,799
6,000 3,962
[平成3年度]        単位:トン
入札年月日 バター 脱脂粉乳
3年 4月11日
   4月25日
   5月23
1,456

1,027
2,906
3,183
1,456 7,117
注 これら表の数値は四捨五入してあるのでそれぞれの合計の値は必ずしも
  計の値と一致しない。


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