(1) 消費 やや鈍化から堅調な伸びへ ・ 牛肉の消費は62、63年度の2ヵ年連続して10%近い伸びを示したものの、元年 度は国産牛肉の生産(供給)が減少したこともあり約70万トン(前年度比2.4% 増)とその伸びはやや鈍化した。 ・ 2年以降、推定出回り量は再び高い伸びを示しており、3年1月は、前年比同月 比16.1%増と引き続き好調に推移している。この結果、4〜1月でみた場合、前年 同期比10.0%増と前年水準を大きく上回っている(図14)。 ・ 牛肉消費の約5割を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、元年の8月以降おおむね前年水準を上回り堅調に推移 している(12月101.2%、4〜12月102.4%)(図15)。 ・ 加工仕向け量は、2年1月以降ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいるこ とから前年を下回って推移しており、(4〜12月87.4%)12月も対前年同月比89. 8%と大きく落ち込んだ(図15)。 (2) 生産 低水準にあった生産は、回復へ ・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、2年7月以降おおむ ね前年水準を上回っており(3年1月前年同月比107.9%)、本年度に入って着実 に回復している(図16)。 これを季節調整値でみると、牛肉生産量は2年4月頃から上昇に転じ、2年末に は63年水準にまで回復している(図17)。 ・ 種類別には、元年度は和牛が回復に転じたものの、乳用種は雌牛の大幅と畜減 もあって、国内生産はかなりの減少となった。 2年度に入って、和牛のと畜頭数は去勢和牛を中心に前年水準を大きく上回っ て推移しており(4〜3年1月、前年同期比めす和牛12.7%増、去勢和牛14.9%増)、 一方、乳牛は依然として前年水準を下回ってはいるものの(4〜3年1月前年同期 比肥育おす牛1.2%減、めす牛0.4%減)、10月以降と畜頭数は毎月前年を上回っ ており(3年1月肥育おす牛3.7%増、めす牛3.7%増)、乳牛からの枝肉生産は昨 年前半を境に回復している(図18)。 (3) 輸入 一時停滞していた輸入も回復へ ・ 日米・日豪牛肉交渉の結果、輸入割当量を63年度以降2年度まで毎年6万トンず つ増加させるとともに、平成3年度には輸入割当制度を撤廃することが合意され ている(表2)。
表2 牛肉輸入割当量の推移
昭和57年度 | 135千トン |
58 | 141 |
59 | 150 |
60 | 159 |
61 | 168 |
62 | 214 |
63 | 274 |
平成元年度 | 334 |
2年度 | 394 |
一般枠 | 364 |
特別枠 | 30 |
・ 日本・日豪合意に即して2年度までの輸入枠が発表されており2年度については、 一般枠36万4千トン、特別枠3万トン、計39万4千トンが割当てられている。 ・ 輸入実績は、輸入割当量の増大に伴い年々増加してきた。2年度に入って10月 以降は前年を大きく上回って推移しており(3年1月前年同月比135.0%)、4〜3 年1月でみても対前年同期比104.9%と前年水準を上回っている(図19)。 牛肉の3年1月の推定期末在庫は、121千トンと前月に比べ約5,300トン増加した。 その内訳をみると、畜産振興事業団在庫は前月に比べ約7,400トン増加したのに 対し、民間在庫は約1,600トン減少した(図20)。なお、畜産振興事業団の品目 別在庫は巻末資料に掲げるとおりである。 畜産振興事業団の売買状況 ・ 畜産振興事業団は、12月に行った冷凍輸入牛肉の買入入札をもって、2年度の 事業団への輸入割当数量327.6千トンの手当てを終了した。 ・ 平成2年度に入って2月までの買入れは、293千トン、売渡しは、266千トンとな っている。 2月売渡し分 ・ 事業団の2月売渡総数量は、前月比7%減の21,702トン(前年同月比8.6%減) となった。 部位別では、前月に比べ「枝肉」17.2%増及び「バルク」27.9%増となったが、 他の部位は減少した。 (4) 価格動向 @国産牛枝肉卸売価格 2月に入って弱含みへ ・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格)についてみると、昨年3月以降弱含 みとなり、6月までは中心価格と安定上位価格の中間付近で推移したが、7月、8 月と価格は安定上位価格を突破し、9月以降も安定上位価格付近で堅調に推移し てきた(3年1月1,240円/kg)。その後、2月に入って卸売価格は弱含みとなり2 月後半には、中心価格と安定上位価格の中間を下回って推移した(図21)。 ・ 格付別にみると、和牛はA5やA4の高級品が引き続き堅調に推移し、乳雄はB2、 B3が、3年1月には前月に比べ若干上昇したものの、2月に入って低級品を中心に 値を下げており、これに伴って乳雄の平均価格も低下している(図22、23)。乳 雌については、C1の価格は7月以降下げ止まっており、これに伴い、乳雌平均価 格も横ばいで推移している(図22、23)。 ・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている (図24)。 A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 3月の上場数量は、前月と同様6,000トンとした。 せり結果は、4,537トンで75.6%の落札率となった。 品目別に落札率を見ると、「シックフランク」99.2%及び「No.116スクウェア カットチャック」90.7%と落札率が高かったのに対し、他の品目は落札率が低く、 特に「No.180ストリップロイン」23.9%、「No.189フルテンダーロイン」35.8% 及び「No.112Aリブアイロール」43.5%が低かった。 東京食肉市場のせり結果は、全量落札品目は、「No.116Aチャックロール」、 「No.120ブリスケット」及び「シックフランク」であった。 「No.116スクウェアカットチャック」96.1%は落札率が高かったが、他の品目 は落札率が低く、「No.180ストリップロイン」及び「No.189フルテンダーロイン」 は全量不落、「フルブリスケット」31.8%及び「トップサイド」47.8%が特に低 かった。 一方、価格の動きは、前月に比べ値を上げたのは、「No.120ブリスケット」、 「チャック&ブレード」及び「エージドビーフフルセット」であった。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による1月31日及び2月15日の輸入牛肉の市況の状況は、前年同期比で は、北米産のNo.116スクウェアカットチャック及びNo.180ストリップロインを除き 値下がりを示した品目もあった。 また、前月比では、大部分の品目が値上がりか前月並みであった。 なお、主要部位の価格の動向は図25のとおりである。
表3 輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 1 月 31 日 | 2 月 15 日 | |||||
価 格 円/kg |
比 率(%) | 価 格 円/kg |
比 率(%) | |||||
前月 同期比 |
前年 同月比 |
前月 同期比 |
前年 同月比 |
|||||
北米産 | 冷凍品 | No.112A リブアイロールリップオン |
2,199 | 2,145 102.5 |
2,399 91.7 |
2,199 | 2,176 101.1 |
2,339 94.0 |
No.116 スクエアカットチャック |
848 | 827 102.5 |
835 101.6 |
849 | 840 101.1 |
832 102.0 |
||
No.121B ショートプレート |
685 | 664 103.2 |
736 93.1 |
713 | 681 104.7 |
732 97.4 |
||
No.180 ストリップロイン |
1,857 | 1,815 102.3 |
1,816 102.3 |
1,834 | 1,822 100.7 |
1,816 101.0 |
||
No.189 テンダーロイン |
2,332 | 2,337 99.8 |
2,459 94.8 |
2,398 | 2,329 103.0 |
2,403 99.8 |
||
チャックリブ | 1,179 | 1,114 105.8 |
1,578 74.7 |
1,187 | 1,131 105.0 |
1,597 74.3 |
||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 729 | 733 99.5 |
790 92.3 |
718 | 733 98.0 |
810 88.6 |
フルブリスケット | 655 | 616 106.3 |
846 77.4 |
681 | 649 104.9 |
833 81.8 |
||
ポイントエンドブリスケット | 719 | 673 106.8 |
8893 80.5 |
738 | 710 103.9 |
875 84.3 |
||
ナーベルエンドブリスケット | 605 | 576 105.0 |
856 70.7 |
612 | 590 103.7 |
827 74.0 |
||
キューブロール | 1,674 | 1,679 99.7 |
2,098 79.8 |
1,618 | 1,713 94.5 |
2,062 78.5 |
||
ストリップロイン | 1,448 | 1,406 103.0 |
1,588 91.2 |
1,528 | 1,427 107.1 |
1,579 96.8 |
||
テンダーロイン | 2,667 | 2,585 103.2 |
2,826 94.4 |
2,680 | 2,531 105.9 |
2,925 91.6 |
||
トップサイド | 907 | 913 99.3 |
1,211 74.9 |
895 | 902 99.2 |
1,174 76.2 |
||
カウミート | 681 | 683 99.7 |
728 93.5 |
671 | 680 98.7 |
733 91.5 |
||
エージドビーフフルセット | 1,021 | 1,024 99.7 |
1,261 1.07 |
1,023 | 1,031 99.2 |
1,203 85.0 |
||
冷蔵品 | キューブロール | 1,921 | 1,830 105.0 |
2,318 82.9 |
1,985 | 1,855 107.0 |
2,268 87.5 |
|
トップサイド | 953 | 972 98.0 |
1,561 61.1 |
973 | 937 103.8 |
1,558 62.5 |
||
フルセット | 1,036 | 1,005 103.1 |
1,458 71.1 |
1,170 | 1,134 103.2 |
1,456 80.4 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 B小売価格 国産牛肉は弱含み、輸入牛肉も横ばいないし低下 ・ 国産牛肉は、8月、9月と2ヵ月連続して低下した後、10月以降横ばいで推移し てきたが、3年1月以降上昇に転じた。 輸入牛肉は、2年に入り、若干上昇し、その後、夏場に入り一時弱含みとなっ たものの、おおむね横ばいで推移している(図26)。 C子牛価格 一時弱含んだものの回復基調へ ・ 和子牛価格は、和めすは元年12月に484千円、和去勢は2年1月に563千円と過去 最高価格を記録した後、本年3月にかけて5〜6万円の低落をみせ、その後、短角 種の出荷が集中した10月を除き横ばいから回復基調で推移してきた。3年1月に入 り、価格は弱含みに転じ、和めすは431千円、和去勢雄は525千円に低下したもの の、依然として保証基準価格を上回る水準にある(図27)。 ・ 乳用雄子牛は、自由化決定後の63年7月から11月頃までにかけてやや弱含みで 推移したが、その後反転し、2年1月には、235千円と過去最高値を記録した。そ の後次第に価格を下げ、8月には188千円となった後、横ばいで推移している(3 年1月189千円)。また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、 8月には74千円となったが、9月以降持ち直している(3年1月78千円)(図28)。 ・ なお、子牛価格は肥育経営の収益性に強く影響される一方、子牛の生産頭数が 増加すると低下する傾向にあり、今後の枝肉価格の動向、乳雄子牛の供給動向等 を注視する必要があろう。
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