牛乳・乳製品


(1) 生乳生産

 伸び率は2ヵ月連続して前年水準を上回る
 
・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産の伸び率は、平成2年に入
 り次第に鈍化し、8月以降11月まで前年同月を下回って推移した。その後、12月
 は、3年1月と都道府県の伸び率は引き続き前年同月を下回った(1月前年同月比
 99.2%)ものの、北海道が前年同月を上回った(1月102.2%)ため、生乳生産は
 2ヵ月連続して前年同月を上回った(1月100.3%)(図1)。

・ 一方、6月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳生産は10月に入って上
 昇に転じ、12月には元年末のピーク時を上回り、過去最高の水準となった。

・ これを季節調整値でみると、都府県の生産は、8月を境に回復に転じているも
 のの、回復の足取りは重く、10月以降おおむね横ばいで維持している。一方、6
 月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳生産は10月に入って上昇に転じ、
 3年1月には元年末のピーク時を上回り、過去最高の水準となった。

  この結果、全国ベースの生乳生産量は、8月以降着実に回復しており、3年1月
 は前月に比べ若干の増加にとどまったものの、2年春のピーク時に近い水準にま
 で回復している(図2、3)。

・ 乳用めす牛のと畜頭数は近年、前年を大きく下回って推移してきたが、2年7月
 に前年同月水準に回復し、3年1月は前年同月比3.7%増と引き続き増加を示した。

  一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45
 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%程度となり(3年1月29.1%)、
 逆に、経産牛の割合は、55%から70%程度と大きく上昇している(3年1月70.9%)
 (巻末統計参照)。

  以上のことから、乳群の拡大は一段落し、乳群構成の若令化が進展している
 (未経産牛のと畜は減少(若雌の保留は進展)し、経産牛のと畜が進展)ものと
 みられる。

(2) 飲用牛乳等の需給

 暖冬等から需要は堅調な伸びへ

・ 平成元年12月以降、低い伸びにとどまっていた飲用等向け処理量の伸びは、5
 月以降再び高い伸びを示しており、3年1月も前年同月比3.5%の増加となった(図5)。

・ これを季節調整値でみると、5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲用
 等向け処理量は、9月以降減少ないし横ばい傾向で推移している(図6)。

・ 飲用牛乳の生産は、2年5月以降大幅な伸びを示し、10月は前年同月比6.5%増
 を記録したが、その後伸び率は鈍化した。しかし3年1月は前年同月比3.9%増と
 再び高い伸びとなった。(図7)。季節調整値でみると、飲用等向け処理量と同
 様、8月以降おおむね横ばいで推移している。

  その内訳をみると、牛乳は3年1月の伸び率が前年同月比3.9%増と再び増加傾
 向に転じた。季節調整値でみると最近は横ばいで推移しているものとみられる。
 加工乳は前年同月比4.2%増と高い伸びを維持しているが、季節調整値でみると2
 年末は減少もしくは横ばいで推移している(図8)。

  これまで高い伸びを示してきた醗酵乳の生産は7月以降伸び悩んでおり、3年1
 月も前年同月101.3%と低い伸びにとどまった(図7)。

  一方、乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを続けていたが、3年1月は前年同月
 比8.8%増と再び大きな伸びを示したが、季節調整値は6月以降おおむね横ばいで
 推移している(図7)。

(3) 乳製品の需給、価格動向

 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバター・脱脂粉乳を輸入・放出 

・ 63年度から元年度前半にかけてひっ迫した乳製品の需給は、畜産振興事業団に
 よるバター、脱脂粉乳の輸入・放出、国内生乳生産の増加、更には元年12月以降
 飲用需要の伸びが鈍化したことによる乳製品の生産増等により、均衡に向かい、
 元年度末のバター、脱脂粉乳の在庫はほぼ適正水準の範囲におさまった(表1)。

・ しかし、2年度に入り、5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに
 伴い乳製品向け生乳処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月にはほぼ
 2年振りに前年同月を下回り、夏から秋口にかけては前年同月を10%近く下回っ
 た。その後、低落率は徐々に縮小しており3年1月は前年同月を3.7%下回るにと
 どまった(図5)。

  1日当たり処理量の季節調整値は、8月を境に回復に転じ、3年1月には2年度前
 半以降の減少部分の7割程度に回復している(図9)。

  これに伴い、6月以降バター、脱脂粉乳の生産量は、前年同月を下回っている
 が、減少率(前年同月比)は縮小の傾向にある(3年1月前年同月比、バター92.3
 %、脱脂粉乳96.3%図10、11)。

  バター及び脱脂粉乳生産の季節調整値は、1日当たり乳製品向け処理量とおお
 むね同様の動きを示し、夏を境に回復に転じており、12月時点ではピーク時(元
 年12月)からの落ち込み分のバターで約5割、脱脂粉乳で約7割回復している(図
 12、13)。乳製品向け生乳仕向け量の回復に比べ、バターの回復が遅れているの
 は、クリーム等の需要が順調なため(1月前年同月比、クリーム119.2%)と考え
 られる。

  こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は10月以降、脱脂粉
 乳も9月以降上昇に転じ、3年1月には、バターは1.139円/kgと前月と同水準とな
 ったものの、脱脂粉乳13,506円/25kgと引き続き上昇した(図10、11)。このよ
 うな状況にあって、畜産振興事業団は、9月から2月にかけて、バター計7,500ト
 ン、脱脂粉乳5,000トンの輸入手当を行うとともに11月から2月にかけてバター計
  5,105トン、脱脂粉乳3,962トンを放出した。

輸入手当(買入れ入札)
 平成 2年 9月12日  バター  2,998トン
     11月 1日  バター  1,008トン
     12月27日  バター  2,000トン
           脱脂粉乳 4,000トン

 平成 3年 2月 5日  バター  1,500トン
           脱脂粉乳 1,000トン

放出(売渡し入札)
 平成 2年11月 6日  バター  2,342トン
     11月21日  バター   549トン
     12月26日  バター  1,109トン

 平成 3年 2月 7日  バター   895トン
           脱脂粉乳 2,163トン
      2月15日  バター  1,105トン
           脱脂粉乳 1,799トン
表1 乳製品の在庫(各年度末)
                        (単位:千トン、ヵ月)

 \

区分 バ  タ  ー 脱脂粉乳
年度

民 間 事業団 民 間 事業団

55
56
57
58
59
60
61
62
63

16(3.1)
 7(1.3)
12(2.1)
17(2.8)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
12(2.3)
12(2.1)
 3(0.5)
 1(0.2)
0
0
0
0
0

0
28(5.4)
19(3.4)
15(2.6)
18(2.9)
20(3.3)
30(4.6)
29(4.4)
12(1.8)
16(2.2)

17(2.3)
31(3.3)
16(1.5)
24(2.0)
23(1.9)
22(1.5)
32(2.3)
36(2.5)
13(0.9)
18(1.2)

33(2.2)
44(4.7)
44(4.2)
22(1.9)
 9(0.7)
 8(0.6)
 8(0.6)
 7(0.5)
 7(0.5)
 4(0.3)

0
75(8.0)
59(5.7)
45(3.8)
32(2.6)
30(2.1)
40(2.8)
44(3.0)
20(1.4)
23(1.5)

33(2.2)

資料:農林水産省畜産局調べ


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