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'92特産畜産物フェア(京浜会場)レポート


たった一日で2万5千人の来場者

 去る3月25日(水)から30日(月)までの6日間、東京新宿駅西口の小田急百貨
店新宿店8階の特設会場で催された「特産畜産物フェア/たくさん、とくさん、ち
くさん市」(京浜会場)は、家族連れや若い人たち、お年寄りの方まで、連日1万
人以上の来場者を集める大盛況となった。とりわけ、29日の日曜日には、2万5千
人以上の人たちが来場し、フェアが始まって以来の大賑わいとなった。今回の京浜
会場は、阪神会場(2月15日から17日まで3日間開催)の後を受けて開かれたもの
で、阪神会場のほぼ倍に当たる、23都道府県67出展者、約300品目の出展からなる
大規模な催しである。

 入口に設けられた、各地の特産畜産物をイラスト化した回転式の「グルッと回っ
てたくさん、とくさん、ちくさん地図」を眺めながら会場に入ると、少しでもいい
物を、おいしい物を、珍しい物に触れたいという来場者の熱気がムンムン。会場で
は、いくつかのコーナーに仕切られた特産畜産物の展示・即売のほか、特設コーナ
ーでの試食・試飲会、専門家による料理教室や有名人を招いての料理実演、パネル
展示、消費者相談、アンケート調査など盛り沢山の内容で来場者を楽しませていた。


フレッシュな畜産品が勢揃い

 「首都圏の皆様にお目見得するのは今回が初めてです。」という声が大半を占め
たのが展示・即売コーナー。鹿児島県の黒豚、肥後の赤牛といった知名度の高い畜
産品は別として、「この機にぜひ東京の皆様方にも名前を覚えてもらいたいですね」
という地域の特性を生かしたフレッシュな畜産品が数多く勢揃いしていた。

 銘柄牛肉、豚肉、地鶏の精肉、鶏卵、加工食品、牛乳、乳製品、蜂蜜等々が並び、
それぞれ、新製品を開発したり、手造り食品や無添加食品を開発するなど差別化を
図りつつ、消費者ニーズに応えようという出展者の意欲が伝わってくる内容となっ
ていた。


本物・グルメ志向の消費者ニーズ

 「若い人たちは質より量で、安ければ安いほどいいのかも知れませんが、この年
になりますと、高くてもとにかく本物のおいしい物を食べたいですね」と語ってい
たのは、銘柄牛肉を買っていったご年輩の方。レトルト・即席食品が氾濫する世の
中だからこそ求められる本物の味。本物とは美味なるもの。

 そこで気になるのは、昨年4月の輸入自由化を迎えた国産牛肉。展示されていた
牛肉はいずれも一段と品質の向上を図り、一度食べたら忘れられない美味な味を追
求して、高級化・ブランド化が進められ、味にウルサイ消費者の関心を惹いていた。
例えば沖縄県の八重山黒牛は、直販方式で、最高価格で1s5万円の高級霜降り肉
ながら、「贈答用に引き合いがきています。始めたばかりの事業ですから、これか
らが楽しみです」と担当者はニッコリ。こうした流れは鶏肉にも及んでおり、〈駿
河若シャモ〉と名づけた新品種の食用鶏を開発し、展示していたのは静岡県の出展
者。「通常のブロイラーの2倍の日数をかけて、しかも放し飼い方式で飼育したた
め肉の締りのよい高品質の精肉を、少々高価格ながらもブランド商品と位置づけて
出展したのですが、評判がいいですよ」と、こちらもグルメな消費者の反応に終始
ニコニコ顔。


人気を集める手造りの味

 展示・即売コーナーで特に目についたのは、ハム、ソーセージ、ベーコンといっ
た加工食品の豊富さ。原材料へのこだわりはもとより、ソーセージにニンジンやパ
セリ、カボチャといった他の素材を混ぜる工夫を凝らしたり、発色剤の濃度を通常
の70PPMから5PPMまで落としたりと、独自のブランド色を打ち出すためにいろいろ
な工夫を凝らしていた。

 また、競って打ち出していたのが〈手造り〉の味へのこだわり。「手造りのハム
とかソーセージなんかを食べると、造った人の温かさまで口の中に広がるような気
がするのよね」とは会場の若い女性の弁。岐阜県のある出展者は、自分の手で育て
あげた豚を原料に、桜の原木を使った燻製法で香りにも特色を出すなど、徹底した
手造りにこだわって、好評を博していた。


素材へのこだわりが人気を博す

 出展品全て、素材には特に気をつかっているようだったが、特に乳製品では、素
材へのこだわりと口当たりのよさを売り物にした製品が数多く出品された。

 牛乳ではホルスタイン種の牛乳に比べて脂肪率が高く、タンパクやミネラルなど、
多くの点ですぐれているといわれるジャージー種の牛乳や低温殺菌の牛乳が出品さ
れ、「コクがあって、ホントにおいしいわね」と大好評だった。ただ、この種の商
品の悩みの種は流通の問題。牛乳と乳酸菌だけでつくったドリンクタイプのヨーグ
ルトを出品していた栃木県出展者は、「2〜4週間が賞味期間なのに、東京へ運ぶ
だけで1週間はロスします。それに地元で390円の値段が、東京では600円になるん
ですよ。この辺がうまくクリアできたら、もっと東京の消費者にも喜んで頂けるの
ですが…」と思案顔だった。ジャージー牛乳や搾りたての生乳を100%使ったアイ
スクリームのコーナーでは、子供連れのご婦人や若い女性で人だかりができていた。
また、塩分をひかえめにしたまろやかな味のチーズやバターなど、普段東京では手
に入らない特産品に人気が集まっていた。

 蜂蜜のコーナーでは、このフェアのために、小型の採蜜機をわざわざ用意し、採
蜜の実際が分かるように実演してくれて、来場者を大いに楽しませていた。そのほ
か卵油、馬油、カルシウムを多く含んだ卵なども出品され、関心を呼んでいた。


珍しい畜産品に人だかり

 「えーっ、あの可愛い目をした鹿を食べるの!」「でもクセがなくて、食べやす
くて、おいしいわね」と歓声があがっていたのは鹿肉のコーナー。「牧場の柵を破
って侵入してくる鹿の被害を何とかしなくちゃあ、というのがこの事業の発想の発
端です」とは、岩手県の出展者。「国内では長野の干肉、エゾ鹿のカン詰めぐらい
しかないでしょうから、消費者の方にはあまり馴染みがないでしょうね。現在は頭
数も少ないし、利用していない部分も多いので地元中心の販売ですが、今日出品し
たハム、燻製肉といったところを中心に、将来は全国展開を目指しています」と抱
負を語っていた。

 ラム肉を出品していたのは北海道の出展者。「買って下さるのは、ツウの方が多
いようです。ラム肉は99%までは輸入なんですよ。それもフローズンのね。ウチは
国内産でおまけに生肉ですから珍しがられるのでしょう。その上安いので飛ぶよう
に売れていきます」と目を細めていた。

 会場でちょっと異彩を放っていたのがミンク・アクセサリーのコーナー。畜産品
といえば食品のみ、と思っていた来場者の多くは一瞬とまどった表情ながらも、す
ぐに襟巻き選びに余念のない奥様方の姿も目立った。

 各地の特産物を集めたフェアは、また郷土色が豊かで、「あっ、青森の馬肉だ。
懐しいなあ。東京じゃめったに手に入らないからな」と、早速買い求めた中年の男
性。展示者と交わす郷土訛りの会話もまた来場の楽しみのひとつのようだった。


クッキング・サロンは憩いの場

 会場の奥に設けられたクッキング・サロンでは、常時試食会が行なわれ、おいし
そうな匂いがプンプン。自然と足が向いてしまうのだった。専門家による肉や乳製
品を使った料理講習会も開かれ、この日のメニューの〈フィットチーネ生クリーム
ソース〉の作り方を、メモをとりながら熱心に聞き入っているご婦人方の姿が多く
見受けられた。

 また、会期中の27、28、29日の3日間、すどうかづみ、ダンプ松本、桂米助の人
気タレントをゲストに招いて、畜産物を使った自慢の料理の実演も行なわれ、たい
へんな人だかりとなった。この日はダンプ松本の登場。「カライものは太らない」
などと、司会者との間で愉快な会話を繰り広げつつ、〈ダンプ特製スタミナステー
キカレー〉の作り方を披露して、集まった大勢の人たちを楽しませていた。

 クッキング・サロンの入口には、「鯉の乳ハーモニー」「UFOむし」「飛騨の
ミートバリエーション」などと名づけられた、各種の料理コンクール優秀作品12点
のおいしそうなフードサンプルが設けられ、それぞれのサンプルの前に置かれた料
理レシピを集める来場者が後を絶たなかった。

 また、ウシ、ブタ、ニワトリの等身大のぬいぐるみが会場の雰囲気を大いに盛り
上げ、子供たちの人気を集めていた。

 今回のフェアは、農林水産省の後援、出展都道府県の協賛を得て、畜産振興事業
団が主催したもので、各地の特産畜産物を一堂に集め、展示・即売を通じて多くの
人たちにもっとよく知ってもらい、需要を広げようという目的で開催されたもので
あったが、予想をはるかに上回る大盛況のうちに幕を閉じることができた。(N)

(後記)
 このレポートは、特産畜産物フェアの様子を紹介するために専門のライターにお
願いして作成したものです。消費者の方たちが特産畜産物に何を期待しているか、
消費者にどうPRしていくか等については、本レポート中にあったように、アンケ
ートを実施していますので、取りまとめ次第、機会を見つけ、ご紹介していきたい
と考えています。


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