★ 事業団便り


沖縄におけるブロイラー関連の話題


 この度、宮崎昭京都大学農学部教授に同行して、11月23日(月)〜6日(木)の
4日間、沖縄県畜産現地調査に参加する機会を得ました。

 調査のメインテーマである「沖縄県における肉用牛生産の最近の動き」は、宮崎
教授のレポート(畜産の情報1月号に掲載予定)を高覧いただくこととして、ここ
では沖縄畜産株式会社(豊里勝一社長)の食鳥センターを訪問した折、色々とお話
を伺いましたので、その中から、同センターにおける特徴的な点についてレポート
します。


1 外はぎ方式による解体

 当センターは、沖縄本島中央部の恩納村にあり、男性12名、女性3名の計15名の
従業員によって、約20万羽のブロイラーが飼養されています。そして、処理工場で
は男性5名、女性15名の計20名の従業員により一日当たり約4,500羽〜5,000羽のブ
ロイラーが解体処理の後出荷されるという一貫した生産処理を行っています。まず
最初にご紹介するのが、同社で独自に開発された解体方法です。

 一般的なブロイラーの処理方法は、脱羽し、内臓を摘出した後、冷却して解体す
るいわゆる「中抜き方式」です。これに対して同社が開発したのが、脱羽後に外側
から肉をはぎ、最後に内臓を残す「外はぎ方式」です。通常「中抜き方式」は、い
ったんと体を水にひたしながら冷却するため、鶏肉が水分を含んでしまいます。
「外はぎ方式」のメリットは、鶏肉を皮膚で覆ったまま冷却するので、鶏肉に水分
が入りにくくかつドリップ(食肉から抜ける肉汁)が抜けにくいため鮮度が維持で
きることです。また、従来は中抜きラインとと体処理ラインの2本の解体処理ライ
ンが必要でしたが、新しい方式では1本のラインで処理が可能となると同時に食鳥
検査も1回で済むようになりました。労力的にも3分の2の人数で作業ができ、コ
ストが低減されることからも、業界の注目を集めているとのことです。


2 低コスト活性処理

 次にご紹介するのは、これも同社が独自に開発した汚水処理施設で、この施設は
コンクリート造りの貯溜槽と2組の素堀の汚水浄化池から成っています。汚水処理
の方法は、まずブロイラー解体処理工場から排出される工場排水を、内臓等の固体
分と血液等の液体分を分離した後に、貯溜槽に集め第一浄化池へ投入します。この
段階でのBOD(生物化学的酸素要求量:水の汚染度を示す尺度)は995ppmです。
そこで発酵菌を投入し約7時間程養鰻(まん)用の水車2個を回転させながら曝気
を行います。その後約2時間沈澱させた後、その上澄水を第二浄化池へ送り同じく
水車で4時間程再処理するとBODは20ppmにまで下がり、潅漑用水としても利用
可能で、そのまま川に放流しても影響はないとのことでした。特に、バクテリアを
利用した本処理方式には、年間の平均気温が20度台というこの沖縄の気候もプラス
になっており、順調な結果を示しているといえるのではないでしょうか。また、沈
澱した活性汚泥は、近隣の果樹園や花卉団地で肥料として還元されています。

 この処理施設の利点としては、1.建設費が安いこと 2.ランニングコストが安い
こと 3.操作が簡単なこと 4.浄化処理能力が高いこと 等が挙げられます。特に
通常の活性汚泥による浄化処理施設を建設する場合、当センターの規模(1日当た
りの汚水が約30トン)では1,500万円前後の建設費が必要となりますが、本処理方
法では素堀の池に敷くビニールシートと水車等の200万円程度の経費で済むため大
変経済的です。

 2組の浄化池が必要となり、ある程度の面積を必要とする問題点はありますが、
なによりも低コストであることが、ふん尿処理に悩んでいる畜産農家にとっては魅
力のある処理方法であり、また、処理施設そのものが単純な構造であることも大い
に参考になると思いました。

(企画情報部 林 義隆)


元のページに戻る