★ 特別寄稿


牛肉輸入自由化と量販店における取り組み

株式会社西友フーズ 畜産部長 佐藤可臣


 牛肉の輸入自由化から一年が過ぎようとしています。しかし、輸入商社からも、
問屋すじからも、海外での生産に取り組んだところからも、良かったと言う話はあ
まり聞きません。一元的な輸入から解きはなされ、需要と供給で決って行くわけで
すから、消費の実態を反映して落ち着くまでには、まだしばらく時間がかかるのか
も知れません。量販店では自由化の合意がなされる以前より、イベント、プロモー
ション中心に、ある程度の輸入牛肉は販売していたこともあり、過度な期待のもと
に勝負師的に買い込んだところ以外は大きな混乱はなかったのではないかと思いま
す。


価格に敏感なマーケット

 牛肉の輸入自由化を機に、どのような販売戦略を構築するかと言う前に、現状の
マーケットをどう認識するかが重要でした。

認識−1 健康への意識もあり、肉全体としてはどちらかと言うと、減らして行き
    たい商品群に入り、必ずしも傾向商品ではない。
認識−2 牛肉はぜいたく品という意識があるが、潜在的にまだまだ伸びる要素が
    あり、価格感度が高い。
認識−3 輸入牛肉はまずく、国産と比較して安全性がどうも心配だとする人が多
    い。
認識−4 有職主婦が増加し、省時間ということが非常に大きなウエイトを占めて
    来る。
認識−5 余暇が問われ、家族とのコミュニケーションを大切にする。


利益面で課題残す

 この様な認識に立って考えますと、大騒ぎすることもなく将来を見すえて着実に、
と言うことになりますがそこは商売でもありますから、

1.自由化を絶好の販売促進手段としてとらえ、消費を喚起する。

2.自分達の売りたいものが必ずしも安くはならないかも知れないが、リーズナブ
 ルな価格で、広く食べてもらい、まずいという感覚を払拭する。

3.安全性については、生産から処理、流通までしっかりとしたパイプとチェック
 体制をとる。あまり大きなところとは組まない。このことが良くお客様にわかる
 ように産地ブランド化をはかる。品質、鮮度の徹底した維持、向上をはかる。

4.省時間、コミュニケーションから、焼肉、ステーキを中心に、さらに味付けの
 商品の拡大をはかる。従来のプロモーション的商品から常時販売できる体制、品
 揃えとするための店舗への商品供給面での改善をはかる。

 他にも色々とあったわけですが以上のような取り組みの結果、利益面での課題は
残しつつも牛肉全体としての販売量は当初の計画通り2ケタの成長を示すことがで
きました。


ステーキ・焼肉用の輸入牛肉、うす切は国産牛肉

 自由化後ほぼ1年を経過し、予測通りのことが多かったとはいえ、課題はなかな
か解決して行かないものです。

1.輸入牛肉は大きく伸びたものの、そのほとんどはチルドビーフのそして質の高
 いものであり、しかもステーキ・焼肉商材であり、価格性をある程度打ち出さな
 いと売上げはすぐ鈍化する。100s100円安くした場合、1.4倍以上の量を販売し
 ないと売上高も利益も確保できない。

2.ステーキ・焼肉としての輸入牛肉は定着したものの、うす切類の力は弱く、ま
 だまだうす切類の需要は、国産牛肉の方が強い。

3.価格はなかなか安定せず、しかもマスコミでは暴落などと報道しているが、そ
 の種の商品は量販店の店頭では商品化がむずかしい。

4.量販店各社も産地指定し、ブランド化をはかっているが、特定の産地の商品で
 まかなうことは困難。

5.輸入牛の伸びに対し和牛は影響を受けず、継続して伸びており、反面ホルスタ
 インは影響を受けた。しかしながら市況の低迷があり、販売量は若干の低下で食
 いとめてはいるものの、パーツ主体となり、バランス維持は難しい。

6.品質、鮮度の維持向上の面では、改善は進んでいるものの、店舗の商品回転率
 を上げ、尚かつ雇用難に対応する店舗への商品供給面での改善は、現地パッカー
 との問題も含め、さらに積極的に取り組む必要がある。

7.安全性のしっかりしたおさえと、料理のバラエティ化が進まない中で、加工調
 理食品への開発行為と適切な情報発信を強化して行く必要がある。


輸入牛肉に偏重は危険

 自由化2年目に向け、さらに積極的に取り組み、一つ一つの問題をつぶして行か
なければならないが、輸入牛肉だけで精肉売場が成り立っているわけではない。過
度なシフトは反動があるだけで、良い結果をもたらさないと思います。しかし年毎
の変化があるにしろ、牛肉トータルとしての需要は確実に伸びて行くと予測されま
す。しかも国内生産増があまり期待できないとすれば、需要増は輸入でまかなわな
ければならないのも事実であります。売る側としては若干の消費者リードをはかり
ながらも、消費者の立場に立って、ニーズにいかに対応して行くかを、連綿として
やつて行くしかないと思います。


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