畜産の情報－畜産物行政価格－１９９３年４月　月報国内編

★ 畜産物行政価格

平成5年度畜産物行政価格等の決定について

農林水産省畜産局食肉鶏卵課　　米田　勝紀
　　　　〃　　　牛乳乳製品課　　　池田　一樹
　　　　〃　　　畜産振興推進室　　靏我　英敏

Ⅰ　指定食肉の安定価格、肉用子牛の保証基準価格等

　農林水産省は、「畜産物の価格安定等に関する法律」及び「肉用子牛生産安定等
特別措置法」に基づき平成５年度指定食肉の安定価格並びに肉用子牛の保証基準価
格及び合理化目標価格について、別表のとおり決定し、３月31日付けで告示しまし
た。以下、その内容等の概略です。


１　指定食肉の安定価格

（１）食肉の価格安定制度

　食肉の価格安定制度は、指定食肉の価格の安定を通じて、生産者の経営安定を確
保しつつ、消費者への食肉の安定供給を図ることを目的として設けられています。

　本制度では、枝肉卸売価格について、省令により豚肉は「上」以上の規格、牛肉
については去勢牛肉の「Ｂ－２・Ｂ－３」規格のものを定め、それぞれの規格に関
して安定上位価格と安定基準価格を設け、その価格安定帯の間に価格を安定させる
ことによって食肉全体の価格安定を図ることとしています。

（２）最近の情勢

ア　牛　肉

　牛肉の枝肉卸売価格については、省令規格である去勢牛肉「Ｂ－２・Ｂ－３」は、
昭和63年度以降おおむね安定上位価格に近い水準で推移してきたが、平成３年以降、
季節的な影響から例年価格が上昇する12月を除き低下傾向で推移しています。

　品種ごとにみると、和牛去勢は自由化後もほぼ横ばいか、やや上昇傾向で推移し
てきたが、４年に入り、景気後退等の影響から「Ａ－４」規格以下が低下傾向で推
移する一方、輸入牛肉と競合度の高い乳用種は平成２年以降低下傾向で推移してい
ます。

　５年度からは、関税率がさらに10％引き下げられ50％となったところであるが、
程度の差こそあれ昨年同様の輸入増が予想されるところであり、その動向を注視し
ていく必要があります。

イ　豚　肉

　豚肉については、近年、需要の伸びが鈍化し、需要の約４割を占める家計消費が
引き続き減少傾向にあり、外食等の需要も横ばい傾向にあるが、平成２年度に減少
した加工用需要が３年度以降やや回復しており、全体の需要量はほぼ前年並となっ
ています。生産は、平成元年度までは横ばいで推移してきたが、２年度以降は環境
問題、後継者難等から前年をやや下回って推移しており、４年度も減少傾向で推移
しています。

　枝肉卸売価格は、３年度は出荷頭数が減少したこともあり、８、９月を除き前年
度をかなり上回る水準であったが、４年度は、チルド豚肉の輸入増加の影響等から、
夏場の価格上昇は少なかったものの、９月までは安定的に推移したが、10月に入り
急落し、畜安定に基づく生産者団体による調整保管の実施体制を整備しました。12
月に価格はやや上昇したものの、１月に入り再び低落したため、調整保管を実施し
た結果、２月以降はやや上昇しています。

（３）安定価格の算定

　食肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮
し、食肉の再生産を確保することを旨とし、過去の一定期間の基準期間（豚肉：過
去５年間、牛肉：過去７年間）に実現した豚及び牛の農家販売価格を基本に、価格
決定年度に見込まれる生産コストの変化率を織り込む需給実勢方式により算定を行
いました。

　豚肉については、基準期間中において肉豚農家販売価格がやや上昇していること
や生産コストが飼料価格の低下等からやや減少していること等を勘案して、昨年同
様、安定基準価格、安定上位価格とも据置諮問したところです。

　牛肉については、基準期間中の肉牛農家販売価格が低下していること、素畜価格
の低下等から生産費指数はやや減少していること等から、安定基準価格で30円、安
定上位価格で35円の引き下げで諮問されました。

　なお、これらは畜産振興審議会での答申を踏まえ、諮問どおり決定されました。


２　肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格

（１）黒褐分離

　近年、黒毛和種、褐毛和種の価格格差が拡大し同一グループとみなせなくなって
きたため、黒褐グループを黒毛和種と褐毛和種に分離した。そのことによって、従
来３区分であった品種区分が４区分に変更された（①黒毛和種、②褐毛和種、③そ
の他の肉専用種、④乳用種）。

（２）保証基準価格

　肉用子牛の保証基準価格は、その再生産を図ることを旨とし、その生産条件及び
需給事情その他の経済事情を考慮して毎年定めている。５年度価格についても昨年
同様、子牛価格に自由化の影響が出ていない過去の一定期間の基準期間（具体的に
は、２年度算定に用いた７年間）に実現した農家販売価格を基本に、定価決定年度
に見込まれる肉用子牛の生産コストの変化率を織り込む需給実勢方式により算定し
たところであります。

（３）合理化目標価格

　合理化目標価格は、肥育経営にとっては牛肉の輸入数量制限が撤廃された段階で、
輸入牛肉と対抗しうる価格で生産を行うための子牛価格であり、子牛生産者にとっ
ては、長期的視点に立って生産の合理化を進めていく方向を示す目標となる価格で
す。合理化目標価格は、合理化の進展に伴って保証基準価格を近づけていくことが
期待される目標であり、５年ごとの設定を原則とするが、自由化当初は１年以上５
年を超えない範囲で定めることができるとされています。

　５年度価格は、まず、５年度における輸入牛肉の国内価格を推計し、その価格か
ら「品質格差」を勘案した輸入牛肉と対抗しうる国産牛肉価格を求めた後、それを
肥育牛の農家販売価格に換算し、更にその肥育牛を生産するために必要な合理的な
肥育経費（素畜費を除く）等を差し引いて子牛価格（合理化目標価格）とする従来
どおりの方法により算定した。なお、適用期間は昨年同様一年間（５年４月から６
年３月）としました。

　算定の結果、肉用子牛の保証基準価格は、①繁殖経営及び乳用種育成経営の飼養
規模は、徐々に拡大していること、②飼料価格の低下等から全体の生産費指数は減
少傾向にあること、③自由化後における生産コストの低下傾向が品種によって異な
るため、品種毎に生産費指数を設定する必要があること、等から全体としては引下
げになるが、黒毛和種については褐毛和種と分離した結果、昨年の黒褐グループと
同じ304千円となりました。それ以外の品種については、褐毛和種は昨年の黒褐グ
ループより24千円引き下げて280千円、その他肉専用種は昨年より３千円引き下げ
て211千円、乳用種は１千円引き下げて164千円となりました。　合理化目標価格に
ついては、円高による輸入牛肉価格の低下は引下げ要素となるが、黒毛和種は品質
格差（輸入牛肉との価格差）が拡大し、円高による引下げ分が相殺され、日本短角
種は黒毛和種との品種格差がやや拡大する傾向にあることから引下げ、乳用種は品
質格差がやや拡大したものの、輸入牛肉価格の影響が大きく引き下げられることに
なりました。

　以上のことから、
　黒毛和種は、昨年の黒褐グループと同じ267千円、褐毛和種は黒褐グループより
も21千円引き下げられ246千円、その他の肉専用種は10千円引き下げて173千円、乳
用種は４千円引き下げられ134千円とそれぞれ諮問されたところであります。


３　審議会における審議

　こうした政府試算について畜産振興審議会食肉部会での審議の結果、次のような
答申と建議を得ました。

（１）答　申

１　豚肉及び牛肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他経済事
　情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で安定価格を決めることは、や
　むを得ない。

２　肉用子牛の保証基準価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済
　事情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で決めることは、やむを得な
　い。合理化目標価格については、平成５年度につき試算に示された考え方で決め
　ることは、やむを得ない。

（２）建　議

１　牛肉の輸入自由化３年目を迎え、自由化後の情勢に適切に対処するため、長期
　的視点に立って我が国肉用牛生産の安定及び健全な発展が図られるよう、総合的
　に施策を推進するとともに、「新しい食料・農業・農村政策の方向」に立脚した
　畜産の生産振興及び経営の安定確立を期すること。
　
２　牛肉の輸入自由化による牛肉価格の低下に対処するため、引き続き肥育経営の
　安定緊急対策を講ずるとともに、肉用子牛の価格が合理化目標価格を下回って推
　移してることに伴う都道府県肉用子牛価格安定基金協会の借入金の償還円滑化対
　策を講ずること。

　　また、食肉の需給及び価格の安定に関する施策が適切に機能を発揮するよう措
　置すること。

３　肉用牛生産については、生産の基礎となる繁殖牛資源の確保、子牛生産拡大奨
　励措置、乳肉複合経営の推進、受精卵移植等畜産新技術の実用化及びその普及・
　定着等を積極的に進めること。

４　養豚経営の安定と発展を図るため、優良種豚の確保対策及び技術改善等による
　肉豚の生産性向上対策を推進するとともに組織的な生産活動の推進等による活性
　化対策を講ずること。

５　肉用牛及び養豚経営の体質を強化し、経営の安定を図るため、経営・財務・管
　理等に係る指導を強化するとともに、負債の借り替えに必要な資金の融通措置を
　講ずること。

　　また、家畜ふん尿等にかかる環境保全対策を積極的に推進すること。

６　生産者から消費者にいたる食肉の流通合理化・高度化を一層推進するため、産
　地段階から消費地段階を通じた施策の総合的な展開を図ること。

７　消費者意識の変化に対応するとともに健康の増進に資する観点から、食肉に関
　する表示の適正化、食肉に関する知識及び情報の提供、食肉消費の拡大等の施策
　を推進するとともに、食肉等の安全性の確保に努めること。とされました。


４　最終決定

　この答申及び建議を受けて、農林水産省は、政府諮問案どおりの指定食肉の安定
価格並びに肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格を決定し、あわせて次の畜
産物価格関連対策の実施を決定しました。

（１）生産対策
　　　低コスト生産推進対策　　（約14億円）
　　　肉用牛繁殖対策　　　　　（約13億円）
　　　養豚等体質強化特別対策　（約６億円）

（２）経営対策
　　　畜産経営安定対策　　　　（約181億円）
　　　畜産経営環境対策　　　　（約12億円）

（３）加工・流通・消費対策　　（約14億円）


５　おわりに

　牛肉が輸入自由化されて２年がたったが、関税率はさらに10％下り、50％となっ
たが、為替動向等、不確定要素が多く、今後とも各種要素の動向を注視しつつ適切
に対処するとともに、生産コストの低減に努めていく必要です。

　また、豚肉については、安定価格は据え置かれたが、牛肉同様、より一層の合理
化、生産性の向上に努めることが必要です。


平成５年度指定食肉安定価格並びに指定肉用子牛保証基準価格及び合理化目標価格総括表

１　指定食肉安定価格
　　　　　　　　　　　（単位：円／kg）

		安定上位価格	安定基準価格
平成4年度	去勢牛肉	1,210	935
平成4年度	豚肉	565	400
平成5年度	去勢牛肉	1,175	905
平成5年度	豚肉	565	400

２　指定肉用子牛保証基準価格及び合理化目標価格
　　　　　　　　　　　（単位：円／頭）

		安定上位価格	安定基準価格
平成4年度	黒毛和種及び褐毛和種	304,000	267,000
	その他の肉専用種	214,000	183,000
	乳用種	165,000	138,000
平成5年度	黒毛和種	304,000	267,000
	褐毛和種	280,000	246,000
	その他の肉専用種	211,000	173,000
	乳用種	164,000	134,000

合理化目標価格の適用期間

　今回の合理化目標価格の適用期間は、平成５年４月１日から平成６年３月31日ま
でとする。


Ⅱ　加工原料乳の保証価格等

　農林水産省は、「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」第11条の規定に基づき、
平成５年度の加工原料乳の保証価格及び基準取引価格、生産者補給交付金に係る加
工原料の最高限度として農林水産大臣が定める数量（限度数量）並びに指定乳製品
の安定指標価格を別表のように定め、３月31日付で告示（農林水産省告示第285号）
しました。以下、その内容等の概略です。


１　牛乳・乳製品の需給動向

　生乳の生産は、昭和62年度後半以降は前年度を上回る状況にあります。３年度は、
前半、前年の夏場の猛暑の後遺症等から伸び悩みましたが、夏以降は前年度を上回
って推移し（対前年度比1.7％増）、４年度に入っても、引き続き前年度を上回っ
て推移しています（４年４月～５年２月対前年同期比3.4％増）。一方、飲用牛乳
等の需要は、昭和62年度以降好調に推移し、２年度には、500万トンに達しました
（対前年度比2.7％増）。しかし、３年度は夏から秋にかけての天候不順等により
２年度を若干上回る水準となりました（対前年度比0.5％増）。４年度に入ってか
らも初夏までの天候不順に景気後退の影響等も加わり、前年度並で推移していると
ころです（４年４月～５年２月対前年同期比0.0％）。

　以上のような生乳生産と飲用需要との関係から、乳製品向け生乳処理量が４年度
に入り、大幅に増加し（４年４月～５年２月対前年同期比9.5％増）、特にこれま
で順調に消費が拡大してきたクリームの需要減少もあって、バターの生産が大幅に
増加しています。このような中で、乳製品の消費は、景気の後退等により停滞して
いるため、乳製品需給は最近に至りバターを中心に緩和傾向に転じています。


２　酪農経営の動向

　酪農経営の動向についてみると、飼養戸数は零細飼養層を中心に引き続き減少し
ています（４年５万５千戸、対前年比7.9％減）が、飼養規模の拡大は着実に進展
しています（全国平均３年34.6頭／戸→４年37.8頭／戸、北海道３年56.9頭／戸→
４年65.3頭／戸）。

　酪農経営の粗収入の大部分を占める生乳販売額は、飼養規模の拡大と１頭当たり
搾乳量の増加により年々増加しており、４年度においても順調に推移しているもの
と見込まれます。一方、酪農経営の副産物であるヌレ子価格は、62年度以降、２年
度はじめまで極めて高水準で推移していましたが、その後、牛肉の輸入自由化の影
響もあり、急落に低下しました。しかし、最近は北海道では４万円台で推移してい
ます。また、４年度においては、乳肉複合経営の進展がみられています。


３　加工原料乳保証価格等の算定

（１）加工原料乳保証価格

　加工原料乳の保証価格については、生乳の生産条件及び需給事情その他の経済事
情を考慮し、主要加工原料乳地域（生産される生乳の相当部分が加工原料乳である
と認められる地域：北海道）における生乳の再生産を確保することを旨とし、酪農
経営の合理化の促進に配慮して、価格決定年度における推定生産費を基礎として算
定します。具体的には、農林水産省の４年生乳生産費調査（調査期間３年９月～４
年８月）の北海道における生産費を基礎として、飼料費、建物等の物財費及び副産
物である子牛等については、原則として直近時点（４年11月～５年１月）における
物価水準に修正しました。また、飼育管理家族労働費については、北海道における
最近水準の製造業５人以上規模労賃に評価替えし、特に本年度においては飼料作物
家族労働費について農村雇用労賃による評価から毎月勤労統計の製造業等３業種の
５人～29人規模の労賃による評価に変更し、更に、生産者の生産性向上努力に配慮
し所要の乳量調整を行って５年度推定生産費を算定しました。この推定生産費に租
税公課諸負担、集送乳経費、販売手数料及び企画管理労働費を加算して試算値を算
定しました。

　この結果、試算値は75.75円／kgとなりましたが、個体価格の低下等の厳しい酪
農経営をめぐる環境を背景とした畜産振興審議会の答申をも踏まえ、５年度保証価
格は４年度保証価格を据え置く（76.75／kg）こととしました。

（２）安定指標価格

　指定乳製品（バター、脱脂粉乳、全脂加糖れん乳及び脱脂加糖れん乳）の安定指
標価格については、これら乳製品の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮
し、消費の安定に資することを旨として定めることとなっております。具体的には、
農林水産省畜産局の牛乳乳製品価格調査等に基づき、内外価格差の縮小、消費の安
定、生産性向上の成果を反映させるとの観点及び、バターと脱脂粉乳の需給バラン
ス及び価格動向を考慮し、算定しました。

　この結果、バターについては４年度比  ▲1.8％の1,032円、脱脂粉乳については、
４年度比＋1.4％の12,841円となり、全脂加糖れん乳及び脱脂加糖れん乳について
は、４年度の安定指標価格と同額になりました。

（３）基準取引価格

　基準取引価格は、主要な乳製品の製造業者販売価格から製造販売費用を控除して、
それぞれの乳製品の単位当たり支払可能乳代を算出し、それを生乳１kg当たり換算
したものを、それぞれの乳製品の生産量（生乳換算量）ウエイトにより加重平均し、
主要な乳製品を通ずる生乳１kg当たりの支払可能乳代として算定しました。

　この結果、基準取引価格は４年度比▲0.14円の65.26円となりました。

（４）限度数量

　限度数量は、生産者補給交付金の交付の対象となる加工原料乳の数量の最高限度
として定められる数量であり、生乳の生産事情、飲用牛乳及び乳製品の需給事情、
その他の経済事情を考慮して定めることとされています。

　具体的には、５年度の推定生乳生産量（8,835千トン）から推定自家消費量（114
千トン）、飲用等向け生乳消費量として見込まれる数量の中央値（5,214千トン）、
チーズ・クリーム等のその他乳製品向けとして見込まれる生乳消費量（773千トン）
及び要調整数量（生産の調整が必要と見込まれる数量で、推定生乳生産量のうち、
推定総消費量を上回る数量及び在庫の削減分として算定。384千トン）を控除して
算定しました。

　この結果、限度数量は４年度比  ▲５万トンの235万トンとなりました。


４　答申及び建議

　畜産振興審議会酪農部会においては、次のような答申及び建議がなされました。

（１）答　申

　保証価格等及び限度数量については、政府試算をやむを得ないとする意見と保証
価格を据置くべきである等の意見があったこと等審議の経過を踏まえ、生産条件、
需給事情、消費の動向その他の経済事情を考慮し、適正に決定すること。

（２）建　議

１．我が国酪農をめぐる現下の情勢にかんがみ、希望の持てる酪農経営の確立を目
　途として、長期的展望に立って我が国酪農の安定及び健全な発展を図ること。

　当面、

(1) 酪農経営の諸条件の著しい変化に対処し、酪農の生産性向上と経営の安定を図
　るための対策を緊急特別に実施すること。

(2) 飲用牛乳市場の正常化を図るため、生乳需給調整体制の強化に必要な対策を講
　ずること。

(3) 酪農の生産・生活環境の改善のため、環境保全に必要な対策を推進すること。

(4) 経産牛及び乳用初生牛の活用による乳肉複合経営を推進すること。

(5) ゆとりある酪農経営の実現を図るため、新搾乳システムの導入、酪農ヘルパー
　事業の普及等必要な対策を推進すること。

(6) 酪農経営の体質を強化し、経営の安定を図るため、経営・財務管理等に係る指
　導を強化するとともに、負債の借換えに必要な長期・低利資金の融通措置を講ず
　ること。

２．最近における消費の動向にかんがみ、牛乳・乳製品の消費拡大、牛乳販売店の
　活性化等を積極的に推進するとともに安全性の確保に留意すること。


　また、国産ナチュラルチーズの振興を引き続き図るとともに、牛乳・乳製品に係
る新技術の開発・導入及び新商品等を促進すること。

３．乳製品に関する国際協議においては、我が国の牛乳・乳製品の生産の健全な発
　展に悪影響を及ぼすことのないよう適切に対処すること。


５　最終決定

　農林水産省は、平成５年度の保証価格、安定指標価格、基準取引価格及び限度数
量について別表の通り３月31日に決定するとともに、併せて次のような畜産物関連
対策の実施を決定しました。

１　生産・経営対策
（１）酪農経営安定対策　　　　　　（約105億円）
（２）畜産経営環境対策　　　　　　（約12億円）

２　加工・流通・消費対策
（１）中小乳業の経営体質改善対策　（約２億円）
（２）飲用牛乳供給安定緊急特別対策（約７億円）
（３）牛乳乳製品消費拡大対策　　　（約17億円）

別　表

平成５年度加工原料乳保証価格等総括表

		4年度	5年度
保証価格		76.75円／kg	76.75円／kg(0.0％)
基準取引価格		65.40円／kg	65.26円／kg(-0.2％)
限度数量		240万トン	235万トン(-5万トン)
安全指標価格	バター	1,051円／kg	1,032円／kg(-1.8％)
	脱脂粉乳	12,663円／25kg	12,841円／25kg(+1.4％)
	全脂加糖れん乳	8,055円／24.5kg	8,055円／24.5kg(0.0％)
	脱脂加糖れん乳	7,193円／25.5kg	7,193円／25.5kg(0.0％)


Ⅲ　平成５年度畜産物価格決定に伴う関連対策の概要

　農林水産省は、平成５年度の畜産物行政価格等の決定を踏まえ、これらを補完す
るものとして、畜産振興事業団の指定助成対象事業である畜産物価格関連対策事業
の実施を決定しました。

　以下、事業の概要です。


食肉関係

１　生産対策

（１）　低コスト生産推進対策事業　1,395百万円
ア　肉用牛生産技術向上促進事業（継続）　552百万円

　効率的な肥育技術の普及定着化を図るための、情報の収集・分析・提供、技術者
の養成・確保、生産技術の実証展示等の実施

イ　肉用牛優良受精卵利用促進事業（継続）　255百万円

　優良受精卵の県内流通及び県域を越えた広域流通体制の整備、エンブリオバンク
の整備等の実施

ウ　粗飼料利用率向上緊急対策事業（継続）　588百万円

　ロールベールラップサイレージ等の耐天候型粗飼料収穫調整貯蔵技術の普及の実施

（２）　肉用牛繁殖対策事業　1,270百万円

ア　子牛生産拡大奨励事業（継続）　518百万円

　子牛価格低落時における繁殖雌牛の増頭、維持のための奨励金の交付

イ　肉用牛産地拡大推進事業（継続）　752百万円

　繁殖雌牛の増頭、双子生産等を行い、肉用牛生産基盤の拡大を行う集団に対する
助成金の交付

（３）　養豚体質強化特別対策事業　616百万円

ア　肉豚生産性向上特別対策事業（継続）　 　363百万円

　肉豚生産技術の分析及び指導情報の提供に加え、飼養管理技術分析ソフトの整備、
優良系統豚の緊急導入等の実施 

イ　養豚経営体質改善推進指導事業（拡充）　253百万円

　養豚経営安定推進会議を中心とした計画生産の推進、集団的な生産技術の改善活
動に加え養豚活性化のための集団活動に必要な飼養衛生管理等の施設・機械の整備


２　経営対策
（１）　畜産経営安定対策事業　18,078百万円

ア　畜産経営体質強化緊急特別指導事業（継続）　409百万円

　先進的な畜産経営技術等の普及啓蒙、経営・財務管理面の実践的な指導及び個別
 畜産経営の実態に応じた相談活動等の実施

イ　肉用牛肥育経営安定緊急対策事業（継続）　10,553百万円

　販売価格の低落等により、肥育牛１頭当たりの所得が家族労働費を下回った場合、
 肥育素牛の導入・育成等に要する経費の軽減のための助成金を交付（なお、所得が
 マイナスとなった場合には、緊急特別対策を実施）

ウ　大家畜経営活性化資金特別融通助成事業（新規）　2,405百万円

　既往借入資金及び後継者の経営継承後の負債の借換えに必要な長期低利資金の融
 通、保証保険基盤の拡充等の実施

・融資枠1,000億円（平成５年度～９年度）

・後継者経営継承円滑化資金：後継者の経営継承後の経営安定に必要な範囲で、負
 債を借換えるための資金を融通

償還期間25年以内（据置５年以内）　貸付利率年3.5％

・経営活性化資金：毎年の約定償還額のうち償還不能額の借換えのための資金を融
 通償還期間15（特認20）年以内（据置３年以内）　貸付利率年4.3（特認3.5）％


エ　養豚経営活性化資金特別融通助成事業（新規）　1,180百万円（既存基金で対応）

　既往借入資金及び後継者の経営継承後の負債の借換えに必要な長期低利資金の融
 通等の実施

・融通融資枠80億円（平成５年度～７年度）

・後継者の経営継承円滑化資金：大家畜経営活性化資金特別融通助成事業と同旨

 償還期間15年以内（据置５年以内）　貸付利率年3.5％

・経営活性化資金：大家畜経営活性化資金特別融通助成事業と同旨

 償還期間７（特認10）年以内（据置３年以内）　貸付利率年4.3（特認3.5）％

オ　肉用子牛生産者補給金制度運営円滑化緊急対策事業（新規）4,304百万円

　全国肉用子牛価格安定基金協会からの融資による生産者補給金の交付に伴う財源
 不足に対処するため、財源の緊急確保を実施

カ　地方特定品種緊急総合活性化対策事業（継続）　407百万円

　日本短角種等地方特定品種について、資質向上、子牛生産から肥育までの産直一
 貫生産体制の推進、牛肉の安定的な流通販売体制の整備等生産から流通・消費にわ
 たる総合的な対策を実施

（２）　酪農関係計上の共通事項　1,154百万円

　共通事項として、酪農関係の１の（２）の畜産経営環境対策事業の実施


３　加工・流通・消費対策
（１）　食肉流通消費合理化促進事業　1,433百万円

ア　総合食肉流通施設整備事業（継続）　1,010百万円

　産地における食肉流通施設、衛生処理施設、高品質加工処理施設の整備等の実施

イ　国産牛肉販売実態調査事業（新規）　31百万円

　枝肉価格の水準に見合った小売指標価格等の検討・設定、販売状況等の調査分析
 の実施

ウ　食肉消費改善総合対策事業（継続）　392百万円
  社会・生活構造の変化に対応した消費者の食肉動向の調査・分析、「食肉と健康
 フォーラム」開催等食肉知識の普及啓蒙等の実施 


酪農関係

１　生産･経営対策

（１）　酪農経営安定対策事業　10,539百万円

ア　酪農経営経産牛活用対策事業（継続）　2,388百万円
　モデル施設において経産牛肥育、双子生産に関する試験の実施及び酪農家による
 経産牛肥育や低能力乳用雌牛の繁殖利用を促進するための奨励金の交付

イ　乳肉複合経営体質強化事業（継続）　1,646百万円

　初生牛の自家哺育・育成・肥育を促進するための奨励金の交付

ウ　大家畜経営活性化資金特別融通助成事業（新規）　1,805百万円

　食肉関係の２の（１）のウと同じ

エ　酪農経営生産性向上等緊急特別対策事業（新規）　4,700百万円

　生乳需給の是正を図りつつ、一層の生産性向上と乳成分の跛行性の改善に取り組
 むことを奨励するため、平成５年度限りの緊急特別措置として実施し、加工原料
 乳の安定的供給を図る。

オ　優良初妊牛生産安定化対策事業（新規）　104百万円（既往基金で対応）

　生乳需給を踏まえた初妊牛需給計画の策定、これに基づき優良初妊牛生産ガイド
 ライン及び生産計画を作成し、生産農家に対する指導の実施

カ　生乳供給調整緊急推進事業（新規）　600百万円（既存基金で対応）

　加工原料乳向けの生乳供給の調整を確実に行うための緊急措置として、経営実態
 に応じて若齢搾乳牛の淘汰を促進し、生乳需給の均衡化を図る。

（２）　畜産経営環境対策事業　1,154百万円

ア　畜産環境保全緊急対策事業（新規）　1,059百万円

　家畜ふん尿処理に係る機械・施設の貸付け、家畜ふん尿処理技術に関する内外の
 研究成果の収集、民間における実用化技術開発への支援等の実施

イ　畜産環境美化運動推進事業（継続）　95百万円

　畜産環境美化運動を実施するモデル的な生産集団の取組みの支援、ゆたかな畜産
 の里づくり推進事業」の優良事例の紹介等に加え、フリーストール・パーラー方式
 のふん尿処理の検討 

（３）　食肉関係計上の共通事項　997百万円
　共通事項として、食肉関係の１の（１）のウ及び２の（１）のアの事業の実施

３　加工・流通・消費対策

（１）　中小乳業の経営体質改善対策事業　231百万円

　中小乳業総合体質改善事業（拡充）　231百万円

　中小乳業の体質改善を図るための乳業施設の整備、乳業経営体質改善計画に基づ
 く経営診断等の実施、新技術の開発・導入及び新商品開発の推進に加え、新たに具
 体的な経営改善方策、金融・税制対策等のガイドブックの作成

（２）　飲用牛乳供給安定緊急特別対策事業　707百万円

ア　飲用牛乳市場安定化対策事業（継続）　91百万円

　生産者団体等が行う飲用向け生乳流通の適正化促進、はっ酵乳等向け生乳取引の
 確認等に対する助成

イ　生乳需給調整体制強化対策事業（拡充）　506百万円

　余乳調整管理体制の整備、オンライン化した情報高度システムによる生乳出荷体
 制の整備、大消費地近郊に需給調整施設及び生産地域に余乳処理拠点施設の整備

ウ　牛乳販売店ニューショップ戦略総合推進事業（新規）　110百万円

　牛乳販売店の活性化を図るため、構造改善マニュアルの作成、経営管理研修、環
 境問題（フロン規制）に配慮しした代替冷媒対応型冷蔵施設の貸付

（３）　牛乳乳製品消費拡大対策事業（拡充）　1,673百万円

　牛乳乳製品の商品情報の提供、医療保健関係者等の協力による牛乳乳製品と健康
に関する正しい知識の普及、フェア・料理講習会の開催、幼稚園・老人ホーム等で
の牛乳の集団飲用の促進、学校給食での牛乳の飲用促進等に加え、新たに乳脂肪の
消費拡大手法の検討、業務用乳製品ユーザ向けの知識普及等の実施

　以上が平成５年度の価格関連対策事業の概要ですが、これら事業の内容を十分に
検討の上、ご活用頂くことを期待しています。

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