★ 事業団便り


都城の肉用牛生産地を訪ねて


 10月25日から3日間、高千穂商科大学の梅沢昌太郎助教授の調査に同行する機会を得ました。その際現地で見聞きしたことをいくつか報告します。
 今回訪れた都城市は、日本でも有数の畜産県である宮崎県南西部に位置する人口
約十万の都市で、島津家発祥の地として知られています。また、鹿児島との県境に
つらなる霧島連山の美しさは有名で、特に夕日に映える連山の情景は感動に値する
ほど素晴らしいものがあります。

 こうした都城において、畜産は農業粗生産額の約7割を占める主軸となっており、
子牛、肉牛、肉豚などの販売が大きな位置を占めています。牛肉については、都城
牛というブランドを確立すべく、地元での直販(地元で生産された牛肉は、どこで
買えるのかとの消費者の声に応えたそうです)、大消費地にある卸売市場への出荷、
関西地区の小売店での販売、新聞広告などの販促が実施されています。

 都城では、生産者の皆さんが部会の活動を中心に飼養方法等について熱心に勉強
され、特に肥育部門では若手の指導にもとても熱心だということを伺いました。都
城滞在中に開かれた宮崎県の畜産共進会で都城農協が団体別部門で優勝したのも、
こうした努力の結果だったのではないかと思います。共進会では活気のあふれる雰
囲気の中、枝肉のせり取り引きが行われ、グランドチャンピオンになった枝肉はs
当り単価7,510円で落札されました。

 いうまでもなく、こういう超高級な牛肉を除き牛肉価格は低迷しており、数戸の
肉牛生産農家を訪問させていただいた時も、価格の高かった時に導入した牛が今出
荷されているので、とても厳しい状況にあるとの声を多く聞きました。また、子牛
価格が高かったため、導入素牛のレベルを下げたことにより、A−5の出る割合が減
り、収入減に拍車がかかったという話しもよく聞きました。投資時と実際に販売し
収入を得るまでの時差の長い肉牛経営の難しさを痛感します。

 しかし、こうした厳しい環境の中でも、都城の方々は一般に明るく元気で、力強
いものを感じました。経済活動の源は何といっても活力(元気)だと思います。偶
然かもしれませんが、都城のパンフレットには人、まち、自然の元気づくりをすす
めているとありました。

 農業の後継者問題というのは、どこも深刻なものがあると思いますが、都城では
農業の中核を担う人材を育てるユニークな試みとして「若い農業者就農促進事業」
が行われています。この事業は、将来園芸作物の生産農家としての自立を希望する
若者を対象に実務研修等を実施するもので、希望者は農協の常傭職員として採用さ
れます。2年間は一定の給与を支給されるそうで、現在3名の方が参加されていま
す。都会生活者の農業への関心が高まっていることもあり、この元気づくりが是非
ともうまくいって欲しいと思います。

(企画情報部 樋口英俊)


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