最近の外食産業の動向について

−弁当・惣菜産業定点調査を中心として−

食肉生産流通部


 このたび畜産振興事業団では、(財)外食産業総合調査研究センターの協力を得
て、外食産業の中でも景気の低迷期にあって伸びが著しいといわれる弁当・惣菜
業界(10企業程度を対象)を中心にその動向について聞き取り調査を実施しとり
まとめました。もとより本調査は、弁当・惣菜業界の定点での動向を紹介するの
みであり、業界の全容を明示するものではないことをお断りしておく次第であり
ます。


外食産業は景気低迷で経営悪化

 わが国の外食産業は、平成に入ってから従来とは異なる動きを見せてきた。こ
れまで着実に伸びてきた入店客数が頭打ちとなり、その後、景気が低迷したこと
も加わり、外食産業を代表する飲食店は売上高、客単価、入店客数のいずれをと
っても対前年同月比でマイナスに転じるところが増え、そのマイナス幅は、月を
追うごとに拡大する傾向がみられ、今日に至っている。

 これまで、日本の外食産業は、景気の良し悪しに関係なく、確実に市場を拡大
してきた。そうした成長性は異業種産業にとっても魅力であり、参入障壁も低い
こともあって新規参入が相次いだという。市場規模の安定した同産業の背景には
こうした事情もある。

 ただ、ここ5〜6年の間に、外食産業の動向は景気の動向にかなり左右される
ようになりつつある。例えば、(財)外食産業総合調査研究センタ−が毎月実施し
ている「月次売上動向調査」によると、調査の対象とした飲食店での動向は、経
済企画庁が発表している景気動向指数(30指標)のうち、景気の浮き沈みに6カ
月程度遅れて反応する「遅行系列」指標の動きとリンクした動きをみせている。
この遅行系列指標の中には、百貨店の売上げ動向などが含まれており、このよう
な景気の動向とリンクする度合いが高まってきていることは、次第に日本の外食
市場も成熟化の域に到達しつつあることを意味している。

 一方、こうした外食産業が低迷する中にあって、弁当・惣菜産業の売上げは確
実に伸長してきている。これらの中には、コンビニエンスストア、あるいはス−
パ−マ−ケットにおける弁当・惣菜類の売上げ、百貨店の惣菜売場での売上げな
どが含まれ、「中食なかしょく産業」とよばれている。この業種についてはまだ
明確な定義はないものの、約4兆6千億円の市場規模といわれている。景気低迷
の中、外食産業の客が、弁当・惣菜産業に流れる現象がみられ、今後も同産業の
動向が注目されるところである。


伸長が目立つ弁当・惣菜産業

 以下、飲食店と弁当・惣菜業の動向を食肉の種類別にみていくことにする。

(1) 牛 肉

@ 弁当・惣菜業での購入量は増減幅が大きく振れてはいるが、基調としてはプ
 ラスであり、そのプラス幅もかなり大きい。7月期にマイナス(前年同月比、
 以下同じ)となったが、これは豚肉の仕入れが伸長した中で牛肉(バラ肉中心
 の仕入れ)が押されたものである。

A 他方、飲食店での購入量はマイナス幅が拡大の傾向にある。飲食店のうち、
 ホテルではサ−ロイン・ヒレが仕入れの中心であり、景気低迷以降、需要が依
 然回復しておらず、また、牛丼店では、特盛り需要の一巡でその伸びが懸念さ
 れたが、ほぼ前年並みと見込まれる。

  そのほか、しゃぶしゃぶ店、居酒屋・ビアホ−ル、事業所給食では10月期で
 マイナス、焼き肉店、ファミリ−レストラン、中華料理店、ファ−ストフ−ド
 店ではプラスで推移しているが、この背景には輸入牛肉を使ったステ−キフェ
 アや新規メニュ−の開拓などが要因としてあげられている。

(2) 豚 肉

@ 弁当・惣菜業では豚肉を使ったメニュ−を普段より多めにした結果、豚肉の
 購入量は10月期で大幅に伸長し206%であった。4月期から200パーセント台の
 伸びをみせており、いかに多くの豚肉を使ったメニューが採用されているかが
 うかがえる。

A 他方、飲食店での購入量は全体ではやや上向きつつあるが、いまだ低迷して
 いる。豚肉の購入量が伸長しているのは、飲食店のうち、ファ−ストフ−ド店、
 中華料理店、居酒屋・ビアホ−ル、焼き肉店などである。一方、仕入れが伸び
 悩んでいる業種としては、事業所給食、ファミリ−レストラン、トンカツ店、
 ホテルなどがあげられる。

(3) 鶏 肉

@ 弁当・惣菜産業での10月期の鶏肉の購入量は134%と、プラス幅は減少して
 はいるが、相変わらず鶏肉に対する需要が堅調であることがうかがえる。

A 他方、飲食店での購入量は全体では相変わらずマイナスで推移している。鶏
 肉の仕入れが伸長しているのは、飲食店のうち、事業所給食、居酒屋・ビアホ
 −ル、中華料理店、トンカツ店、ファミリ−レストランなどでマイナスであっ
 たのは、ホテル、ファ−ストフ−ド店、牛丼店、焼き肉店などであった。

(4) 挽き肉

@ 弁当・惣菜業における挽き肉の利用は拡大している。

A 他方、飲食店での購入量は大幅なマイナスに転じてきていることが注目され
 る。ここでの利用の多くはファ−ストフ−ド店でのハンバ−ガ−パティ及び一
 般飲食店でのハンバーグであるが、新開発商品に押されて伸び悩んでいる状況
 にある。


弁当・惣菜の仕入量の推移
(前年同月を100としたときの各月の比率)
                 (単位:%)
  5年1月 4月 7月 10月
牛肉 140 181 73 121
豚肉 192 224 280 206
鶏肉 249 525 263 134
挽肉 120 211 203 155
 

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