最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参考  
資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節調整  
は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔牛  肉〕
大幅に増加した推定期末在庫
6年3月の推定出回り量 (消費量) は、 輸入品の出回り量が前年を大幅に上回り、
全体でも8万2千713トンと前年を大幅に上回った (15. 6%、 図1)。 
3月末の推定在庫は、 需要を上回る輸入量により8万6千663トン (68. 2%) と
なった。内訳をみると国産品はほぼ前月並みであったが、 輸入量が大幅に増加した
こと等により、輸入品は前月より約9千トン増の7万6千193トンとなった(図2)。
 
5年度の牛肉生産量はほぼ前年並み
3月の牛肉生産量は、 3万4千51トン (▲2. 8%) とわずかに減少した。 なお、5
年度累計では、 41万5千434トン (▲0. 3%) とほぼ前年並みとなった (図3)。 
3月のと畜頭数を種類別で見ると、 去勢和牛はやや増加し、 めす和牛は和子牛価格、 
特にめす子牛価格が引き続き低下していること等によりかなり増加した。 その結果、 
和牛計は4万7千362頭と前年をかなり上回った (7. 0%)。 
一方、 乳牛は乳めす牛がやや減少し、 乳用肥育おす牛がかなり減少したことから乳
牛計で7万2千370頭と前年をかなり下回った (▲7. 3%)。その結果、 成牛全体で
は12万2千582頭と前年をわずかに下回った (▲1. 9%)。
 

大幅に増加した3月の輸入量

3月の輸入量は、6年度の関税率が据え置かれたため、 前年度までみられたような
3月中の輸入を手控える動きがみられず、 冷蔵品3万1千355トン、 冷凍品2万5
千261トン、 その他 (煮沸肉、 ほほ肉、 頭肉)165トン、 合計5万6千780トンと大
幅に増加した (図4)。 
事業団の独自の調査による4月の輸入見込数量は、 冷蔵品2万3千トン、 冷凍品1
万5千トン、 合計約3万7千トン前後と見込まれ、 また、 5月については、4月よ
りも減少し、 3万5千トン前後 (冷蔵品2万1千トン、 冷凍品1万4千トン)にな
るものと見込まれている。 
 

枝肉卸売価格は堅調で推移

3月の省令価格(東京市場、 以下同じ)は、 1,030円/kgと前年をやや上回った(5.2
%、 図5)。 4月の価格 (速報値、 瑕疵のある枝肉を除く) は、1,008円/kgと前月
をわずかに下回っている。 
4月の和牛の主要クラスの価格は、 和去勢 「A−5」 が平均で2, 611円と前月に引
き続き2, 600円台となった。 また和去勢 「A−4」 は、 月間の平均価格は1,958円
となったが中旬から下旬にかけて2, 000円台を超える日が多かった。 
一方、 3月から4月上期にかけての輸入牛肉価格 (国内仲間相場) は、 北米産冷蔵
品が総じて前月並み、 同冷凍品がロイン系を除き前月並みか値を下げている。 豪州
産については、 冷蔵品のフルセット、 冷凍品のチャックアンドブレード等が値を下
げたが、 その下げ幅は輸入量の大幅増加にもかかわらず小さかった。 
 
 〔肉用子牛〕
心配な4月の黒毛和種の取引価格
3月の黒毛和種の子牛取引頭数は、 4万4千頭で前年をやや下回り、 取引価格は雌
雄平均で前月を2千円上回る32万4千円/頭となった。 4月の速報値(4月30日現
在。 以下この項で同じ) では、雌26万1千円/頭、雄35万4千円/頭、平均31万2千
円/頭と昨年の6、7月頃の低水準となっている (図6)。 
 
 
2カ月連続で8万円を下回った乳子牛の価格
3月の乳用種の子牛取引頭数は、 3千955頭で前月を573頭上回った。 取引価格は雄
子牛が8万2千円と先月より8千円値を下げ、 雌雄平均でも7万6千円/頭とかな
り値を下げた。 4月の速報値では、 雌雄とも引き続き軟調であり平均7万3千円/
頭と3月に引続き価格を下げている。 3月の乳用種のヌレ子の価格は5万4千円/
頭と5万円台を回復し、 4月の速報値も同水準で推移している (図7)。 
  
 今月のトピックス
5年度の推定出回り量は11. 4%の増
5年度の総輸入数量は、 約56万7千トン (33. 9%) と大幅に増加した。 国別の内
訳をみると、 豪州が約30万2千トン(シェア53. 2%)、 米国が約24万3千トン(同42. 
9%) となっており、 両国で総輸入量の96. 1%を占めた (図8)。
また、 5年度の推定出回り量は輸入量の増加もあり94万7千トン (11. 4%) と前年
を10万トン強上回った。 輸入品は約53万3千トンと前年度を10万トン以上上回った。 
このため輸入品のシェアは、 50. 7%から56. 2%と更に伸びた。 
 
 〔豚  肉〕 
減少傾向で推移する生産量
6年3月の国内生産量は、 8万6千601トンと前年をわずかに下回った(▲0.6%)も
のの、 5年度累計では100万5千269トンと前年をわずかに上回った (0.6%、図1)。
農林水産省畜産局によると、 4月の肉豚出荷頭数 (概数) は前年をやや下回る157万
7千頭 (▲3. 0%)、 5月は前年をかなり下回る148万6千頭 (▲6. 0%)とし、生産
量は減少傾向で推移すると見込まれている。 
 
5年度輸入量はチルドの割合がさらにアップ
3月の輸入量は、 3万7千534トンとなり、 年度計では45万4千863トンと前年度を
わずかに下回った (▲2. 6%)。 ただし、 内訳をみてみるとフローズンが前年をや
や下回ったのに対し (▲5. 7%)、 チルドが12万2千トンと前年をかなり上回り(7.
0%)、 輸入総量に占める割合も26.8%とさらに上昇しており、 ユーザーのチルドへ
の傾斜がみられる。国別にみると、 トップの台湾 (シェア44. 6%)、2位のデンマー
ク (同29. 2%) はそれぞれ数量を減らしたものの、 チルドが主体の3位の米国(同
14. 9%) は逆に輸入量を増やしている。
 
前年度をわずかに下回る推定出回り量
3月の推定出回り量 (消費量、部分肉ベース) は、国産品が堅調であったものの、 輸
入品が前年をやや下回ったため、 12万3千624トンと前年をわずかに下回った(▲0.
8%)。年度計でも輸入品の減少を受け、145万5千585トンと前年をわずかに下回った
(▲0. 4%)。
 
低水準が続く卸売価格
4月の枝肉卸売価格 (速報値、 東京市場、 省令) は、 大型連休前の手当による需要
の盛り上がりは見られず、末端需要は引続き弱く3月より11円/kg値を下げて、438円
/kg (▲2. 4%) となった。 
畜産局によると、 5月の卸売価格 (東京・大阪市場、省令)は、 肉豚出荷頭数が前月
を下回ると見込まれ、 また、 季節的消費動向等からみて、4月を上回る水準で推移す
るものと見込まれている。
 
 今月のトピックス
肉豚生産出荷予測 ― 対前年比で減少続く
農林水産省畜産局が4月22日に公表した今後6か月間の肉豚生産出荷予測によると、 
対前年比でみて5月の2%増を除き各月とも1〜3%減少すると予測している。 
特に夏場の7月、 8月がそれぞれ2%減、 9月は3%減と今後しばらく生産量は減
少傾向で推移するとしている。 
また、 4月28日公表の畜産統計によると6年2月1日の子取り用めす豚の飼養頭数
は引続き減少している (▲3. 3%)。
   〔鶏  肉〕
5年度の生産量は前年より減少
6年3月の生産量は、 10万7千49トン (農林水産省食肉鶏卵課推計) と前年をやや
下回った (▲5. 6%)。 生産量を季節調整済み値でみると、 昨年の夏以降、減少傾向
で推移している (図1)。  また、 農林水産省統計情報部によると、4月、 5月、 6
月のブロイラー用ひな出荷羽数は、 それぞれ対前年比で96%、94%、96%といずれも
前年を下回ると見込まれている。 
5年度の生産量は、 卸売価格の低迷等から前年をわずかに下回った (▲1. 2%)。 
 
タイ産が減少する一方、 中国産が増加した5年度の輸入量
3月のブロイラー等の輸入量は、 3万841トンとほぼ前年並みであった。鶏肉の輸入
量は、 61年度以降、 円高の進行による輸入価格の低下等から増加傾向で推移してい
たが、 5年度は高水準な在庫、 外食産業の伸び悩み等から前年をやや下回った (▲
2. 1%)。また、 国別のブロイラー輸入量をみると、 割高感のあるタイ産が減少する
一方、 安価な中国産が現地工場が稼働したこと等により増加した (図2)。 
 
前年を下回った期末在庫
3月の推定出回り量 (消費量) は、 前年をわずかに下回る14万2千181トンであった
(▲1. 4%)。5年度の消費量は、 家計消費がほぼ前年並み、 加工品仕向量が前年を上
回ったものの、 景気の低迷等から業務用需要が減少したことからほぼ前年並みとなっ
た (図3)。 しかしながら、 生産量、 輸入量ともに前年を下回ったことから、 3月末
の在庫量は前年を下回った (▲4. 6%)。 
 
堅調なもも肉の卸売価格
3月のもも肉、 むね肉の卸売価格 (東京) は、 それぞれ557円/kg (7. 7%)、 294円
/kg (▲5. 8%) となった。 5月に入っての価格も (農林水産省 「畜産物市況速報」、
10日現在)、 もも肉605円/kg、 むね肉339円/■と、 特に需要の多いもも肉が堅調に
推移している。 しかし、 季節調整済み値でみると、在庫が多く価格が低迷していたむね
肉もここにきて回復基調にある (図4)。 


 今月のトピックス
これからは 「チキン」 と呼んで下さい
(社)日本食鳥協会は、 「肉用若どり」 についての 「ブロイラー」 という呼称を改め、
「チキン」を極力使用することとした。 「ブロイラー」 とは、 アメリカで生体重量1.5〜
1. 8kgの小型の若どりについて、 その調理用途が主として 「ブロイル (あぶり焼き)
 」 であることから使用されている。 我が国では生体重量が2. 5〜3. 0kgでアメリカ
より大型であり、 調理用途もあぶり焼きにはほとんど使用されていないこと、近年我
が国でも銘柄どりがいろいろ生産されて国産鶏肉の高品質化が進む中で、 「ブロイラ
ー」 という呼称では 「歯ごたえがなく、水っぽい」 という消費者のイメージが強いこ
となどが名称変更の理由のようだ。
〔牛乳・乳製品〕
5年度生産量は前年を下回る
6年3月の生乳生産量は、 計画生産の浸透により、 71万6千632トンと引き続き前年
をやや下回った (▲4. 4%)。 5年度でみると854万9千892トンと前年度をわずかに
下回っただけであるが、 指定生乳生産者団体による計画生産は達成された模様である
 (▲0. 8%、 図1)。 

 
かなり大きく下回る乳製品向け処理量
3月の飲用牛乳向け処理量は、 41万50トンと前年並みとなり (▲0. 1%)、5年度で
みると503万7千21トンと前年度をわずかに下回った (▲1. 5%、 図2)。 3月の乳
製品向け処理量は、 飲用牛乳等向け処理量が前年並みであったが、 生乳生産量が減
少していることから、 28万9千817トンと前年をかなり大きく下回った(▲12. 0%)。 
しかし、 5年度でみると338万2千321トンとほぼ前年並みとなっている。 
 
脱脂粉乳、 バターの生産量はかなり大きく下回る
3月のバター生産量は、 8千795トンと引き続き前年をかなり大きく下回った(▲14.
0%、 図3)。 一方、 脱脂粉乳の生産量も1万8千17トンと前年をかなり大きく下回
った (▲14. 4%)。 また、 価格をみてみると、 バターは低下傾向、 脱脂粉乳は横ば
いで推移している (図4)。 
 
 今月のトピックス
アイスクリームの日
明治2年5月9日、 町田房蔵氏が横浜の馬車道で 「あいすくりん」 を販売したのが、 
日本のアイスクリームの始まりである。 (社)日本アイスクリーム協会は、 これを記
念して5月9日を「アイスクリームの日」とし、 その日に一番近い日曜日に東京・銀 
座で一万個のアイスクリームをプレゼントしている。 今年は5月8日となったが、  
天候に恵まれ、 1時間半ほどでアイスクリームはなくなった。 最近、 アイスクリー 
ム業界は、 消費者のニーズ (価格・量) に合わせて多様な新製品を出して拡販の努 
力をしているが、 このようなイベントで、 さらに需要が増えることを期待したいも 
のである。 
 
  〔鶏  卵〕 

採卵鶏の飼養農家はかなり減少したが、 羽数は前年並み

6年2月1日現在における採卵鶏 (成鶏めす) の飼養戸数は、 鶏卵価格の低迷等に
より小・中規模層を中心に飼養中止があったことから前年よりかなり減少したもの
の(▲7. 5%)、飼養羽数は大規模層で規模拡大が進んだために前年並みとなった(図
1)。このため、一戸当たりの飼養羽数は、 前年の1万7千500羽から1万8千800羽
と一層規模拡大が進んだ。 
4か月ぶりに前年を上回ったえ付け羽数
3月の採卵用ひなえ付け羽数は、 4か月ぶりに前年を上回った(1. 1%)。卵価が今
年に入ってから値を戻していることから、 大手業者を中心に増産しているようだ。
しかしながら、 え付け羽数を季節調整済み値でみると、 昨年秋以降、 減産傾向で
推移している (図2)。 農林水産省統計情報部によると、 4、 5、 6月はそれぞれ
91%、 96%、 98%と見込まれている。なお、 3月の主要都市の鶏卵市場における入
荷量は、3万4千528トンと前年をかなり下回った (▲7. 5%)。 
 
回復基調にあった卸売価格も4月に大幅反落
3月の卸売価格 (東京平均) は、 行楽シーズンに入ったことによる春需もあり、2
月より11円値を上げて200円/kgとなった (33. 3%)。卸売価格を季節調整済み値
でみると、 強制換羽や減羽による減産から、 今年に入り回復基調で推移していた 
(図3)。 
しかしながら、 4月の卸売価格 (全農東京M規格の平均価格) は、 前月より50円/
kgも安い166円/kg(速報値)と大幅に下落した。 5月12日現在では、143円/kgとさ
らに下落している。  依然、 業務・加工用を中心に需要は低迷していることから、今
後、 増産の動きが広がれば再び卵価低迷が心配される。 


 今月のトピックス
流通の変革
  流通業界は、 今や「第4次流通革命」といわれている。 量販店が力をつけて値引き
要請が強くなったことにより、 メーカー主導の建値制度が崩れオープン価格になり
つつある中で、 卸売業者もコスト競争に無縁でなくなった。 一方、 5年度の主要都
市の鶏卵市場における卸売状況をみると、 問屋が6割強を占めて最も多く、 加工業
者、 デパート・スーパーマーケットがそれぞれ1割となっている (図4)。流通革命
の波は今後、 鶏卵流通にも影響を与えるのだろうか。 
 

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