豚枝肉取引規格と格付結果について

           (社)日本食肉格付協会 規格一課長  油上 晋


は じ め に

  豚枝肉取引規格は、 全国を統一した共通の規格として、 食肉流通の近代化と合理
化を図るため昭和36年10月に設定され、 37年3月から食肉中央卸売市場において規
格格付が開始された。 引き続いて食肉地方卸売市場、 産地食肉センター等において
も規格格付が開始され、 全国的に規格取引の推進が図られてきた。 


1. 豚枝肉取引規格
 
  豚枝肉取引規格は、 昭和36年に設定されて以来、 豚の大型種の台頭など、 肉豚の
生産・流通の両構造変化、 特に枝肉の大型化に伴う枝肉の評価条件の変化に対応す
るため、 専門委員会で検討を重ね、 過去4回の規格改正 (改正の内容は主として枝
肉重量と背脂肪の厚さの範囲の改正) を経て現在に至っている。 
 
  現行の規格は平成元年3月改正、 4月より実施されているが、 この規格は表1の
豚枝肉取引規格 (規格本文及び枝肉半丸重量と背脂肪の厚さによる等級の判定表)
と表2の適用条件とで構成されている。 (解体整形方法は略) 


2. 格付の方法と等級判定

  豚枝肉の格付は、 まず、 半丸重量と背脂肪の厚さによる等級の判定表によって該
当する等級を判定し、 次いで外観と肉質の各項の条件によって等級を決定する。 
 
  つまり、 @枝肉重量と背脂肪の厚さ、 A外観 (均称、 肉づき、 脂肪付着、 仕上げ
の4項目)、 B肉質 (肉の締まり及びきめ、 肉の色沢、 脂肪の色沢と質、 脂肪の沈
着の4項目) の3者いずれもがその等級の条件を満たしていて、 はじめてその等級
に格付される。 
 

<表1:豚枝肉取引規格>
等級 重量及び厚さの範囲(半丸) 外観 肉質
均称 肉づき 脂肪付着 仕上げ 肉の締まり及びきめ 肉の色沢 脂肪の色沢と質 脂肪の沈着
極上 皮はぎ32kg以上37kg以下、湯はぎ35kg以上40kg以下(背脂肪の厚さの区分は別記2による。)

 

長さ、広さが適当で厚く、もも、ロース、ばら、かたの各部がよく充実して、釣合の特に良いもの 厚くなめらかで、肉づきが特に良く、枝肉に対する赤肉の割合が脂肪と骨よりも多いもの 背脂肪及び腹部脂肪の付着が適度のもの 放血が十分で、疾病などによる損傷がなく、取扱の不適による汚染、損傷などの欠点のないもの 締まりは特に良く、きめが細かいもの 肉色は淡灰紅色で、鮮明であり、光沢の良いもの 色白く、光沢があり、締り、粘りともに特に良いもの 適度のもの

 

皮はぎ31kg以上39kg以下

油はぎ34kg以上45kg以下

(同上)

 

長さ、広さが適当で厚く、もも、ロース、ばら、かたの各部が充実して、釣合の良いもの 厚く、なめらかで肉づきが良く、枝肉に対する赤肉の割合が、おおむね脂肪と骨よりも多いもの 背脂肪及び腹部脂肪の付着が適度のもの 放血が十分で、疾病などによる損傷がなく、取扱の不適による汚染、損傷などの欠点のないもの 締まりは良く、きめが細かいもの 肉色は淡灰紅色で又はそれに近く、鮮明で光沢の良いもの 色白く、光沢があり、締り、粘りともに良いもの 適度のもの
皮はぎ29kg以上42kg以下

油はぎ32kg以上45kg以下

(同上)

 

長さ、広さ、厚さ、全体の形、各部の釣合において、いずれにも優れたところがなく、また大きな欠点のないもの 特に優れたところもなく、赤肉の発達も普通で、大きな欠点のないもの 背脂肪及び腹部脂肪の付着に大きな欠点のないもの 放血普通で、疾病などによる損傷が少なく、取扱の不適による汚染、損傷などの大きな欠点のないもの 締まり、きめともに大きな欠点のないもの 肉食、光沢ともに特に大きな欠点のないもの 色沢普通のもので、締まり、粘りともに大きな欠点のないもの 普通のもの
皮はぎ29kg未満42kg超過

油はぎ32kg未満45kg超過

(同上)

 

全体の形、各部の釣合ともに欠点の多いもの 薄く、付着状態が悪く、赤肉の割合が劣っているもの 背脂肪及び腹部脂肪の付着に欠点の認められるもの 放血がやや不十分で、多少の損傷があり、取扱の不適による汚染などの欠点の認められるもの 締まり、きめともに欠点のあるもの 肉食は、かなり濃いか又は過度に淡く、光沢の良くないもの やや異色があり、光沢も不十分で、締まり粘りともに十分でないもの 過少か又は過多のもの
等外

(1)以上の等級のいずれにも該当しないもの

(2)外観又は肉質の特に悪いもの

(3)黄豚又は脂肪の質の特に悪いもの

(4)牡臭その他異臭のあるもの

(5)衛生検査による割除部の多いもの

(6)著しく汚染されているもの

<表3 豚枝肉取引規格の適用条件>  
    
   1.この規格は、別記1(略)に定める解体整形方法によって整形した皮はぎ、湯はぎの冷却枝肉   又は温枝肉の両者を対象とする。 
  
   2.この規格は、品種、年令、性別の如何にかかわらず適用する。 
  
   3.この規格による背脂肪の厚さは、第9〜第13胸椎関節部直上における背脂肪の薄い部位の厚さとする。   

   4.この規格の適用については、半丸重量と背脂肪の厚さ、外観、肉質の3者について、 その等級の条件を同時に具備しているものを当該等級に格付する。格付に当たっては、まず、半丸重量と背脂肪の厚さによる等級の判定表によって該当する等級を判定   し、次いで外観と肉質の各項の条件によって等級を決定する。      

 
3. 格付条件

(1)格付場所
    
   格付は、 5年12月現在、 127ヵ所で行っており、 全国の一般と畜場 (厚生省調べ356
    ヵ所) の35. 7%を占めている。 なお、 年間10万頭以上の格付場所は43ヵ所で格付頭
    数全体の73%を占めている。 

(2)格付頭数及び格付率
    
   2〜4年の格付頭数はと畜頭数の減少の影響を受け減少し続けたが、 5年は、 前年
    より1. 8%増加した。 なお、 格付率は年々増加している。 

 <表4:格付頭数及び格付率の推移>                単位:頭、%
    年次
区分
平成元年 2年 3年 4年 5年
格付頭数 11,035,918.5 10,959,627 10,541,392 10,308,604 10,492,017
と畜頭数 21,416,952 20,910,170 19,829,262 19,130,950 19,152,304
格付率 51.5 52.4 53.2 53.9 54.8
(3)格付結果
    
    格付割合を各等級別にみると、 「極上」 は殆ど不変であるが、 「上」 規格は
    増加、 また、 「中」、 「並」 規格は減少してきた。 5年の格付割合は4年と
    同じ割合であった。 

 
 <表5: 格付結果の推移>                     単位:頭、%
年次
      等級
格付頭数
極上

     %

         %

        %

        %

等外

       %

11,035,918.5 100.0 29,888 0.3 4,657,928.5 42.2 4,057,045 36.8 1,602,200.5 14.5 688,856.5 6.2
10,959,627 100.0 34,355 0.3 4,733,960 43.2 3,963,862.5 36.2 1,553,720 14.2 673,729.5 6.1
10,541,392 100.0 31,844 0.3 4,672,053 44.3 3,728,304.5 35.4 1,464,080.5 13.9 645,110 6.1
10,308,604 100.0 34,441 0.3 4,673,269 45.4 3,558,445 34.5 1,420,862 13.8 621,587 6.0
10,492,017 100.0 34,718 0.3 4,757,962.5 45.4 3,589,896 34.2 1,474,080 14.0 635,360.5 6.1
 以下については、毎月第2〜3週に格付を行った枝肉を調査したもので、5年の
 調査頭数は3,950,576.5頭(調査率37.7%)であった。
 
 <表6: 調査頭数の等級別内訳>  単位:頭、%
年次
   等級
調査頭数
極上 等外
5年 3,950,576.5 0.3 45.7 34.5 13.9 6.1 100.0
4年 3,736,047.5 0.3 45.4 34.5 13.7 6.1 100.0
 @「上」の重量範囲における等級別内訳
 調査頭数のうち、枝肉重量が「上」の重量範囲内(皮はぎ62kg以上78kg以下、
  湯はぎ68kg以上84kg以下)のものは83.0%を占め(表8参照)、その等級ごと  
  の合計は表7のとおりであり、調査頭数全体の「上」以上の割合に比べ概ね  
  10ポイント高くなっている。


<表7: 「上」の重量範囲における調査頭数の等級別内訳>  単位:頭、%
年次
   等級
調査頭数
極上 等外
5年 3,227,815.5 0.4 55.1 31.5 10.9 2.1 100.0
4年 3,099,172.5 0.4 54.8 32.3 10.6 2.0 100.0
@等級別重量分布割合
  等級別の重量分布割合は表8のとおりである。
  「上」の重量範囲の割合を地域別にみると、九州(86.7%)、四国(86.5%)
   北海道(84.7%)、東北、中国(各83.2%)の各地域で全国平均(83.0%)
   に比べ高くなっている。
   また、「上」の下限重量に満たないものの割合は、沖縄(16.7%)、北海道
   (7.2%)、九州(6.3%)の各地域が全国平均(5.0%)に比べて高く、「上」
  の上限重量を超えたものの割合は、近畿(19.2%)、関東(16.8%)、東海・北
  陸(14.6%)、中国(13.3%)、東北(12.7%)
   の各地域が全国平均(12.0%)に比べて高くなっている。
<表8: 等級別重量分布割合>                単位:頭、%
     重量
 区分
58未満
(64未満)
58〜61.9
以上 以下
(64〜67.9)
58〜61.9
(68〜71.9)
74〜78
(80〜84)
78.1〜84
(84.1〜90)
84超過
(90超過)
調査頭数
全国
極上

    

    
0.3
90.4
9.3

    

    
100.0
13,089(0.3)

    

    
7.4
64.4
28.2

    

    
100.0
1,805,727.5(45.7)
「上」以上

    

    
7.4
64.6
28.1

    

    
100.0
1,818,816.5(46.0)

    
5.6
14.1
45.5
17.2
17.6

    
100.0
1,344,999(34.0)
6.3
7.3
10.3
36.8
18.1
11.1
10.1(0.4)
100.0
547,321(13.9)
等外
17.5
3.0
3.9
14.8
10.0
8.4
42.4(35.3)
100.0
239,440(6.1)
5年
1.9
3.1
9.9
51.2
21.9
8.0
4.0(2.2)
100.0
3,950,576.5(100.0)
 
5.0
              83.0
12.0(2.2)
100.0
4年
5.6
              83.0
11.5(2.2)
100.0
3,736,047.5
北海道
5年
7.2
84.7
8.2(2.7)
100.0
228,395
4年
8.7
83.6
7.6(2.8)
100.0
215,276
東北
5年
4.1
83.2
12.7(2.0)
100.0
694,669.5
4年
4.7
83.4
11.9(2.0)
100.0
629,118.5
関東
5年
3.1
80.2
16.8(3.9)
100.0
980,264
4年
3.9
80.2
15.9(4.1)
100.0
952,256
東海・北陸
5年
3.8
81.6
14.6(2.7)
100.0
390,132
4年
4.8
81.8
13.5(2.7)
100.0
346,618
近畿
5年
3.2
77.6
19.2(1.5)
100.0
96,130
4年
2.8
76.3
20.8(1.5)
100.0
86,628
中国
5年
3.5
83.2
13.3(1.6)
100.0
128,604
4年
4.6
81.7
13.7(1.3)
100.0
127,744
四国
5年
3.9
86.5
9.6(0.6)
100.0
251,658
4年
4.1
86.6
9.3(0.3)
100.0
249,441
九州
5年
6.3
86.7
6.9(0.7)
100.0
1,015,621
4年
6.4
86.9
6.7(0.8)
100.0
966,906
沖縄
5年
16.7
73.8
9.5(3.4)
100.0
165,103
4年
15.8
74.4
9.9(2.9)
100.0
162,060
注)1.重量の欄の上段は皮はぎ重量、下段の( )内はこれらに対する湯はぎ重量である。
  2.調査頭数の欄の( )内は、等級別内訳である。
  3.84kg超過の欄の( )内は、繁殖供用豚(「おす」を含む )である。
    4.枝肉等級の重量区分(皮はぎ枝肉)
B重量別等級分布割合
  枝肉重量別の等級分布割合は表9に示すとおりである。
 
<表9: 等級別重量分布割合>                単位:頭、% 
 

    
58未満
(64未満)
58〜61.9
以上 以下
(64〜67.9)
62〜65.9
(68〜71.9)
 
66〜73.9
(72〜79.9)
 
74〜78
(80〜84)
78.1〜84
(84.1〜90)
84超過
(90超過)
極上

    

    
0.0
0.6
0.1

    

    
0.3

    

    
34.3
57.5
58.9

    

    
45.7
「上」以上

    

    
34.3
58.1
59.0

    

    
46.0

    
61.7
48.8
30.2
26.7
74.5

    
34.0
45.4
32.4
14.5
10.0
11.5
19.1
35.2
13.9
等外
54.6
5.8
2.4
1.8
2.8
6.4
64.8
6.1
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
調査頭数
76,616
122,466.5
389,879
2,022,963
864,973.5
317,171
156,507.5
3,950,576.5
 
B品質欠格要因
 枝肉重量が「上」の重量範囲にありながら、「中」に格付されたものの品質欠格要
因をみたのが表10である。
 
  62kg以上〜65.9Kg以下では、「均称・肉づき」の項目で71.3%、66kg以上〜73.9kg
以下では「厚脂(背・全体の被覆)」で49.7%、「厚脂(腰・肩)」で33.5%が「上」
の基準に欠格した。
(3)品質向上対策 
  「上」 以上の率を向上させることが販売単価も上がり、 利益の向上につながること
  は誰でも承知しており、 それぞれの立場で取組んでいると思う。 
  
    これまで説明してきたように、 豚枝肉の規格は、 重量と背脂肪、 外観、 肉質の3
  者で構成されている。 よい肉豚を生産するためには、 優良種豚の導入や飼養管理の
  適正化が前提であるが、 出荷時期の適正化も大切なことである。 
  
    表7及び表9に示したように、 「上」 の重量範囲のものの 「上」 以上の割合は
  55. 5%で全体のそれより10ポイント高くなっている。 そのなかでも66kg以上〜73.
  9kg以下では 「上」 以上の割合は58. 1%、 74kg以上〜78kg以下では59. 0%とかな
  り高いので、 出荷にあたってはできるだけこの重量帯に入るよう留意することが肝
  要と思われる。   
    
    おわりに、 格付結果等について質問等がありましたら、 お近くの当協会の事業所
  にご遠慮なくおたずねいただきたい。   
 
 




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