この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。 |
(宮崎県 久松 常男)
肉用牛肥育事業経営の優良事例として宮崎県西都市で常時雇用者2名で300 頭を飼養する肥育事業経営を紹介する。 <生産管理面> @ 素牛導入は過去の枝肉成績から見て、 肉質と発育増体の両方を兼ね備え た安定した枝肉生産ができるような系統構成を考慮。 体重よりも骨格を 重視し、 体躯の伸び、 幅、 深みのある素牛を選ぶ。 A 肥育期間は6頭群飼 (8u/頭)、 仕上期は5頭群飼 (9. 6u/頭) で、 密飼いを無くしストレスによる産 肉性の低下を防いでいる。 B 濃厚飼料は、 自家配合で32円/kgの低コストを実現。 粗飼料はイナわら、 ヤンソウ (中国産の輸入飼料) を利用。 給与量は導 入期毎に牛の採食量を見て決定している。 C 防暑対策としてはスプリンクラーによる屋根散水、 日陰用寒冷紗、 中古 大型送風機を利用している。 D 除角により事故や群飼競合による発育のバラツキを防止。 E 畜舎は古電柱を利用して自分で建築。 (費用は4. 5千円/u) F 雇用労働を活用し、 固体観察などを定時に行い、 きめ細かな管理を実施。 G 牛ふんは切り返しを行い、 良質発酵堆肥として地域の野菜農家へ販売し、 副産物収入を得ている。 平成5年度の生産実績は素牛導入価格372千円、 枝肉重量440kg (枝肉単価1, 973円)、 販売額867千円、 肥育期間579日、 肉質4級以上割合68. 5%、 事故率0. 06%である。 <経営管理面> @ 記帳によるコスト管理の実施。 A 過去の出荷時期別価格相場を見ながら、 素牛の導入頭数や価格を決定。 B 計画的な資本蓄積により現在では運転資金の85%を自己資金で賄ってい るため、 金利負担が少ない。 平成5年度の出荷牛1頭当たりの経営実績は粗収益907千円、 経営費839千円 で所得額は68千円、 所得率7. 5%となっている。 全体的な枝肉相場の低迷の中 でコスト引き下げの努力、 長期負債が無く自己資本率の高い資金運用等で、 目 標である所得率7%を上回る生産性の高い安定した経営と言える。