現地ルポ

ふるさと情報発信基地

広がる地方自治体のアンテナショップ

                                                          企画情報部  


  今年になってから、 東京の銀座を中心に地元特産物の紹介販売、 観光情報等
の提供を目的とした地方自治体のアンテナショップが続々開店している。 3月
には沖縄県の 「銀座わしたショップ」 が、 7月には岩手県の 「岩手ビジネスプ
ラザ」が、 さらに10月には熊本県 「銀座熊本館」 がすべて銀座にオープンした。 
少し離れた新橋駅前には7月にオープンした福島県いわき市の 「いわき・ら・
ら」 もある。 
 
  もともとアンテナショップといえば、 消費者の生の情報を吸い上げようとお
客相手のレストランやブティックなどを畑違いの異業種が経営し、 収集した情
報を本業に生かしていこうとしたものである。 
 
  そこで、 3か所のアンテナショップにおじゃましたので、 その様子をレポー
トしてみた。 
  
くまもとを丸ごと提供 「銀座熊本館」
  熊本県のアンテナショップ 「銀座熊本館」 は、 首都圏での熊本の観光、 物産
振興の拠点施設とされ、 ここに来れば熊本のことなら何でも分かる、 手に入る、
いわば 「くまもとを丸ごと提供」 する施設と位置づけられ、 この10月にそれま
での施設を改装して、 オープンした。 銀座の一等地にある施設は県有財産で、 
家賃は無料と恵まれた条件。 もともと施設が銀座にあったということが開店の
大きな動機になっているようだ。 運営は県などが出資している株式会社熊本県
商品計画センターが担当している。 1階がアンテナショップのくまもと観光物
産プラザで、 70uの店内には民芸品、 焼酎などの県産品の展示販売のほかに熊
本県に関する情報検索システムも設置されている。 2階はくまもとサロンと銘
打った来店者のサロンとなっている。 
  
  アンテナショップでの取扱商品は、 県産品としてPRできるものを基準として
おり、 買い取り制。 県産品についてお客さんとの面接調査も実施しており、 伺
ったときはちょうど2階のサロンで1対1の面接調査を実施していた。 
 
  なお、 熊本のブランド牛肉 「肥後ビーフ」 は保存管理が難しいため現品は置
いていないが、 問い合わせがあれば、 都内の指定販売店を紹介している。 名物
の馬刺しについては、 大きなサンプルが店内に飾ってあり、 その他ハム・ソー
セージなどは要望があればカタログでの取り寄せとなっている。  
 
地元企業をトータルサポート 「岩手ビジネスプラザ」
 岩手県はJR有楽町駅近くに地元企業の活動をトータルサポートするための「
岩手ビジネスプラザ」 を7月に開いた。 開設者は県で、 運営に当たっているの
はその名も 「岩手県産株式会社」、 物産展の開催などを通じて特産品の県外で
の販売促進に30年の経験を持つ県などが出資する第3セクター。 
 ビジネスプラザの2階は地元企業の東京進出の足がかりとなるビジネスサポ
ートセンターで、 机と電話、 ファックスを備えたブースが18個並んでおり、 月
額5万円で賃貸している。  
  
  1階のアンテナショップでは、 食品350点、 工芸品550点が展示販売されてい
る。 商品は同社が選んだものの他に県内で出展を公募して採用したものもある。 
牛肉、 ハム・ソーセージなどの加工品は株式会社岩手県畜産流通センターと提
携しており、 その品揃えは充実している。    
 
  アンテナショップと物産展との違いについて、 同社東京営業所長の内田純一
さんは 「物産展は期間が限定されているため、 リピート需要をうまく生かせな
い。 アンテナショップを通じて、 リピーターを増やしていきたい」 と抱負を話
す。 思いもかけない商品が売れたり、 売れ行きがすぐ分かるので、 仕入先への
情報フィードバックはしやすいという。 ただし、 お店の知名度がまだ低く、 表
通りから少し中に入った場所のため、 来店者数はこれからに期待するところが
大きい。 
 
  同社が岩手県内で発掘した最近のヒット商品の一つに山羊の乳がある。 商品
名はアトピン君、 90t300円。 アンテナショップでは扱っていないが、 都内の
大手百貨店にも卸しており、 なかなか好評だそうだ。
 
独立採算の沖縄県 「銀座わしたショップ」
 店名の 「わした」 とは沖縄の言葉で 「わたしたち」 という意味。  「誰にで
も気軽に立ち寄ってもらえる、 みんなの店にしたい」 との願いが込められてい
る。
  
   「アンテナショップではなく、 パイロットショップなのです」 と強調するの 
は、 株式会社沖縄県物産公社 東京営業所長の池村博隆さん。 同社は県などが 
出資する第3セクターで沖縄県のアンテナショップ 「銀座わしたショップ」 を 
経営している。 アンテナショップとパイロットショップの違いについて池村さ 
んは、 アンテナショップは、 「特産品を紹介し、 お客の要望を吸い上げるのが
目的で、 採算はそれほど重視しない」 のに対し、 パイロットショップ (パイロ
ット、 先導的という意味) は、 「とにかく沖縄の商品を売るのが重要で、 採算
を重視。 スーパーと同じ感覚で、 売れ筋の商品を探して、 力を入れて売ってい
く」と説明する。  
 
  というのも、 家賃も高い銀座で県からの補助は全くなく、 運営は全くの独立 
採算であるからだ。 ただ、 そうはいっても、 売れる商品だけを売るのではなく、  
様々な特産品を発掘し、 紹介していくことはお店の重要な柱である。 
   
  93坪の店内に一歩踏み入れると 「琉球」 の雰囲気が広がっている。 扱う商品 
は2, 000種類、 8, 000アイテム。 沖縄の特産品を一堂に集め、 サンゴ細工、 民 
芸品から泡盛、 ゴーヤー (ニガウリ)、 パパイヤ、 黒糖を使ったお菓子、 蘭の
花、 天然塩まで販売している。    

  来店者は1日に800人から1, 000人。 平日よりも土日の方が多め。 店内の販売 
担当者は10人で常時8人がお店に出ており、 アルバイトが多いがほとんどは沖 
縄県の出身者なので、 沖縄独自の特徴ある質問にもすぐ答えられる。 
 
  銀座に出店した理由について池村さんは、 「渋谷や新宿でなく、 東京の顔であ
る銀座という場所にこだわりたかった」 と説明してくれた。
 
健康・長寿がキーワードの特産品
  沖縄といえば健康・長寿がキーワードになる。 てびち (豚足) の煮付け、 て
びち入りおでんは人気商品の一つである。 その他にも、 ラフティ (豚のかた肉
の煮付け) やマンゴ、 サトウキビ入りのアイスクリームなどの畜産物もがんば
っている。 生肉は保存が難しいので扱っていないが、 カタログ販売している。 
 
  お客から受けたクレーム、 要望は商品別の担当者がすぐに仕入先にフィード
バックするシステムになっている。 例えば、 豚足も、 最初6〜8本入りパック
であったが、 1回当たりの消費量が少ない東京の消費者に合わせて、 2本入り
パックを新たにつくって販売している。 
 
地方の情報発信基地
  なぜ、 今年、 アンテナショップが次々と開店したのだろうか。 それぞれがお
互いに申し合わせたわけではないので、 偶然なのだろう。 大消費地、 東京の生
の情報をいち早くキャッチし、 地元にフィードバックするだけでなく、 自分達
の情報を発信していきたいという共通の思いが、 同時に花開いたものかもしれ
ない。 
 
  メディアとは新聞、 雑誌、 テレビなどだけを指すのではなく、 情報を発信し、
伝える物とすれば、 これらの地方アンテナショップも立派なメディアである。

  今、 注目を集めているマルチメディアとは、 一方通行でなく、 双方向に、 誰
もが情報を発信できることである。 そう考えれば、 東京からの一方通行の情報
を受けるだけでなく、 積極的に地方の情報を直接発信していこうという動きは、
時代が求めているものかも知れない。 

岩手県 「岩手ビジネスプラザアンテナショップ」 
住所 東京都千代田区有楽町二丁目2−2
      電話番号 03−5568−2001

熊本県 「銀座熊本館」   
住所 東京都中央区銀座五丁目3−16 
      電話番号 03−3572−5022 

沖縄県 「銀座わしたショップ」  
住所 東京都中央区銀座一丁目3−9 
      電話番号 03−3535−6991 

 (企画情報部 安井 護)

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