この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。 |
平成元年2月に香港への 「鹿児島黒牛」 テスト輸出を開始してから5年が 経過した。 開始当時は品質や味覚では上々の評価を受けたものの、 アメリカ 産やオーストラリア産との価格競争には太刀打ちできず、 また松阪牛や神戸 ビーフのブランドに比べ知名度はなく、 手さぐり状態での販路開拓であった。 香港輸出用の牛肉は、 (株)鹿児島くみあい食肉南薩工場で処理加工された 最上級のロースとヒレの冷蔵肉であり、 鹿児島空港から直行便で月に2〜3 回空輸されている。 開始当時は年間1, 600sであったが、 平成5年度は3. 3 倍の5, 300sに増加してきた。 観光と食のメッカ香港での販売戦略として、 うまいものを求める高級志向 層に的を絞った。 県が実施したアンテナショップ事業等により、 現地での販 売促進キャンペーンや、 現地レストランの料理長を鹿児島に招いての料理講 習会の開催などを実施した。 その努力が実って味と品質の良さが認められ、 現在では高級レストラン3店のほかデパートとの取り引きも始まり、 「鹿児島 黒牛」 が世界のブランドとして香港市場に定着しつつある。 現地デパートでの小売価格はアメリカ産やオーストラリア産の4〜5倍で あるが、 そこで売られている黒牛の2割はステーキや焼肉用として日本人の 在住者に、 残りはその他の高所得層に買い求められている。 円高の問題やロースとヒレといった高級部位に片寄った需要しかないとい う課題も残されているが、 香港市場の中にあって世界一高くても、 世界一お いしければ市場性があることが立証され、 日本一の和牛産地鹿児島にとって 貴重な成果が得られた。