◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

温泉町で生まれた“手づくり・せきがねハム”

(鳥取県 河田 強)

 


  温泉で有名な鳥取県東伯郡関金町は、 梨、 しろねぎ、 わさび、 酪農、 肉用牛
と多彩な農産物を生産しているが、 なかでもJAせきがねでは豚価低迷に生き
残りをかけて“手づくりせきがねハム”の生産と販売を強力に進めている。 
 
 “せきがねハム”を生産・販売する関金町食肉加工センターは昭和 63年度に
関金町が農村への若者定着と、 農業で生活できる環境条件の整備のために取り
組んだ公社営畜産基地建設事業により建設され、 平成元年5月からJAせきが
ね養豚部 (部長 野田 睦、 13戸) が運営を始めた。 
 
  当時、 養豚部は豚価低迷の中でどうやって生き残るかを考え、 生産だけでな
く豚肉の加工・販売も手がけることを検討していた。 ちょうど、 養豚農家の後
継者である池本隆司さんが独自にハム加工の試作をしていた頃で、 池本さん個
人の 「いずれ、 自分で生産した豚肉を加工してみよう」 という夢と、 組織の意
向、 町の事業がうまくかみ合い実現したと言える。 その後、 池本さんは県外で
研修を重ねるなど 「手づくりハム」 を研究し、 当初から加工主任として加工を
一手に任されている。 

 現在、 運営委員7戸から生産される豚肉の中から選び抜かれたものを原料に
年間処理頭数200頭を目標にハム、 ベーコン、 ウィンナー、 ソーセージなどを
加工生産している。 原料肉のおいしさを生かすため、 製品には合成保存料は一
切使用せず、 また本当の味を賞味していただくため、 おいしさの目安として賞
味期間を製造日より20〜30日と設定している。 

 販売は、 会員制が基本で、 1万円コースは年3回、 2万円コースは年5回、 
おいしいハムなどが 「ふるさと小包便」 で会員へ届けられる。 農協生活センタ
ーや加工センターでの直販も行っており、 ほかにお中元、 お歳暮、 結婚式引き
出物などの贈答用も随時受け付けている。 関金町はラジウム温泉の町として観
光でも知られており、 今後は観光と絡めたハム販売も考えていきたいとのこと
である。 
 
  加工主任の池本さんは 「様々なメーカーから多くのハムが発売されているが、 
日本人の食味に合ったどこにもない“関金の味”を確立していきたい」 と意欲
満々。 生産者自らの活動が、 豚肉の消費拡大だけでなく地場産業として位置付
けられ、 地域振興につながるよう祈っている。 

  関金町食肉加工センター
    鳥取県東伯郡関金町大字泰久寺77−1
    TEL 0858−45−3386
    FAX 0858−45−2056


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