★事業団レポート


輸入が増大した平成6年の鶏肉需給

企画情報部


 
  平成6年の鶏肉需給は、 生産量がほぼ前年を下回って推移し、 特に夏期は猛暑 
の影響を受けて大きく減少した一方で、 輸入量はその生産量の減少を埋めるよう 
に秋以降急増し過去最高を更新し続けるなど、 輸入鶏肉のシェア増が目立った年 
であった。 今回は、 12月の通関統計も公表されたことから、 6年の年間の鶏肉需 
給を振り返ってみたい。  
1 需要見合いとなった生産量
 平成6年の鶏肉の生産量は、 春の行楽シーズンの需要期に当たる5月と、 年末
の最需要期に合わせた11月にわずかに前年同月を上回ったものの、 その他の月は
前年同月を下回って推移した。 特に7〜8月には、 例年にない夏の猛暑の影響を
受け、 ブロイラーが熱死する等、 生産量は大きく前年を下回り、 6年計では130
万2千141トンと前年をわずかに下回ることとなった (図1)。 
 
  なお、 生産量の先行指標となるひなの出荷羽数は、 5年9月より6年11月を
除いて前年を下回って推移しており、 6年の出荷羽数は6億74882万羽と前年を
やや下回っている (対前年比5%減)。
  
2 急激に増加した輸入量
 平成6年の鶏肉 (家禽肉を含む。) の輸入動向をみると、 円高を背景に4月よ
り前年同月を大きく上回って推移し、 8〜11月まで連続して過去最高の輸入量を
記録し続けた (図2)。 
 
  輸入国別のシェアをみると、 6月まではタイが3割程度を占めていたが、 7月
からは中国からの輸入が増加する一方で、 タイは2位の米国をも下回り、 1位の
座はタイと中国が入れ替わる展開となった。 6年1〜12月の輸入量をみると、 中
国からの輸入量が12万9千トン (対前年比51.6%増)、 米国が12万4千トン (4.7
%増)、 タイが11万7千トン (6.8%減)、 ブラジルが7万4千トン (19.7%増) 
となり、 総輸入量は、 45万5千727トン (対前年比13. 3%増) となった (図3)。 
 
  このように、 中国からの輸入量が急激に増加した背景には、 中国以外の輸入相
手主要国に比べて、 @地理的条件の優位性から、 輸送期間が短く、 量的にはわず
かであるがチルドの輸入が増加していること、 また、 輸送コストが安くてすむこ
と、 A人件費が現在のところは低い水準にあり、 生産及び加工等に係るコストが
抑制され、 安価な製品が生産出来ること、 B最近、 タイの華僑系インテグレータ
ーや、 日系企業の中国進出により、 飼養管理や、 カット等鶏肉生産の技術が向上
し、 ある程度需要者の要望にあった商品が生産出来るようになったこと、 C最近
の経済開放政策に伴い、 中国国内のインフラが整備され冷蔵、 港湾、 輸送施設が
これまでより充実されつつあること等によるものと見られている。 
 
  一方、 シェアを他の国、 特に中国に奪われる形となったタイについては、 経済
発展とともに、 人件費等のコストが上昇していることに加え、 所得の増から国内
需要が増加していること等が、 対日輸出量は減少したものとみられている。 しか
しながら、 タイでは、 中国に比べやや小さいブロイラーを生産しており、 その大
きさが特に業務用として加工し易い特性を持っていることから、 今後急激に輸入
量が減少することはまず無いと見られているが、 対日輸出量が減ったとはいえ、 
今後も、 同国のブロイラーの需給動向には注視する必要があろう。 
3 加工向け消費は前年に引き続き堅調
 鶏肉の消費の構成割合をみると、 家計消費が32%、 加工向け消費量が10. 7%、 
その他の業務用、 外食等用が57. 3%となっている (平成5年度農林水産省畜産
局食肉鶏卵課推計)。 このうち、 特に国産の鶏肉が大宗を占めるとみられている
家計消費量 (一世帯当たり) は、 6年1〜3月、 11〜12月の間は前年を上回って
推移したが、 この他の月は前年を下回って推移した。 特に7〜8月は大幅に前年
を下回ったことから、 年平均では前年をわずかに下回ることとなった (▲1.4%、 
図4)。 
  
  また、 チキンナゲット等が中心と見られている加工品仕向け肉の消費量につい
ては、 ここ数年増加傾向にあり、 6年も昨年に引き続き堅調に増加しており、 概
ね、 前年を上回って推移した。 加工向けの仕向け量を国産、 輸入品に分けてみる
と、 国産鶏肉の伸びに比べ、 輸入品の消費の伸びが著しく、 1〜12月の計では、 
加工品仕向量全体の36%を占めている。 
 
  一方、 推定出回り量から、 家計消費量と加工品仕向け肉量を差し引いた量を外
食等業務向け量として推測すると、 6年4〜6月は、 前年同期の数量が前々年を
大きく下回っていたことから、 大幅に前年を上回って推移した。 
 
 4 前年を大幅に下回った推定期末在庫量
 国産品の推定期末在庫量を国産、 輸入品別にみると、 国産品在庫は、 1〜3月
は前年に引き続き前年を上回って推移した。 しかしながら、 4月以降は生産量の
減少にともない、 在庫水準の高かった前年を大きく下回って推移し、 12月の期末
在庫量は、 1万1千608トンとなった (▲44. 8%)。 
  
  一方、 全体の8割程度を占める輸入品在庫量は、 輸入量が大幅に増加したもの
の、 輸入品の出回り量が前年をかなり上回る堅調な伸びを示したことから、 12月
の期末在庫量は、 6万9千394トンとなった (▲7. 6%)。 
  
  この結果、 国産品、 輸入品を合わせた6年12月の推定期末在庫量は、 8万6千
276トンと前年を大幅に下回った (▲16. 6%)。 

   
5 前年を上回った卸売り価格
  鶏肉の卸売り価格を主要な部位 (東京・中値) でみると、 もも肉は、 生産量の
減少により、 特に1月が前年をやや下回ったものの、 その後はほぼ前年同月を上
回って推移し、 年平均 (単純平均) では545円/sと前年を20円上回った(3.8%)。
  
  また、 むね肉については、 1〜6月まで前年を下回って推移したが、 6月以降
は前年をほぼ上回って推移し、 平均では318円/sと前年を5円上回った(1.8%、
図5)。
 
  1s当たりの価格はむね肉に比べて、 もも肉が高い。 これは、 我が国ではもも
肉志向が強いことによるが、 もも肉のみの生産が出来ないため、 むね肉は安くと
も流通している現状にある。 このため、 業界ではむね肉ともも肉を合計した価格
を生産コストの比較において論議される場合があるが、 このもも肉とむね肉の合
計価格をみると、 年末年始の1月と12月が900円を超え、 また、 行楽シーズンの
4〜5月が概ね890円と好調であったものの、 夏期は不需要期に加え猛暑による
食欲減退による消費の減少から813円と値を下げた (図6)。 
                                                       (白土 郁哉) 
 
 

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