◎地域便り


「化糞成金」 プロジェクト

北海道/黒沢 不二男

 台湾では、 牛糞の完熟たい肥が1トン当たり30, 000円 (日本円換算) で流通

し、 有機農業がブームになっているという。 ある酪農組合では、 たい肥生産施設

のスローガンに 「化糞成金」 というユニークな言葉を使っているらしい。 

 

 北海道空知管内の畜産担当普及員は、 この意気込みにあやかって平成7年のプ

ロジェクト研究にした。 

 

 プロジェクトは、 管内16戸の畜産農家 (酪農専業6戸、 耕種酪農複合8戸、耕

種肉牛複合1戸、 耕種養豚複合1戸) を対象とした実態調査から始まった。 

農水省農研センターで開発されたパソコンソフトを利用し、 ふん尿処理 (処理方

法、 たい肥製造法、 年間堆肥生産量)、 還元利用の状況、 販売流通の実態につい

ての調査を行った。 



 この結果から、 飼養標準をもとにして窒素の収支計算をすることにより、 排泄

窒素量を客観的に捉えられることを明らかにした。 窒素収支は、 これまで農家の

主観 (概数) によって把握していたたい肥生産量から推定していた。 



 このプロジェクト結果をもとに、 空知管内の全畜産農家から排出される窒素量

を試算すると2, 316tになる。 この量は 「施肥標準」 から推定できる必要窒素量

10,614tの22%に相当する。 

全量を耕地に還元すれば、 10a当たり窒素量は2. 0kgという計算になり、 この有

効活用を図ることは、 まさに 「化糞成金」 のスローガンにふさわしいという結論

に到った。 


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