◎地域便り


中古の飼料用タンクを利用した尿処理システム

鳥取県/岩崎 彰夫

 最近の養豚経営においては、 養豚場から発生する悪臭及び排汚水による公害が

大きな問題となっている。 特に尿汚水については、 処理施設の設置に多額の費用

が必要であり、 経営上の問題から有効な手だてを打てないでいる農家も多く見ら

れる。 そこで、 鳥取県中小家畜試験場では、 一般の養豚農家の経営を圧迫しない、 

安価な尿処理システムの開発に取り組んだ。 



 今回試作したシステムは、 平成5年度に同試験場で開発した技術を基にして、 

施設を大型化し、 より実用型に近づけたものである。 このシステムは3つの大き

な特徴を持っている。 



 まず、 処理槽に飼料用の貯蔵タンクを使用していることである。 使われなくな

ったタンクを利用することで、 大幅に建設費用を節減している。 試作した処理シ

ステムは、 飼料用3トンのタンク3基を連結させた構造である。 



 2番目は、 汚水処理に土の中に存在する細菌や微生物を利用する点である。 接

触酸化剤として軽石を使用し、 試験場のたい肥盤周辺の腐植土をネットに入れて

吊るして曝気 (ばっき) を行い、 尿汚水を浄化させている。 このシステムを農家

で活用する場合も、 それぞれの畜舎及びたい肥盤周辺等で採取した腐植土を利用

できる。 



 3番目は、 処理層の下部に沈殿する余剰汚泥をエアリフトさせ上部で除去する

点である。 2重構造のパイプに送気する簡単な装置でそれを可能にしている。 

平成7年度の調査結果では、 BOD (生物化学的酸素要求量;好気性の微生物が汚

濁物質を分解する時に消費する水中の酸素量) の除去率は99. 4%、 窒素除去率

は77. 9%と非常に高い処理能力が得られており、 臭気もほとんど除去できた。 

1日の処理量は原尿約150リットルであり、 これは肉豚約50頭分に相当する。 



 建設・運転コストも安く、 運行管理も容易なシステムだが、 残念ながら処理水

は河川放流基準には達しないため、 畜舎の洗浄水や液体肥料としての利用を考え

ている。 畜舎洗浄水の試験、 適する作物の選定、 肥料としての安全性の確認がこ

れからの課題である。 



 今後も、 さらに処理能力を高めるために嫌気的処理の組み入れ、 冬季の低温に

伴う処理能力低下の防止策等、 システムの改良を進めていく予定である。      



【中古の貯蔵タンクを有効利用】


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