◎地域便り


子牛の雌雄産み分けに農家の期待膨らむ

愛媛県/小西 和孝

 近年、 牛の受精卵の性判別技術については、 全国の試験研究機関で実用化のた

めの研究が盛んである。 愛媛県畜産試験場 (東宇和郡野村町) では、 平成7年9

月に県下で初めて子牛の雌雄産み分けに成功した。 



 この新しい技術は、 同場で平成5年度から開始された 「牛受精卵性判別技術確

立試験」 によるもので、 3年目に子牛の出産に漕ぎ付けた。 



 顕微鏡下で受精卵の一部を採取し、 その細胞中の微量のDNA (遺伝子) をPCR法 

(遺伝子増幅法)という方法で増やし、 雄側のみにある特異的な遺伝子を見付けて

雄となる卵の識別を行う。 雌となる受精卵は肉用繁殖用や乳用牛に、 また、 雄と

判定されたものは、 肥育用素牛生産のためにと農家の利用目的に合わせた有効利

用が図れることとなる。 



 今後、 牛肉、 牛乳の一層の高品質化、 低コスト化を進めるためには、 雌側の資

質、 能力を高めることが重要である。 本技術では受精卵の段階で雌雄となる卵を

選別し、 雌子牛を意図的に生産することも可能となり、 定着すれば、 肉用牛並び

に乳用牛の改良スピードが格段に速まる。 このため、 畜産関係者や農家は大きな

期待を寄せている。 



 担当技術者は、 細胞採取時にできる傷が受精卵に悪影響を及ぼすことから、 こ

の傷を最小限にとどめるための細心の注意と高度な技術の修得、 さらには、 この

傷の早期修復と性判別のできた受精卵の凍結保存技術の確立を目指し日夜研究に

励んでいるところである。       


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