◎地域便り
鬼北 (かほく) の 「カモ米」 と 「愛ガモ肉」 に夢をのせて
愛媛県/山本 英二
愛媛県西南部に位置する北宇和郡広見町は、 「鬼ケ城」 と呼ばれる山の北側に
位置することから 「鬼北」 とも呼ばれている。 水田の多い中山間地域であり、 こ
こで産する米は 「鬼北米」 として県下に広く知られている。
現在、 この鬼北地域で8戸の農業者グループにより約2. 6ヘクタールの水田で
アイガモを利用した、 米の無農薬栽培が熱心に取り組まれている。
平成4年度から町単独事業として開始した 「水稲新技術導入事業」 と平成6年
度からの 「農業生産体制強化総合推進対策事業 (国補事業)」 とによってアイガ
モのヒナ代、 野犬やカラスからの防護ネット設置費などの一部が助成されている。
JA鬼北の協力によって結成された 「アイガモ農法研究会 (愛鴨水稲同時作)」 に
より運営されている。
アイガモが雑草や害虫を食べる習性を利用して、 5月中旬から7月下旬の2カ
月間余り水田に幼鳥を放飼する。 その結果、 ふんは肥料として利用するなど自然
農法の特徴がある。 昨今の健康食ブームに乗った無化学肥料・無農薬米が粗放的
に栽培できるメリットがある。
米の反収は、 無農薬のために435kgと一般栽培米より約2割程度落ちるものの、
販売価格の面では特別栽培米 「鬼北カモ米」 のブランドで約2割の高値で有利に
取り引きされている。
また、 アイガモの方は、 7月下旬まで防虫と除草作業のお努めを終えた後、 陸
に上げられ約3カ月間穀物飼料により飼い直しされ、 その名も愛媛の"愛"をとっ
た 「愛ガモ肉」 とアカ抜けした名で食卓に並ぶこととなる。 価格が1羽分 (正肉
1〜0. 8kg) 2, 300円と手頃であるのに加え、 風味や味の良さが知られるにつれ、
年々引き合いが増加してきている。
今後は、 宇和島市等都市部の消費者が、 この 「鬼北」 の里を訪ねて自然農法を
自らの目で見ることにより、 安全で良質な農畜産物の重要性と中山間農業への理
解が一層深まることを期待している。
【雑草や害虫を食べるアイガモ】
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