◎地域便り


音楽ホールで畜産振興を

鳥取県/田村 博文
 鳥取県のほぼ中央に位置する東伯郡東伯町のカウベルホールは、 全国的にもユ
ニークな企画を打ち出している。 目玉は、 カウベルピアノコンクールと 「カウベ
ルの秋」 収穫祭音楽祭の2本。 

 中四国で評価が高いカウベルピアノコンクールで、 特徴的なのは何といっても
その副賞である。 

 中・高校生部門のグランプリには和子牛1頭、 小学生部門には乳子牛1頭が贈
られるのだ。 受賞式には牛の縫いぐるみをまとったスタッフが鳴き声とともに登
場し、 場内は一気に緊張から解き放される。 また、 上位入賞者には牛肉や農産物
が一年間にわたって宅配される 「ふるさとおふくろ便」 といった風変りな副賞も
ある。 

 実はこのホール、 鳥取和牛の一大生産地、 東伯町にある農協直営の 「音楽ホー
ル」 なのだ。 先般、 第10回を終えたコンクールでも、 県内はもとより京阪神、 中
四国から参加した総勢250名の子供たちが、 副賞の子牛1頭を目指して日頃の練
習の成果を競い合った。 

 ホールのもう一つの柱は 「カウベルの秋」 収穫祭音楽祭。 この音楽祭は自然か
ら授かった 「実り」 と収穫に感謝し、 来年の豊穣を願って開催されている。 題し
て 「カウベルが作る心の豊年万作」、 クラシックを中心にジャズ・ポップス、 落
後、 演劇といった幅広いジャンルで、 子供からお年寄りまですべての世代が楽し
める内容となっている。 特異なのは催しごとのオマケ。 来場者には地元のハム、 
ソーセージや二十世紀梨など、 大地からの恵みが振る舞われる。 

 ロビーを使ったパーティーでは、 梨で作ったカウベルワインや地ビールと共に、 
特産のハム、 ソーセージを賞味しながら、 観客と出演者がなごやかに歓談。 響き
のよいホールで聴く一流の音楽とおいしい農畜産物が一体となって、 訪れる人々
の心を満たしている。 

 ここには、 都市では味わえない本当のぜい沢があるといっても過言ではない。

【小学生部門の上位入賞者と愛らしい牛】


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