◎地域便り


タイヤのベッドで牛もゆっくり

宮崎県/上村 義光
 高齢化、 後継者不足、 外圧などにより、 肉用牛飼養農家戸数は減少している。 
宮崎県綾町もこの例外ではなく、 農家戸数は平成8年度初めには156戸となり、過
去10年間で約80戸の農家が経営を中止しており、 減少傾向が続いている。 綾町で
は、 「綾ブランド」 として、 和牛肉に加え、 日向夏などの果物や野菜などの有機
農産物を販売しており、 畜産部門から生産される良質たい肥は欠かすことができ
ない。 

 そこで、 この減少傾向に歯止めをかけ、 肉用牛振興を図るため、 綾町とJA綾で
は効率的で魅力ある肉用牛繁殖経営モデルを示すことになった。 地域畜産再編対
策事業を活用し、 今年3月にそのための和牛繁殖施設 「綾町マザーファーム」 を
建設した。 

 約7,000平方メートルの敷地に、 それぞれ約60頭飼養可能なフリーストール牛
舎が3棟、 たい肥舎などが設けられている。 牛舎1棟あたりの広さは約1,130平
方メートルで、 各棟に薬剤の自動散布装置、 床を乾かすための乾燥装置を備えて
おり、 非常に健康管理に配慮してある。 特に牛が寝る床には、 古タイヤと砂を入
れ、 その上におがくずを被せ、 クッションのような効果を利用している。 これは、 
雌牛がゆっくり睡眠でき、 受胎率が向上できればと考案されたもの。 牛がゆっく
り寝そべっている様子からもその効果が期待できる。 この牛舎の特徴は、 個々の
休養場所があるため牛体が比較的汚れず衛生的であり、 洗浄作業も簡単に済む点、 
敷料の搬出がローダーなどの機械で省力的に行える点である。 

 現在はリース契約の3農家が計90頭を飼育中で、 来年度までに計180頭の飼育
を行い、 年間150頭の子牛出荷を予定している。 それぞれの農家は所得800万円を
目指している。 契約農家押田和義さん (35) は 「牛の気持ちを考えた衛生的な牛
舎で、 作業量もほぼ半分で済むため、 将来は計100頭に増頭したい」 と話してい
る。

【タイヤの上におがくずを被せた「ベッド」で休む牛】


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