◎地域便り
先人の苦労、 後輩の励みに
― 40年の回顧録出版 ―
鹿児島県 新川豊巳
鹿児島県川内 (せんだい) 酪農業協同組合が合併されるまでの40年のあゆみを
記録した回顧録を、 全組合長の清水亨 (しみずとおる) さん (74歳) が出版した。
戦後の食糧難時代、 栄養面から県民の健康を支えた酪農の苦難の歴史が、 B5版
の110ページにまとめられている。
清水さんは昭和32年に35歳の若さで2代目組合長に就任し、 平成4年7月に薩
摩地区の4組合 (県酪農協、 県地方酪農協、 川内酪農協、 鹿児島中央酪農協) が
新生鹿児島県酪農業協同組合に合併されるまでの37年間 「自ら牛乳を販売してい
こう!」 との信念のもと酪農家の負託にこたえてきた。
回顧録には、 戦後、 県有牛の貸付制度により川内市でも本格的な酪農が始まっ
たものの、 消費地である鹿児島市への出荷のため、 夏場に生乳を腐らせて捨てた
ことや、 組合長となって3年目のとき経営難から赤字を出して解散の危機に直面
したこと、 紙容器牛乳充てん機の導入で牛乳処理工場の近代化を推進したことな
どが淡々とつづられている。
借入地で放牧した乳牛が立木のスギやヒノキの皮を食べ、 その食害の補償をさ
せられたエピソードや、 昭和45年には牛乳の農薬汚染が社会問題となりその対策
に追われたことなど、 時代を反映した出来事も記録されている。
酪農乳業界の発展に対する清水さんのこれまでの功績が評価され、 昨年秋には
「勲五等瑞宝章」 が授与され、 昨年12月に川内市において叙勲と回顧録の出版を
記念し、 県内外から180名の関係者が出席して、 盛大に祝賀会が開催された。
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