◎地域便り


ET技術の普及・定着を目指して

愛媛県/木下 政健

 愛媛県今治 (いまばり) 家畜保健衛生所では、 平成4年4月からET (受精卵移

植) 技術を活用した黒毛和種の子牛生産の普及に取り組んでいる。 受胚牛は、 管

内酪農家で飼養されているホルスタイン種を対象とし、 移植に供する胚は、 愛媛

県畜産試験場に係養されている黒毛和種から採取された凍結胚を用いている。 



 取り組み当初は、 参加農家も少なく、 ほとんど 「まあ、 一度位ならやってもい

いよ」 程度の反応であった。 その後、 関係者の努力 (胚の凍結方法・受胚牛の選

定方法・移植技術などの改善・改良) により、 平成7年度には、 参加農家戸数は

10戸 (管内の酪農家戸数:20戸)、 受胎率も過去3年平均の43%から65.5% (29

件中、 19件受胎) に向上した。 今では、 月平均4頭程度のET希望の電話がかかっ

てくるようになった。 特に、 当所では、 ET技術を長期不受胎牛の受胎促進対策と

しても活用し、 良好な成績が得られていることが、 多くの酪農家に受け入れられ

た要因の1つであると考えられる。 



 別の要因として、 黒毛和種の愛らしさがあるようで、 実際に生まれてみると、 

ホルスタイン種と比較し、 体が小さい真っ黒の子牛を見て、 本当にこれが牛なん

だろうかと驚き、 その牛が少しずつ成長していく過程が、 酪農家に新鮮なよろこ

びを与えているようである。 特に、 一般的に哺育を担当している女性には好評で、 

訪ねていくと、 「うちのチーちゃん、 この前より少し大きくなったでしょ。 」 と、 

どの農家に行っても言われる。 どの農家でも、 また何頭生まれようと、 黒毛和種

の子牛は、 全て小さいから 「チーちゃん」 なのには笑ってしまうが、 何となく微

笑ましいものである。 



 今後も、 ETにより生産された黒毛和種の子牛たちが、 経済効果だけでなく、 愛

媛の酪農家に活力を与えてくれることを期待し、 本技術の更なる普及・定着を目

指して努力していきたい。




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