◎地域便り


豚の人工授精 (AI) の普及

愛媛県 稲垣 祝

 養豚経営において、 繁殖の良否は経営の根幹をなすものである。 また、 豚の人

工授精の普及率は、 その国における養豚技術レベルの高さを示すものともいわれ

ている。 近年、 全国的に低コスト化や労働力軽減のためにAI技術を利用する農家

が増加してきている。 愛媛県南部に位置し、 飼養頭数で約4割を占め、 県内でも

有数の養豚地帯である八幡管内においても平成6年7月頃からメリットの認識が

広まり、 AIの必要性の機運が高まり始めた。 



 平成7年1月には、 初めて豚人工授精所を開設する養豚農家があり、 その液状

精液を利用している3農家の繁殖成績を調査したところ、 自然交配のみと比較し

てAI併用は受胎率・産子数・ほ乳開始頭数いずれも良好な成績であった。 希釈液

の改善の影響もあり、 十分に普及可能という結果であった。 また交配コストにつ

いても、 購入精液、 自家採取精液どちらの利用においてもこれまでよりコスト低

減が図られていた。 



 また、 平成7年5月から6月に実施したアンケート調査結果では、 回答戸数83

戸中、 AI 実施戸数は23戸、 27. 7%と高く、 今後導入予定農家は30戸、 とAIの導

入意欲の高まりを再認識する結果であった。 既にAIを実施している農家の感想で

は、 利点を挙げる方が多く、 項目としては 「雄豚の飼養頭数を減らせる」、 「種付

け作業の軽減」 などであった。 



 この状況にこたえて、 豚のAIに関する講習会も多く開かれ、 参加者も増えてい

る。 畜産試験場で技術を習得する農家も見られる。 



 平成8年1月には18年ぶりに豚の飼養講習会が開催され、 期間が長いにも関わ

らず後継者を主体に多数の受講者があった。 今後、 低コスト化や労働力軽減に有

効なAI 技術は、 ますます普及定着するものと考える。 


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