★ 事業団レポート


ドライシステムで品質アップ

(株)北海道畜産公社 北見事業所 企画情報部 安 井  護
水の使用を抑えたドライシステム

 一般的に 「汚れは、 水で洗い流す」 というのが常識だが、 逆に汚さないために
水の使用を最低限に抑えるという、 逆転の発想と言える牛のと畜解体システムを
今年、 日本で最初に導入したのが(株)北海道畜産公社 北見事業所 (旧(株)北見
畜産公社) である。 

  「牛のと畜解体過程で、 枝肉への細菌の付着は限りなく0にする。 水を極力使
わないのは、 枝肉にシャワーをかけると、 逆に微生物、 細菌を拡散させてしまう
からです」 と説明してくれたのは、 業務部の国府次長。 

 実際、 通常のと畜場で見られるような枝肉への全面的なシャワーは行っておら
ず、 冷蔵庫に搬入する前に、 内側の血の汚れをハンドシャワーで軽く流す程度で
ある。 

ダーティエリアとクリーンエリア

  「と畜解体システム」 と呼んだのは、 放血なら放血、 はく皮ならはく皮、 内臓
摘出なら内臓摘出といった部分、 部分の工程をどう改善するかと考えるのではな
く、 生体の搬入の後、 と畜から枝肉になるまでの一連の工程をすべて、 同じ思想
で、 いかに衛生的に処理できるかを考えてあるからだ。 

 このシステムの特徴の一つは、 と畜解体フロアを細菌汚染の可能性の高いはく
皮までのエリア (ダーティエリア) とそれ以降のエリア (クリーンエリア) とに
区分している点にある。 扉で仕切られているわけではないが、 それぞれのエリア
での衛生管理を徹底することはもちろん、 空気はクリーンエリアからダーティエ
リアに流れ、 また、 ダーティエリアから、 クリーンエリアへの作業員の移動は禁
止されている。 もちろん、 作業室への入場に当たっての手の洗浄等は常識として、 
クリーンエリアへ入場するにはエアシャワーを浴びる必要がある。 


(注)・主な工程を示してある。
   ・検査工程は、省略してある。

 その他、 汚染の可能性を徹底的に排除するため、 次のような措置がとられてい
る。 

 ・食道及び肛門結さつ

 ・全作業者毎に温水清浄機を設置し、 1頭処理毎にナイフ等を温水 (83℃) で
  消毒

 ・機械はく皮後、 皮はすぐにエアシュートで別室へ送る。 

 ・内臓は、 赤物 (肝臓等) と白物 (骨等) を分離し、 別々のラインで処理する。 
  赤物−摘出後、 1頭毎にフックにかけ、 検査後、 内臓処理室へ送る。 
  白物−1頭毎にパレットに乗せ、 検査後、 内臓処理室へ送る。 

食道、肛門の結さつ

 【(1)「輪ゴム」を結さつ器に装着】

 【(2)大きく広げる。】

 【(3)食道、肛門を強力に縛る。】

 【機械皮はぎ機 「汚れた」皮は、下部のエアシュートの穴から別室へ送られる。】

 【内臓は、1頭、1頭、別々のパレットに摘出され、検査を受ける。】

 【枝肉フックは、使用後、超音波で殺菌される。】

キーワードは 「衛生」 

 オランダ・ストーク社によるシステムの、 日本での導入はここが最初で、 国内
にお手本がなかった。 導入に当たってはオランダから技術者が5人やってきたが、 
言葉が上手く伝わらないイライラ以上に、 それぞれの国情の違い、 技術の違い、 
と畜方法の違いなどから、 非常に苦労したそうである。 

 建物の増設の後、 今年1月には操業を止めて、 設備の総入れ替えをした。 2月
には操業を再開したと言うので、 関係者の努力がうかがえる。  「衛生」 がキーワ
ードになった感のある今年の食肉業界で、 総額5億円を超える投資となった同社
の先見性のある取り組みは高く評価できるだろう。



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