宮崎県/永友 泉
先月、 宮崎県内の子牛セリ市に足を運んでみると、 時折70万円、 80万円でセリ 落とされる子牛に、 生産者からは喜びの声が聞こえ、 大変喜ばしい光景が見受け られた。 その様な中で1頭ずつセリ市で売却された2件の農家の収入が分娩間隔 次第ではどう変化してくるのか比較してみた。 表1に示すとおり農家Aは72.7万円、 農家Bは68.2万円で子牛が売れた。 この時 点での収入差は4.5万円になり農家Aは農家B以上に喜んでいた。 ところが、 農家A の72.7万円で売れた子牛の母牛は分娩間隔が426日で農家Bは351日であった。 そこで、 分娩間隔を考慮した年間粗収入を計算すると農家Aは62.3万円、 農家B は70.9万円になり実際は農家Bの方が農家Aよりも8.6万円多く収入を得ているこ とがわかる。 表1 子牛価格と分娩間隔による年間粗収入の違い ─────────────────── 子牛価格 分娩間隔 年間粗収入 ─────────────────── 農家A 72.7万円 426日 62.3万円 農家B 68.2万円 351日 70.9万円 ─────────────────── この様に、 本当に儲かるためには子牛価格に加え分娩間隔も重要になり、 セリ 価格に喜んでいると後で苦虫を噛まなくてはいけないケースもあるようである。 ちなみに、 分娩間隔と子牛価格による年間粗収入の違いを図に示した。 また、 今 回は1頭だけでの収入差であるが、 当然、 頭数が多くなればなるだけ差は大きく なるし、 価格が高くなればなる程その差も大きくなる。 ◇図:分娩間隔と子牛価格による年間粗収入の違い◇ それでは県内の分娩間隔 (平成7年1月から平成7年12月までに県内の子牛市 場に出荷された子牛の母牛が対象) はどの様な状況にあるのか見ると表2に示す とおりで、 2産以上分娩し、 分娩間隔が計算された60,657頭の平均分娩間隔は40 9.8日である。 また、 340日以内のものから491日以上のものまで幅広く見られ、そ の中で概ね1年1産ができていると思われるものが30%前後しかいないのに対し て、 1年1産ができていないものが70%前後もいるという状況にある。 まだまだ 引き出し可能な利益が、 かなりの金額で分娩間隔という口座に預金されているよ うである。 表2 分娩間隔別割合 ───────── 分娩間隔 % ───────── 〜340 5.8 341〜370 24.8 371〜400 25.8 401〜430 17.8 431〜460 10.4 460〜490 5.8 491〜9.5 ───────── 合 計 ≒ 100 ───────── ※平成7年次子牛セリ市出荷牛の母牛60,657頭が対象 いずれにしても、 再度、 我家の分娩間隔を調査してみる必要が十分にある。 最後に、 近年において和牛改良は様々な方法で展開されているが、 改良が進め ば進む程こういった基本的なことを大切にして、 農家の利益に努めていく必要が あると思われる。元のページに戻る