群馬県/堀越 広基
群馬県前橋市の酪農家中澤さんは、簡易なふん尿の発酵システムを導入して、処 理後は完熟たい肥「森林香」(群馬県特肥957号)として販売している。 中澤さんは現在、成牛20頭、育成牛15頭を飼育しているが、これまではふん尿の 処理と悪臭公害対策が最大の課題であった。ほ場還元では限界を感じ、現存施設を 活用した良い処理方法はないものかと情報収集に励んだ。そこで目に付いたのが 有機物質をふん尿と混合し、有機肥料に作り替える処理方法であった。 その工程は(1)バキュームカーで尿と有機物質を混合し、水分65%の生ふん1カ 月分に散布する。この間は嫌気性発酵が行われるため、1カ月は切り返さず発酵槽 の中に積んでおく。(2)次に好気性発酵を促進させるため2カ月の間、3日に1回 ほどの間隔でかく拌する。(3)生ふんから約3カ月後には商品として完成し、ばら 売りと30リットル袋詰めで注文先へ配達している。 この特肥のネーミングは「森の落ち葉が土を豊かにするように、バランス良く土 に力をつけ、安全で味の良い作物が育つように」という願いを込めて考案された。 現在の生産量は30リットル換算で年間1,200袋程度なので、労力的にも搾乳の合 間にこなせる作業である。しかも、「森林香」はナス、メロン、スイカ栽培農家に広く 愛用され、中でも得意先の生産者組織や家庭菜園グループからは「食味が格段に向 上し、日持ちも良くなり、市場や小売店からの評価も上々である」と絶賛されてい る。 今では「生産が追いつかず、注文に応じきれない」と中澤さんは苦笑する。倍増す る注文に対応するため、近所の酪農家からふん尿を分けてもらい、「森林香」の増産 計画を思案中である。また今後は豚ふんや鶏ふんも利用できないかと研究してい る。元のページに戻る