★ 調査・報告


外食産業における食肉需要の実態 −平成8年度外食産業食肉消費構成実態調査から−

食肉生産流通部食肉課




平成8年度調査の概要

● 調査目的

 外食産業における食肉需要の実態は、 業種が多岐に渡ることなどの理由から、 
これまで必ずしも明らかになっていなかった。 

 農畜産業振興事業団では、 外食産業における食肉需要動向を把握するため、 平
成2年度より(財)外食産業総合調査研究センターに委託し、 業種毎の食肉需要の
実態を明らかにするための調査を実施している。 

 平成8年度においても、 平成7年における外食産業の食肉需要の実態を調査し
たが、 今回は、 これまで調査対象として取り上げてこなかった牛肉、 豚肉、 鶏肉
以外のその他の食肉についても調査対象としたほか、  「学校給食」 及び 「病院給
食」 部門を追加して調査を行った (図)。 

図 外食産業の業種別構成

(注)「特殊タイプ飲食」は、列車食堂、国内線機内食から成る。
   なお、「特殊タイプ飲食」及び「社会福祉施設」は調査対象としていない。

● 調査方法

 実態調査は、 郵送によるアンケート回収の方法で実施した (回収時期:平成8
年9月〜10月)。 

 調査対象は、 一般飲食店、 事業所給食、 持ち帰り弁当・総菜店から 3,048サン
プルを、 また、 学校給食及び病院給食については関連名簿から 2,952サンプルを
抽出した。 

 総配布数6,000サンプルに対する回収数は1,357サンプル (回収率22.6%)、うち
有効回答数は1,291サンプル (同21.5%) であった。 

 有効回答数の内訳は、 飲食店、 ホテル・旅館、 事業所給食、 持ち帰り弁当・総
菜店の有効回答数が878サンプル (同28.8%)で、 学校給食及び病院給食について
は413サンプル (同14.0%) であった。 

飲食店、 ホテル・旅館、 事業所給食、 持ち帰り弁当・総菜店部門

● 回答店舗・事業所の概要

(1) 業種構成

 回答の得られた飲食店 (一般飲食店、 及びその他飲食店)、 ホテル・旅館、事業
所給食、 持ち帰り弁当、 総菜店部門の878サンプルの業種構成は、以下のとおりで
ある。 

 まず、 飲食店は、 日本料理店が144店 (うち、 とんかつ店47店、 しゃぶしゃぶ・
すきやき店14店)、 西洋料理店が103店 (うち、 ステーキ店18店)、中華料理・その
他の東洋料理店が147店 (うち、 焼肉店が25店)、 一般食堂が119店、そば・うどん
店が67店、 割烹・料亭が16店、 酒場・ビヤホールが48店、 主に喫茶店やお好み焼
き店等が含まれるその他飲食店が31店の計675店で、これら飲食店が全体の76.9%
を占めた。 

 また、 ホテル・旅館が128事業所、 事業所給食が38事業所 (うち、弁当給食が17
事業所)、 持ち帰り弁当・総菜店が37店であった。 

 なお、 回答店舗・事業所の従業員数は、 全体平均で17.3人 (7年度調査19.1人)、 
年間販売額が14,690万円 (同17,337万円) となっている。 

(2) 食材率と食肉比率

 回答の得られた店舗・事業所の食材率 (年間販売額に占める食材仕入額の比率) 
は、 全体平均で29.6%と7年度調査結果より4.2ポイント低い結果となった。 

 こうした背景には、 今回の調査においては食材率の高い会館、 結婚式場等を調
査対象から除外したことも影響しているが、 平成3年以降の景気後退の中で、 既
存店の売上が伸びず、 コストダウンにより利益を確保する動きが活発化したこと
が大きな要因として挙げられる。 

 また、 食材費に占める食肉類の比率も、 牛肉を中心に卸売価格水準が低下して
いることを反映して、 全体平均で26.9%と、7年度調査結果より0.6ポイント低下
している。 

● 食肉の仕入状況

 平成7年に食肉 (生鮮・冷凍の精肉のみ) を仕入れた店舗の比率は、 牛肉が全
体平均で78.4% (前年80.3%)、 豚肉が83.7% (同83.1%)、 鶏肉が87.1% (同87.
2%) であった。 さらに、 今回の調査で初めて対象としたラム、 マトン、鴨等のそ
の他の食肉も29.4%の店舗で仕入が認められた。 

 食肉を仕入れた店舗の年間仕入量は、 牛肉が1,697.6kg (同1,435.3kg)、豚肉が
1,046.4kg (同970.7kg)、 鶏肉が909.6kg (同1,078.4kg) で合計3,653.6kg (同3,
484.4kg) となった。 構成比は、 牛肉が全体の46.5% (同41.2%) を占め、次いで
豚肉が28.6% (同27.9%)、 鶏肉が24.9% (同30.9%) となっている (表1参照)。 

表1 業種別に見た食肉(牛、豚、鶏)の仕入量と構成比率

 注:しゃぶしゃぶ・すき焼き店、ステーキ店、焼肉店では牛肉の仕入量のみ、
   とんかつ店は豚肉の仕入量のみを集計し、その他の食肉は集計していない。


 業種別には、 しゃぶしゃぶ・すきやき店、 とんかつ店、 ステーキ店、 焼肉店等
の専門店を除くと、 西洋料理店 (46.2%)、 割烹・料亭 (52.7%)、 ホテル・旅館 
(57.3%) では牛肉が、 日本料理店 (47.5%)、 中華料理・その他の東洋料理店 
(52.6%)、 一般食堂 (43.9%)、 弁当給食 (40.4%)では豚肉が、 また、 酒場・ビ
ヤホール (45.3%)、 その他一般飲食店 (40.1%)、 対面給食(51.2%)、 持帰り弁
当・総菜店 (59.5%) では鶏肉がそれぞれよく使われている。 

 また、 食肉の国産・輸入別構成比をみると、 中華料理・その他東洋料理店、 そ
ば・うどん店、 割烹・料亭、 酒場・ビヤホールでは、 食肉仕入量の53%以上が国
産となっている。  

 なお、 原産国別内訳をみると、 牛肉では、 和牛が22.3%、 乳用牛が3.7%、和牛・
乳用牛の不明が3.0%であった。 また輸入品では、 米国産が51.7%、豪州産が10.4
%、 輸入品で原産国不明が8.9%となっていた。 

 豚肉の場合には、 国産品が50.8%と最も多く、 次いで国産品・輸入品の不明が
16.9%、 米国産が14.0%、 台湾産が8.5%、 デンマーク産が7.4%、 カナダ産が2.
4%であった。 

 鶏肉も国産品が52.7%と最も多く、 次いで国産品・輸入品の不明が12.6%、 中
国産が11.8%、 米国産が11.3%、 タイ産が6.6%、 ブラジル産が5.0%であった。 

 また、 牛肉、 豚肉、 鶏肉以外に、 ラム、 マトン、 鴨等のその他の食肉の仕入量
が全体平均で315.2kgみられた。 このうちの58.2%が鴨肉、35.3%がラム肉であり、 
兎肉、 鹿肉、 猪肉等は2.0%の比率を占めていた (表2参照)。 

表2 業種別に見たその他食肉類の仕入量と構成比率

 注:その他には猪肉、鹿肉、馬肉が含まれる。

● 最近の仕入状況

 平成7年の食肉仕入量が、 前年と比較して 「増加した」 か 「減少した」 かをみ
ると、牛肉の場合、 国産品では全体平均で 「増加した」 が15.8%、 「減少した」 が
23.3%と後者の方が7.5ポイント高い結果となった。 

 逆に輸入品になると 「増加した」 が27.8%、 「減少した」 が18.3%で前者が9.5
ポイント高い結果となり、 ここ数年、 国産品が減少し、 輸入牛肉が増加する傾向
が続いている (表3参照)。 

表3 業種別・食肉の種類別にみた仕入量増減店舗比率


 豚肉も、 国産品は全体的に 「増加した」 が14.7%、 「減少した」が21.9%と後者
が多く、 輸入品では 「増加した」 が20.5%、 「減少した」 が19.1%と、前者がわず
かに多い結果を示した。 

 鶏肉についても同じ傾向がみられ、 国産品では 「減少した」 が18.3%と 「増加
した」 の16.8%より1.5ポイント多く、 輸入品では 「増加した」 が21.2%と「減少
した」 12.8%より8.4ポイント多い結果となった。 

 このように、 メニュー数を増やしたり、 売上が増加したことにより食肉の仕入
量が増える場合には、「国産」 よりも 「輸入」 品を中心に増やす店舗・事業所が多
く、 この結果、 国産品のシェアが下がり輸入品のシェアが高まる傾向が続いてい
る。 

● 今後の動向

 平成8年以降、 食肉を使用したメニューを 「増やす」 と回答した店舗・事業所
についてみると、 牛肉メニューを増やすとの回答が全体平均で24.9%と最も多く、 
特に対面給食 (52.4%)、 弁当給食 (41.2%) での回答率が高くなっている(表4
参照)。 

表4 メニュー数及び仕入量が今後「増加する」と回答した
   店舗・事業所の業種別比率


 また、 仕入量の見通しでは、 牛肉についてはメニューを増やすとの回答の比率
が高いことから38.3%の店舗・事業所が 「増える」 と回答しており、 特に西洋料
理店、 ホテル・旅館、 対面給食、 弁当給食、 持ち帰り弁当店でこの回答が多くな
っている。 

 なお、 豚肉は 「増える」 との見方が29.4%と相対的に少なかった。 鶏肉では、 
32.7%が 「増える」 と回答しており、 酒場・ビヤホール (45.8%)、持ち帰り弁当・
総菜店 (45.9%) 店での回答比率が高くなっている。 

学校給食及び病院給食部門

● 事業所の概要

(1) 従業員と提供食数

 回答の得られた413の学校給食及び病院給食施設の従業員数の平均は16.0人で、 
このうち正職員が12.4人、 パート・アルバイトは3.6人であった。 

 さらに、 1日当たりの提供食数では、 学校給食施設が5,041.1人と多く、病院給
食施設については、 病床の稼働率の問題があるが、 仮に全ての病床が利用されて
いるとすれば、 延べ748.8食 (249.6床×3食) となっている。 

(2) 食材仕入額と食肉の占める比率

 食材仕入規模は、 全体平均では9,624.1万円であった。 これは年間3億2,514万
円 (9,624.1万円÷飲食店等部門の食材率29.6%)の売上がある店舗又は事業所に
相当する (表5参照)。 

表5 業種別にみた食材仕入高と食肉の占める比率


 また、 食材仕入額に占める食肉の比率は、 学校給食施設が11.8%、 病院給食施
設では13.7%で、 飲食店等部門 (26.9%) と比較すると低い傾向が認められた。 

● 食肉の仕入状況

 回答の得られた事業所での食肉の仕入状況をみると、 牛肉については学校給食
の96.9%が、 病院給食では88.4%が 「仕入れた」 と回答した。 

 豚肉になると、 学校給食の98.6%、 病院給食施設の98.3%が仕入れを行った。 
また鶏肉では、 学校給食の99.0%、 病院給食の98.6%となっている。 

 次に仕入量をみると、 学校給食では、 牛肉が1,811.7kg (全体の20.3%)、 豚肉
が3,943.8kg (同42.5%)、 鶏肉が3,459.9kg (同37.3%) の計9,285.4kgであった。 
また、 病院給食では、 牛肉が341.3kg (全体の21.6%)、 豚肉が499.0kg(同31.6%)、 
鶏肉が740.5kg (同46.8%) の計1,580.8kgであった。 このように、 食肉利用の実
態は、 学校給食では豚肉主体、 病院給食では鶏肉主体となっている。 

 また、 全体平均では、 仕入れた食肉のうち国産品が85.6%を占め、輸入品は5.9
%にすぎなかった。 特に、 学校給食で国産品仕入れの傾向が強くなっている (表
6)。 

表6 業種別にみた食肉の仕入量と構成比率


 なお、 原産国別内訳をみると、 牛肉は国産品が70.9% (和牛29.4%、 乳用牛11.
0%、 不明30.5%)、 輸入品が21.3% (米国産2.8%、 豪州産6.2%、 不明12.3%) 、 
国産品・輸入品の不明が7.8%となっている。 また、豚肉及び鶏肉についても、 国
産品がそれぞれ90.9%、 87.7%と、 国産品主体の利用であった。 

● 最近の仕入状況

 平成7年の食肉の仕入量が、 前年と比較して 「増加した」 か 「減少した」 かを
みると、 まず、 牛肉については、 国産品が 「増加した」 は13.3%、「減少した」 は
10.0%で前者が多く、 輸入品でも 「増加した」 が13.9%、「減少した」 が12.4%と
前者がわずかに高い結果であった。 

 豚肉については、 国産品では 「増加した」 が8.6%、「減少した」 が6.9%と前者
が多いが、 輸入品になると、 「増加した」 (5.6%) よりも 「減少した」 (10.3%) 
が多い結果となっている。 

 また、 鶏肉についても、 国産品は 「増加した」 (8.3%) の方が 「減少した」(7.
1%) よりわずかに多いが、 輸入品になると 「増加した」 (6.9%)より 「減少した」 
(7.8%) が多い結果となっている。 

 このように、 学校給食および病院給食においては、 牛肉は国産、 輸入とも増加
傾向が認められたが、 豚肉と鶏肉は国産に増加傾向がみられた一方で、 輸入品に
ついては減少傾向を示した。 

● 今後の動向

 食肉メニューを今後の充実させるかとの質問に対しては、 牛肉、 豚肉、 鶏肉と
もに 「従来通り」 との回答が最も多かった。 なお、牛肉、豚肉はメニュー数を 「減
らす」 との回答が比較的多く、 特に、 牛肉ではこの傾向が強くみられた。 

平成8年度調査における食肉需要の特徴

 8年度の調査結果における飲食店、 事業所給食、 ホテル・旅館及び弁当・総菜
店部門の平成7年の食肉需要の特徴は、 まず、 全般的な売上低迷の状況下におけ
るコストダウン傾向により、 売上に占める食材費 (食材率) が前年の33.8%から
29.6%に下がっており、 さらに食材に占める食肉の比率も、 27.5%から26.9%に
低下している点である。 

 この点については、平成7年の為替レートが1ドル108円と円高基調で推移した
ことにより、 輸入食肉の卸売物価が低下したこともあると考えられる。 

 また、 仕入量の動向では、 牛肉、 豚肉、 鶏肉ともに国産品の需要が低迷する一
方で、 輸入品の需要が伸びる傾向にある。 つまり、 売上が低迷し、 食肉仕入量を
減らす場合には、 国産品から減らす傾向が強く、 売上が増加したり、 メニュー数
を増やしたことから仕入量を増加させた場合には、 輸入品で手当てする傾向がみ
られた。 

 業種別の特徴としては、 西洋料理店やホテルでは、 従来から牛肉の需要が大き
い。 この一方で、 メニュー単価水準が低く、 食材予算も制約されていたために、 
豚肉と鶏肉を中心に利用してきた対面給食や持ち帰り弁当・総菜店の食肉仕入量
に占める牛肉の比率が、 前年より増加している (それぞれ19.5%から23.7%、 14.
8%から15.8%へ増加)。 

 今後の食肉需要動向については、 牛肉、 豚肉、 鶏肉ともに、 今後とも 「増える」 
とみている店舗が前回調査よりも少なくなっており、 需要拡大期から安定需要期
に移行してきているとみられる。 しかしながら、 牛肉については、 従来からの需
要部門である西洋料理店やホテルだけでなく、 事業所給食や弁当給食、 持帰り弁
当・総菜店といった部門への需要の広がりが期待される。 

 また、 今年度から調査を開始した学校及び病院給食部門についてみると、 平成
7年の売上高に占める食材費の割合 (12.4%) は、 飲食店、 事業所給食、 ホテル・
旅館及び弁当・総菜店部門における食材費の割合 (26.9%) をかなり下回る結果
となった。 

 平成7年の食肉の仕入状況をみると、 学校給食では、 豚肉主体、 病院給食では
鶏肉主体であるとの結果が得られた。 また、 飲食店、 事業所給食、 ホテル・旅館
及び弁当・総菜店部門では、 牛肉・豚肉・鶏肉ともに国産品の需要が低迷する一
方で輸入品の需要が伸びる傾向がみられたのに対し、 学校及び給食部門では、 逆
に国産品の需要が増加する一方で、 輸入品の需要については牛肉を除き減少する
傾向がみられた。 

 さらに、 今後の食肉需要についてみると、 大きな増減はなく、 横ばい傾向にな
るものとみられる。

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