◎地域便り


イーハトーブ奥羽の山並みの中で

岩手県/高橋 広治
 岩手県の中西部、 秋田県と県境を接している湯田町にある(株)湯田牛乳公社は、 
地域の主要産業である酪農の振興と生乳の販売先の確保を目的に、 昭和41年に湯
田町、 沢内村、 農協及び地域の酪農家が出資して設立された。 この地域は、 年間
降雪量が10mにも達するため、 年間を通じ安定的な収入が得られる酪農が重要な
産業である。 生産された生乳は同社により、 低温殺菌牛乳やヨーグルト類となっ
て岩手県内の生協を中心に販売されている。 

 製造されている牛乳の多くは、 低温殺菌法を用い、 搾りたてに近い状態で製品
化し消費者に提供されている。 中でも、 県内の生協へは専用のビンで販売し、 好
評を得ている。 また、 デザート類も牛乳同様、 安定剤や香料、 着色料を一切使用
せず、 自然なおいしさを大切にして商品化している。 

 また、 地元の酪農家は、 消費者との交流会を行い、 消費者ニーズの把握にも努
めている。 特に最近は、 より新鮮、 安全を消費者に理解してもらうため、 生産者
の身元をはっきりさせた酪農家名の入った低温殺菌牛乳や、 搾乳日、 エサの給与
内容を明記した牛乳等、 これまでのビン牛乳に続く商品の開発を消費者と共に検
討している。 まさに生産者の顔がみえる牛乳・乳製品を目ざしているのである。 

 今年の7月には、 東北自動車道北上〜横手線 (秋田道) が全線開通し、 県内一
の豪雪地域にも高速交通網が整備されることから、 同社に隣接して乳製品や地域
特産品を販売している 「結 (ゆい) ハウス」 への来場者の増加も期待している。 

 宮沢賢治が名付けたユートピア、 イーハトーブ奥羽の山並みの中で、 豊かな自
然の 「温泉」 の町で、 同社は今日も牛乳を造り続けている。 


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