◎地域便り


肉用牛ヘルパー 繁殖主産地に定着!

栃木県/杉井 挙
 栃木県那須町は、 県最北部に位置し、 肉用牛、 乳用牛を中心とした全国でも有
数の畜産地帯である。 特に肉用牛については、 那須岳の裾野を利用した放牧、 水
田との複合による繁殖経営を中心に約7,000頭の黒毛和牛を450戸で飼養している。 

 しかし、 近年小規模農家の高齢化、 中核繁殖農家及び肥育農家の規模拡大等が
進み、 労働力の確保問題が起こっている。 当初は、 農協の担当者が出荷等の手伝
いをしていたが、 規模拡大や農協の経営合理化等で、 手が足りない状況になり、 
酪農のようなヘルパー制度の発足が切望されるようになった。 

 そこで、 那須町農協 (現在は那須野農協那須事業部) では、 平成5年にヘルパ
ー制度を取り入れ、 活動を開始したのである。 

 その概要は次のとおりである。 ヘルパー要員は、 労働力に余裕のある農家や後
継者が事前に登録され、 農協が調整を行っている。 利用内容は、 子牛の市場出荷 
(出荷牛の積込み、 市場での引出し、 購買者への引渡しまで)、 給餌・給水等の飼
養管理等で、 料金は出荷1頭当たり15,000円、 飼育管理は親牛10頭1日当たり6,
000円を基本に、 1頭増加する毎に割増となる。 事故補償については、 家畜共済、 
傷害保険に加入するなどで対応している。 

 平成8年度の利用実績は、 延べ67戸、 82頭の市場出荷を行っており、 繁殖農家
の高齢化や規模拡大による労働力不足からの利用であった。 

 農協の話では、 農家からの依頼は年々増加しており、 調整が困難なときがある
というが、 依頼をすべて受けるのでなく、 事前に農協とヘルパーで調査し、 管理
がきちんとされていないものは、 断っているとのこと。 

 利用農家からは、 「年をとっても牛飼いができる」  「規模拡大も容易になり、経
営の合理化ができる」 との声が聞かれ、 肉用牛ヘルパーがすでに経営の一部に取
り込まれているようだ。 

 農協では、 「今後益々このヘルパー制度が重要になってくるので、 組織の強化
を図り充実させていきたい」 と語っており、 那須町での今後の展開に期待がかか
る。 


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