◎地域便り


家族経営協定の締結でゆとりある酪農経営の実現

鹿児島県/神宮司 恒幸


 鹿児島県鹿屋 (かのや) 市で酪農を営む田原誠さん (28歳)、 父親の太さん (6
5歳) から経営を移譲されるに当たり 「家族経営協定」 を締結し、それぞれの家族
が能力を十分発揮し、 円滑な家族関係のもと、 楽しく経営に取り組んでいる。 

 田原さんは、 昭和62年に県立鹿屋農業高校を卒業後、 県外の種子会社に就職し、 
それなりに充実したサラリーマン生活を送っていたが、 高齢になった父親の後を
受けて酪農を継承するため平成4年にUターンしてきた。 

 しかし、 いざ酪農に取り組んでみると、 サラリーマンの時のように休日はなく、 
決まった給料ももらえなかった。 父親が65歳になることを契機に経営移譲される
こととなり、 今度は経営主として、 両親に対してどのような待遇をしたらよいの
かについて悩んでいた。 そんな折に、 鹿屋市農業青年クラブの定例会で、「家族経
営協定」 の話を聞き、 早速両親とこのことについて十分に話し合いを行った。 最
初は、  「家族の間で文書で協定を結ぶなんて水くさい」 などの消極的な意見もあ
ったが、 近代的な酪農を行うためには是非とも協定の締結は必要との合意に達し
た。 

 協定は5条からなり、 労働報酬、 休日等が決められている。 経営主としての自
覚と 「経営は移譲されたものの、 これからも両親の支援を頼みます」 との誠さん
の期待が込められている。 また、 協定の中に、 給料とは別に両親のそれぞれの口
座に旅行積立金として毎月定額を振込み、 今年は北海道に旅行に行ってもらうこ
とも盛り込まれている。 両親への日頃の感謝の気持ちからであろう。
【ゆとりある経営を目指す田原誠さん(左下)とご両親(右隣り)】

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