◎地域便り


五島地域での土地利用型肉用牛生産への取り組み

長崎県/富永 祥弘


 長崎県五島地域は、 肉用牛の主産地として長年全国に名声をとどろかせていた
が、 子牛価格の低迷や高齢化から、 飼養戸数は減少している。 また、 五島の農業
は肉用牛・米・葉たばこを3本柱として振興してきたが、 近年、 耕作放棄地等の
未利用地が急増したため、 肉用牛と切干かんしょの転換作物 (じゃがいも、 飼料
作物) の振興を積極的に推進している。 

 このような中、 肉用牛については、 耕作放棄地等未利用地を利用した放牧を再
評価する動きが活発化している。 今までも、 放牧の利点は十分理解されていたが、 
失敗事例も散見されたことから、 放牧に取り組む農家は少なかった。 しかし、 五
島支庁をはじめ関係機関の働きかけもあり、 平成8年度より国庫補助事業である
畜産再編総合対策 「山地畜産確立促進事業」 を足がかりにして、 18.2haの
放牧地を蹄耕法等で造成、 電気牧柵等を導入して、 低コスト生産に向けて畜力利
用の肉用牛繁殖経営にチャレンジしている。 

 この事業に取り組んだ農家は、  「現在までの飼養管理より随分楽になった。 増
頭する余力ができた。 今後も放牧を利用して経営の安定化を図りたい」 と話して
いる。 このような取り組みにより、 放牧地の集積が進み、 点的であった放牧地が
面的に広がれば、 この地域では無理のない増頭が可能である。 

 今後五島地域での肉用牛生産の再浮揚のためにも、 放牧が地域の牽引力となる
ことに期待したい。 


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